雪の精
雪ははらはらと、はらはらと、
人の心など気にも留めずに
静かに、残酷に、降り積もる。
激しくうねる風に雪の粉が乗って、くるくると楽しそうに舞い踊っている。
足元には躍り疲れて舞い降りた雪の粉たちが、次々に上へ積み重なり人の膝の丈ほどになっていた。
「あちゃあ、やっちゃった」
雪羅は膝まで重く積もった雪にすっぽりはまり、一歩も動けなくなってしまっていた。
スキーの板を履いているので力を入れることもままならない。
携帯は埋もれた足のポケットだ。
新雪が好きでコースを少し外れた山の中、それも上の方に来ていた。
吹雪いてきたので誰も来ないよう上級者コースの逸れたところだ。
「どしたもんかな」
これでは板もはずせないし、だんだん自分にも雪が積もってきた。
なにより、寒い。
手足が冷たくなって感覚が失せかけている。
悠人、こないかな。
…こないか。
雪羅は自嘲的な気分になって、ふっと息を吐いた。
「調子に乗ってコースはずしたりしなきゃよかった」
自然と零れた呟きは、いつの間にかしんとした木々の間に吸い込まれて消えていった。
しかし相変わらず雪は止まない。
辺りは雲の中、どこか危険でとても幻想的だ。
木々は雪の衣を寒そうに被っている。
川は雪の下を隠れてちょろちょろと流れていく。
そんな風景をしばらく黙って見つめているとふいに、雨が降ってきた。
「雨…?おかしいな」
雨は、雪羅が雨だと思った静かな水は、つぅと頬を滑り落ちて雪を少し溶かした。
「死ぬのかなぁ、私」
思考も、止まってきた。
膝までだった雪の丈は、気づかぬ間に胸まで降り積もっている。
(悠人、ごめん。時間に間に合いそうにないや)
愛しい彼とは、はぐれても4時にスキーセンター前でと約束している。
(また約束破っちゃった。謝らなきゃいけないことがありすぎるのに)
ふっと、雪羅の意識が遠退いた。
雪山で寝たら死ぬぞーと、悠人とゲレンデでふざけていたのを思い出しながら。
目を瞑る直前に悠人の声を聞いた気がした。
心臓がとくんと、小さく揺れた。
かなりその場の思いつきで書いた小説です。
小説と言えるのかもあやしいです。
今のところ続編書こうかどうかかなり迷ってます。
実際には書けるかどうか(笑)
はぁ、文才が欲しい。切実に。