6.食事会
6.食事会
今夜は食事会だ。両親が仲の良い友人達を招いたもので、格式張ったものでは無いが、一人息子である俺は出席しない訳にはいかない。一通り挨拶して回って、最後にナカザワ・コーポレーションの社長で、父の一番の親友である中沢 優貴・真実子夫妻に挨拶に行った。実は俺は密かにこの中沢 優貴氏に憧れている。見た目のカッコ良さもさることながら、経営手腕も素晴らしく、人間としての器の大きさ、そして夫人たった一人への愛を貫く男らしさ、その全てを尊敬している。勿論、こういった中沢氏についての大半は父から聞いたことではあるが。
「中沢様、ようこそお越し下さいました。」
普段は優貴さん、真実子さんと呼ばせて頂いているが、今日は他の人の目もあるので、親しげな呼び方は遠慮する。笑顔で頭を下げた俺は、何となく違和感、というか既視感を強く感じた。優貴氏にではなく、ご夫人の真実子さんに。
首を傾げて問い掛ける。
「………最近、どこかでお会いしませんでしたか?」
真実子夫人は意味ありげに含み笑いを見せたが、何も答えなかった。代わりに優貴氏が言う。
「こら、雅之君。人の奥さんを口説いちゃいけないよ?」
「いえ、そういうつもりでは………。」
「いくら雅之君でも譲れないからね?!」
俺は苦笑いした。
「本当に相思相愛なんですね。羨ましいです。………伺ってもよろしいですか?お二人の馴れ初めを。」
憧れの優貴氏と少しでも話したいが為に、本当はあまり興味が無い話題を、会話の流れに沿って振った。
「最初は親同士の決めた話だったんだよ。」
「………政略、ですか?」
「ああ。それで初めて家に招かれた時に、お手製のアップルパイを戴いてね、甘党の私は一発でノックダウンだった。」
優貴氏は愛おしげに真実子夫人を見つめる。
「今でも毎日、何かを作ってもらっているよ。」
俺は優貴氏も甘党だと聞いて、無性に嬉しくなる。
「僕も大好きなんです。甘い物。………いつか僕もそういう女性と出逢いたいものですね。僕の好きなお菓子を毎日作ってくれるような………。」
真実子夫人はまた含んだような笑顔を見せた。
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