4.今日のスイーツは
4.今日のスイーツは
夜、美味しいスイーツにありつける。そう思うと、それだけで俺は幸せな気分になる。勉強にも気合いが入る。それが済んだら、風呂に入ってゆっくり身体の疲れを落とし、優実の作るスイーツで心の疲れを落とすのだ、と思えるからだ。
期待しつつ扉を開けると、昨日や一昨日とは少し違った光景が繰り広げられていた。作業台にたくさん並んでいる白くて丸いもの。更に使われているのはいつものオーヴンではなく、鍋?
だが、その一瞬後、優実が鍋?から次々と出してくるものを見て合点がいった。今夜は手作り饅頭なんだ。鍋?に入れられる前の丸と比べると、かなりふんわりと大きくなっている丸。そこからほこほこと上がる蒸気に、俺は感動せずにはいられない。
優実は蒸し上がった饅頭を全て取り出して、小さい丸を新たに鍋?に入れている。その隙に、ひとつをつまんだ。熱い!滅茶苦茶熱い!お手玉のように両手で転がしながら、かぶりついた。蒸し立ては、凄く熱いが、凄く美味い。
小さい丸を入れ終わって、鍋?に蓋をした優実が振り向いた時には、俺は三個目を口にくわえていた。
「あ~っ!また勝手に召し上がってしまわれて!今日はケーキじゃないのに、どうしてですか?!」
「どうしてですかって、何?もしかして狙われるのは洋菓子オンリーだと思っていた?俺、洋でも和でも、甘い物なら何でもイケるんだけど。」
次々と口に運びながら言うと、優実は驚いたように声を上げた。
「えぇ~っ?!そうなんですか?!」
「そう。お生憎様。」
「で、幾つ召し上がられましたか?」
上目遣いで尋ねる優実に、俺はニヤリと笑ってみせた。ひとつつまんでみせる。
「これが六個目。」
「じゃあ、あと四つで打ち止めです。」
「嫌だね。」
「だって、足りなくなってしまうんです。」
「俺が全部食べるんだから十分。足りなくなんかならないぜ?」
優実は大きな瞳で睨んできた。
「雅之様、どうしてそんな意地悪するんですか?」
「………意地悪はお前だろう?俺が甘い物が大好物だと知っていて、こんなに沢山作っているクセに、俺には食べるな、なんて。」
「余分に十個作ったので、あと四つなら大丈夫なんです。でも、それ以上に召し上がろうとするじゃないですか。」
「本当に本気で美味いんだ!だが、二口や三口で無くなるくらい小さいんだから、十個やそこら食べたところで、全然足りないに決まっているだろう?!」
途端、優実の細い肩が小さく揺れた気がした。
「……そこまでおっしゃられるんだったら良いです。お好きなだけどうぞ。」
諦めたような彼女の言葉に甘えて、俺は次々と蒸し上がる饅頭を平らげていった。




