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二人の恋人シリーズ

取り合い

作者: 尚文産商堂

後輩二人に、まったく同じタイミングで告白をされてから早いもので1ヶ月が経とうとしている。

文化研究部という、比較文化学を中心にしようという、高校生にはなかなか重たい内容の部活だ。

前の部長が引退してから3ヶ月。

この最近、やっと俺が部長なんだという実感がありながら、部室には俺と後輩二人だけしかいない。


今日もそうだ。

後輩二人が、俺が座っている机の前で、なにか争っている。

どちらが俺によりふさわしいかを争っているという話ではあるのだが、俺としては、どっちと決めれない。

なにせ、二人ともかわいいし、好みだからだ。

問題は俺自身にもあるのかもしれない。

「先輩、そんな考えてないで、あたし/私のどっちが好きなんですか」

「だから、前から言っているだろ。俺にはそれが決めれないって」

「でも、付き合ってくれるのは一人だけですよね」

「だれが付き合うのは一人だけだといった。もしかしたら、二人とも一緒に付き合うのかもしれないぞ」

「それって不倫ってことですか!」

そうだ、名前を教えてなかったな。

小さくて、胸が大きい後輩が、山宮里子(やまみやさとこ)

実は、俺の3軒隣に住んでいる。

もう一方で、大きく胸が小さい後輩が、林一三(はやしいちみ)

山宮とは昔からの知り合いだったらしいのだが、ちゃんと紹介してもらったのは、この部活に入ってからだそうだ。

さっき不倫といったのは、山宮。

そして、その前に一人だけしか付き合わないといったのが林だ。

「不倫って…そんな、結婚するかどうかわからないんだから」

「結婚してくれるんじゃないですか。あの時の約束、忘れたわけじゃないですよね!」

山宮が俺に言ってきたが、約束なんてしたことはない。

なにせ、昔から、約束だよと言っては裏切られてきた歴史を持つ俺たちだ。

山宮と約束をすることぐらい、意味がないことは俺はよく知っている。

「したことないだろ。最後にしたのといっても、幼稚園の年少ぐらいのときだろ。そんなもの、とっくの昔に効力が消滅してるにきまってるさ」

「約束は約束ですよ。今でも、当然に効力を持っているはずです!」

「そこまでだよ。ほら、先輩困ってる」

そういって、俺への気遣いを見せる林に、すこし心が動いた。

「ふぅ…」

争いが一段落して、ため息をした。

「それで、どうなんですか。私とは」

林の言葉が、現実へ引き戻されるためのスイッチとなった。

「あのな、さっきから言っている通り、俺は、どちらと決めることはないって。今はな」

「だから、1か月前に、1年以内に決めるようにといったんですよ。きっかり1年後、その時にはどちらにするかをしっかり決めてくださいね」

どうやら、林にも、腹積もりはあるようだ。

これからも、大変なことになるのは、どうも確定事項らしい。

ああ、さらば平穏な日々。こんにちは、争いの日々。


そんなことになっていると、俺はクラスで昼食を共に食べている友人に愚痴った。

「そりゃ大変だなぁ」

男だから、恋愛関係にならなくて済む。

むろん、BLの気があるとは、到底思えないし。

「それで、どう思う」

「そりゃ、女の子の気持ちになって考えてみろよ。自分の彼氏が、どちらともない答えしか言わないんだったら、いつ心が離れるか気になって仕方ないだろ。だから、さっさと決めるのが一番だと思うがな」

「じゃあ、こういうのって、どうだろ」

俺が、たった今思いついたことを、友人に行ってみると、大笑いされる。

「そりゃお前、無理があるってもんだろ。でもまあ、言ってみなよ。反対されそうな気もするがな」


その日の放課後、部室にて、俺は二人を前に、今の気持ちをそのまま伝えた。

「俺がどっちと付き合うのかというのが決められないという話なんだが、それについて、一つの回答を得た」

「なんですか。突然に」

山宮が、すこし驚いたように言った。

「1か月、それぞれと付き合ってみて、それから決めようと思う。1か月交替でな。それで、決着がつかなければ、次の2か月も、同じように。さらに決まらなかったら…って感じで行ってみたい。どう思う」

「それで決まれば安いものですよ」

林はすぐに賛同してくれた。

「山宮は」

すこし不服そうな山宮も、うなづいてくれた。

「じゃあ、明日から、どっちが先に俺の彼女になってくれる?」

争いは、これからだった。


だが、10分ほどの言い争い、一部殴り合い込の結果、先に付き合ってくれるのは林と決まった。

「じゃあ、これから1か月、よろしくな」

「こちらこそ、私が一番だって教えてあげますよ」

少しは、先が見えてきて、ほっとしている俺がいた。

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