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悪魔来  作者: 銀翠
9/18

その9〜兄妹〜

「んー…朝、かな?」起き上がり、時計を確認する。針は9時を示していた。

「それにしても…そっか、そうだったんだね」まぁ独り言はおいておこう。眠たい目をこすり、昨日切った傷を見る。赤い線は、手首の少し下から肘のほうへとのびていた。血は拭いたけど、結局包帯などはつけなかった。傷が少し痛む。「切るのはいいんだけど…かさぶたがかゆいんだよなぁ」まぁ、しょうがないことだ。

目線を隣に寝ている女の子に移す。なんとなく、申し訳ない気持ちになった。「心配させちゃったなぁ…」僕はライアちゃんの頭をなでる。「むー…」と、うなっているが、僕はなでるのを止めない。少しの間なで続けていると、ライアちゃんは起き上がった。「おはよう」彼女は寝ぼけ眼で僕を見て、すぐにはっとし目を覚ます。「十夜、腕大丈夫?」ライアちゃんは僕の左腕の傷を見て、言った。「うん、大丈夫だよ…慣れてるからさ」軽く笑ってみたが、ライアちゃんは悲しそうにしている。「自分で自分を傷つけるのは、だめだよ」「分かってはいるんだけどね…」「次やったら、私が十夜を斬りますからね?」あれ?なんか矛盾してないか?それでも、真剣なライアちゃんを見て僕はうなずいた。「気をつけるよ」「分かってくれればいいんですよ。…ご飯にしましょー」「うん」僕らは部屋を出てキッチンに行った。

いつもの様に、おかずをチンしてご飯を食べる。そして後片付け。「ほんと…毎回毎回説明するのも、僕はどうかと思うけどね」「なんの事ですかー?」「いや、ちょっと誰かさんの代わりに言っただけ」「むー?」まぁどうでもいいのだ。

部屋に戻り、机の前のいすに座る。ライアちゃんはいつも通り、机の上に座る。「十夜はどうして、自分を傷つけるの?」昨日聞かれた事を、今も聞かれた。「自分が嫌いだから、かな」「私も自分が嫌いだけど、私はしないなぁ…」「人それぞれだと思うけど、さ」僕はかなり自虐的タイプなんだと思う。「僕を心配してくれる人なんて、いなかったからね」僕は嘘を吐いた。「私が心配しますよ」僕は、きっと心配してくれる人がいても、切ってしまうだろう。それほどにダメ人間なんだ。でも…「ライアちゃんが心配してくれるなら、僕はきっと切らないよ」これは本心だ。「大切な人が傷つくのを見るのは、耐えられませんよ」大切な人か…まぁ深い意味はないのだろうけど、それでも僕は嬉しかった。「僕も、ライアちゃんが自分で自分を傷つけてたら、止めるだろうなぁ」全く、人間とは変な生き物だ。自分が良くても、他人はだめだと言うのだから。「十夜は、死んだりしないよね?」唐突に、ライアちゃんはそんな事を聞いてくる。しかも、雰囲気が普通じゃなかった。なんというか…深い哀しみみたいなものを感じた。「死んだりはしないよ、元々死ぬためにやってたわけじゃないし」なんだろうか?ライアちゃんは自分を傷つける事に関して、かなり拒絶オーラを出しているような気がする。「それなら…いいんだけど」「ライアちゃん、何かあったの?」僕は興味1割、心配9割でそう聞いた。少しの沈黙…ライアちゃんは悲しそうにうつむいていた。「…その内ね」「え?」「その内、全部話すから」全部、か。その時にその理由も分かるだろうし、ライアちゃんが僕を殺しに来たのに殺さないわけもきっと分かるのだろう。なんとなく、そんな予感がした。「分かったよ、その内だね」「うん…言えない事ばかりで、ごめんね」「いやいや、気にしないでいいよ」正直、彼女に何があったのか僕はすごく知りたい。彼女の力になりたいし、何より頼ってもらえてない気がして、嫌なんだ。「…したくないから」ライアちゃんは小さく何かを呟いた。「え?」「んーん、なんでもないですよ」まぁ、その内分かるだろう…。

「今日は、何して遊ぶんですかー?」いつものライアちゃんが、そこにいた。「そうだねー…今11時かぁ」ゲームという手もあるが…そう言えば、今日は晴れてるのかな?僕はカーテンを開けて、確認する。昨日の雨が嘘だったかのように、空は晴れわたっていた。「いい天気だなぁ、散歩でも行く?」僕はライアちゃんに聞く。「昨夜はいけませんでしたし、いきましょーかー」「なら、決まりだね」そう言って、僕は外着に着替える。着替えてる間、ライアちゃんは僕をじーっと見ている。「えっと…そんなに見られると着替えづらいなぁ…」「減るもんじゃないし、いいじゃないですかー」おいおい、あんたはどこのオヤジだよ…。まぁ気になりながらも着替えを済ませ、ライアちゃんと家を出る。母はもう仕事に出ているので、戸締りはしっかりとする。


いつもの散歩コースを歩きながら、僕は口を開く。「そう言えばライアちゃんってさ、パジャマも外着も一緒なんだね」黒のシャツに黒のスカート、会った時から変化はない様に見えるけど、ライアちゃんいわくちゃんと着替えているらしい、しかも微妙に違うらしい。僕には分からないけどね。隣を歩くライアちゃんは、僕を見上げて聞き返してくる。「同じに見えますか?」「え?だって、着替える時間なかったじゃん」「ふふふ、十夜もまだまだですねー。と、ライアはぁゃιぃ笑いを浮かべ、言った」「いやいや…何言ってるの?」ライアちゃんは笑いながら、「ナレーション担当してみましたー」と言う。「怪しいがぁゃιぃになってる辺り、ライアちゃんっぽいんだけどさ、聞いてる人にはわからないんじゃない?」「十夜に分かれば、いいんじゃないですかー?」いいんだろうか…「まぁいいか」結局ライアちゃんの服の事はうやむやにされてしまった。

「それにしても…暑いなぁ」太陽はじりじりと僕らを照りつける。「私は平気ですけどねー」「そう言えば、暑いの好きなんだっけ」「暑いのは大好きですよー、暑苦しい人は苦手ですけど」あはは、と笑う彼女。「それは分かるけど、でも暑いのと暑苦しいのは違うんじゃないかと…」「どっちでもいいじゃないですかー!!」「いやいいんだけどさ…ライアちゃんってキレキャラだよね」まぁそれも今更の様な気もするけど。「私の半分は、キレで出来てるんですよー」「バファ○ンじゃないんだから…」ライアちゃんって結構、ギャグ好きだよな…。

「暑い…」何回言ったかも分からないぐらいに、僕は暑いと口にしていた。「もー、十夜は何回言えば気が済むんですかー?」隣を歩くライアちゃんは、少し怒り気味だった。「何回言っても、気が済むもんじゃないからなぁ」暑いのはしょうがない事だしね。「でも、こう暑いと言わなきゃやってられないよ」僕は服の襟元をつかんで、パタパタと風を送る。服は汗でびっしょりだ。「十夜は暑がりですねー」隣を歩くライアちゃんは、ほとんど汗をかいていない。「僕が暑がりなわけでもないと思うけど…ライアちゃんは汗すらかいてないね」「服の内側は少し汗かいてますよ?見ますかー?」嫌な笑いを浮かべながら、そう言う彼女。大抵そういう時はからかって言っている。だけど分かっていても、僕はつい顔を赤くしてしまう。「…いや、いいよ」つい顔をライアちゃんの反対側にやってしまう。くすくすと笑っているのが聞こえてくる。「冗談ですよ、十夜はからかうとほんと面白いんだからー」真剣の時でも冗談の時でも、僕はライアちゃんに勝てなさそうだ…。

「ねぇ十夜、お昼寝していかない?」草原の近くを通っている時に、ライアちゃんはそう聞いてくる。「もしかして、また草原で?」「うん、気持ちいいですよー?」「んー…」確かに、この前横になった時は気持ちよかった。だけど、昼寝なんてしたら干からびそうだなぁ…。「まぁ、いっか」「わーい」と喜ぶ彼女。僕らは道路から少し外れて、草原へと歩いた。相変わらず、草は青々と茂っている。「てやー」ライアちゃんは、草のベッドへと飛び込む。「石あったら危ないって…ていうか、地面濡れてないの?」見た感じ、草の先端は濡れてないけど、下はどうだか分からない。「一応平気ですよー」一応?僕もライアちゃんの隣に横になる。「確かに…一応乾燥はしてるみたいだけど」家帰ったらお風呂かな、これは。「えへへー、やっぱりここは気持ちいいですよー」「だねー、暑いけどうとうとする」太陽は僕らを、じりじりと照らしている。あんまりにもまぶしいので、直視は出来ない。だから、僕はライアちゃんの方を向いた。「…ぐーっ」「って、寝るの早いって!」腕を伸ばして、頬をつっついてみる。反応なし、どうやら本当に寝ちゃったようだ。「なんだかなぁ…」まぁ、いいか。僕も寝てしまおう…。とは思うけど、なかなか寝付けない。「暑いって…」気温は一体何度なんだろう?少なくとも、30はこえていそうだった。「しっかし…」隣ではライアちゃんがすやすやと寝ている。「暑くないってのもすごいよなぁ」とても良い寝顔をしながら、ライアちゃんは寝ている。少しの間見ていると、いきなりその寝顔が悲しそうにゆがんだ。よく見せる、ライアちゃんの本当に悲しそうな顔。少し、胸が痛くなる。悲しそうな顔をしたまま、ライアちゃんは呟いた。「…兄さま」死んでしまったお兄さんの夢を見ているのかな?その割には、悲しそうだけど…。「死んじゃ…やだよ」「ライアちゃん…」僕は目をつぶり、意識を交代する。「ライア…」俺はライアの手を握り締めて、耳元で優しく呟く。「俺はここにいるよ、だから泣くな」ライアの顔は、悲しそうな顔からいっきに笑顔になった。「兄…さま」ふぅ…俺にはこれぐらいしかしてやれないからな。「悪かったな十夜、ありがとう」俺は自分に礼を言う。俺は目をつぶり、意識を交代する。「気にしないでください、僕じゃ何も出来ませんから」僕も自分に話しかける。端から見たら、たたの変な人だろう。


誰にも言ってないし、言ったところで信じてもらえないだろうけど、僕の中にはライアちゃんのお兄さんがいる。僕だって、お兄さんだと知ったのは今朝の夢の中なんだ。元々、ライアちゃんのお兄さんは僕の中にいたんだ。中学3年生の時だっただろうか、気づくと僕の中に違う誰かがいた。その誰かは何かを言うわけじゃないし、何かをするわけじゃなかった。僕も最初は気味が悪かったけど、いてもいないのとなんら変わらない彼は、気づけば僕の中の住人になっていた。そんな彼が、今朝夢の中で初めて話しかけてきた。

「初めまして、でいいのかな?」「初めまして、結構前からいるけど、あなたは誰なんですか?」「俺は…ライアの兄だよ」「は?」この人はいきなり何を言ってるんだ?「まぁ変に思うだろうけど、本当だ」「はぁ…で、いきなり話しかけてくるなんて、どうしたんですか?」「今更だが、ライアのことをよろしく頼みたくてな」「えぇ?」いまいち意味が分からない。「ライアのこと、好きなんだろ?」「うっ…そうですけど」だから、どうしたと言うのだろう?「ライアも、お前のことが好きだろうな」僕は顔を赤くする。「はは、純な少年だな。まぁ、そういう事だ、ライアを頼むよ。あの子は強く見えるが、本当は弱いからな」「ライアちゃんは強いと思いますけど…」よく見せる悲しそうな顔を思い出して、僕は止まる。「分かっただろ?ライアは弱い」「じゃあ、あなたがライアちゃんに言ってあげればいいんじゃないですか?兄はここにいるって」多分、体を貸す事は可能だと思う。それを決める権利は僕にあるって、なんとなく分かるからだ。「…すまんな少年、俺はライアを見守る事しか出来ないんだ」つらそうに、ライアちゃんのお兄さんは言う。「…分かりましたよ、ライアちゃんの悲しそうな顔は、僕も見たくないですからね」「ふ、助かるよ。さてもう朝だ、また会おう」

これが今朝の夢の内容だ。まぁ夢の中じゃなくても、会話はできるみたいなんだけどね。「さって、僕も寝るかな」ライアちゃんの手を握りながら、僕は彼女の横で目を閉じた。暑い中、ゆっくりと意識は飛んでいった。


「朝ですよー」「ん…?」目を開けると、ライアちゃんが顔を覗き込んでいる。「おはようございますー」「うん、おはよう…あれ?」体を起こして辺りを見回すが、そこは自分の部屋じゃなかった。「どうしたんですかー?」ああ、そっか。草原で昼寝をしていたんだった。「いや、なんでもないよ」僕は誤魔化した。何寝ぼけてるんですか?とか言われたくないからね。「むー?」ライアちゃんは、なんとなく機嫌が良さそうだった。「なんか、良い夢でも見たの?」「えっ?何で分かるんですかー!?」ライアちゃんはびっくりしている。そりゃーね…ま、本当の事は言えないけどさ。「なんか、機嫌が良さそうだからさ」だから、一番適当な理由を言ってみる。「やっぱり、十夜には分かっちゃいますかー」あはは、と楽しそうに笑う彼女。「良い夢でしたよ…」ライアちゃんは余韻に浸り、目を閉じる。なんとなく、神秘的な感じがするのは、僕だけなのかな?「夢が、現実になればいいんですけど…ね」一転して、急に悲しそうになる彼女。僕にはその夢が、現実になる事はないと分かっているから、なんとも言えない感じになってしまう。だって、死んでしまった人とはもう会えないんだから…。「きっと、現実になるよ」心にもない事を言う。でも、ライアちゃんが喜ぶなら現実にしてあげたいな…。

「そう言えば、どんな夢だったの?」一応聞いてみる。笑顔に戻り、弾んだ声ででライアちゃんは答える。「私の大好きなシュークリームを、たくさん食べる夢ですよー」え?何それ、そんな事の為に悲しそうな顔したんですか?君は…。

予想外の言葉に、僕が何も言えないでいると、「なーんて冗談ですよ」ひっかかった、と言う様に笑う彼女。「だまされたなぁ」んー、僕もまだまだだなぁ…ライアちゃんなら、ほんとにありそうな感じがあるから、ついひっかかってしまった。今度、シュークリームを買ってあげるか…。「本当はですねー…パパとママと兄さまと私、みんなで楽しく笑いあってる夢を見ました。楽しかったですよー、なぜか十夜もいましたし」「僕もいたんだ?一家団欒の中に、なんで混じってるんだろうねぇ」謎ではあるけど、夢だしね。まぁ、僕がライアちゃんを喜ばせているようで、嬉しいからいいかな。「…十夜」「ん?」ライアちゃんの雰囲気が、がらりと変わる。「十夜は、ずっと一緒にいてくれるよね?死んだりしないよね?」朝と同じ質問を、ライアちゃんは繰り返す。「死んだり…しないよね?」空気が張り詰めている。彼女の悲しさが、違う世界を作り出してるみたいだった。「死なないよ…ライアちゃんと、一緒にいたいから」僕は小さく、でも強くそう言った。「十夜ー…」ライアちゃんはポロポロと涙をこぼしている。ほんとに、喜怒哀楽の激しい子だなぁ…。立ち上がって、ライアちゃんを抱っこする。「帰ろうか」ライアちゃんは僕の胸で泣き続けている。夕日が僕らを照らす中、僕らは家に帰った。


部屋に戻り、自分の布団に座る。なぜかライアちゃんは、僕に抱っこされたままだ。家に着いた辺りで泣き止んだので、おろそうとしたら駄々をこねられた。だから、今でも抱っこしてるわけなんだけど…。「ライアちゃん、離れない?」「いやです」んー、僕としちゃ嬉しいところなんだけど、チキンハートがずっと高鳴りっぱなしなのが少しつらかった。早くなっている鼓動を、ライアちゃんに聞かれているのはなんか恥ずかしい。「ちょっと僕お風呂入らないと…」「いやです」即答されてしまう。「いやでも、布団汚れちゃうし…」結構手遅れっぽいんだけどさ…。「じゃあ、一緒に入ります」マジですか?さすがに困る。「えーっと…」「いやです」「その…」「だめです」何かを言う前に、即答されてしまう。ライアちゃんは一体どうしたんだろうなぁ…。

結局、そのまま30分ほど時間がたってから、ライアちゃんが僕から離れた。「あの…ごめんね」しずしずと頭を下げられる。さすがに、そこまで申し訳なさそうに謝られると、怒る気は起きない。ていうかそんなもんは、元々起きないんだけどさ。「いいよ、僕だって嫌じゃないし、ただ…」ライアちゃんは身を縮める。怒られると思ったのだろう。「お風呂行って来るね…」さすがに汚れたまんまはまずいしね。

身を縮めてるライアちゃんを部屋に残し、僕はお風呂に行く。ついで…でもないけど、僕は体の中…正確にはどこにいるのか分からないんだけど。まぁライアちゃんのお兄さんに話しかける。「ライアちゃん様子がおかしいんですけど、何かあるんですか?」話しかけると言っても、昼みたいに声を出してるわけじゃない、心で話しかけてるみたいなもんかな。「さっきから、えらく説明的だな」「人の説明を勝手に聞かないでくださいよ…それより、ライアちゃんの事ですよ」「ああ、ライアがああなったのは…俺含める家族のせいだな」「家族?俺って…えらく普通に言いますね?」軽い苛立ちを覚える。「そうカリカリするな、本当の事を本当と言って何が悪い?」「ごもっともなんですけどね。自分のせいだ、なんて普通に言われたらイライラしません?」「ま、こんな性格なんだ、少しは大目に見てくれ。ライアには悪いことしたと思ってるしな」「一体、何があったんです?」「…ライアから聞きな」「その内って、言われましたよ」「ライアがその内って言うなら、その内だろ。理由が分からないと不安か?」「不安に決まってるじゃないか。彼女に何があったのか、僕は知りたい」心の声は、ついとげとげしいものへと変わる。「知りたいなら尚更だ、ライアから聞け。あいつを少しは信用してやれ」「僕に信用しろだって…?僕は他人を信用する事なんて出来ない。あんただって分かってるだろ?僕がどんな人間か…」汚い自分が、次々とあふれでてくる。「そうだったな、自分が傷つくのを恐れて逃げた、馬鹿野郎だったな。しかもそうやって思い込んで、自分自身からも逃げようとしてる」ついカッとなる。「うるさい!あんたに何がわかるんだよ!」「わからんし、わかりたくもない、。だが、ライアへの想いは本物なんだろ?」「ああ、そうだよ!僕はライアちゃんを、守りたい」「それで十分だろ?誰かを好きになれるなら、信用することも出来るはずだ」「何を…」「さっさと行ってやれ、また悲しむぞ」「…その内、殴られせてもらうからな」「続きは夢でな」

僕はすばやくお風呂を出て、部屋に戻る。身を縮めてうつむいていたライアちゃんが、顔を上げて僕を見る。どことなく、安心した表情だった。「遅くなってごめんね…」「気にしないでいいですよー」なんか、無理してる感じだ。僕はライアちゃんの隣に座り、彼女に聞く。「ライアちゃんさ、僕のところに来るまでに、何かあったの?」「…」ライアちゃんはうつむいて黙る。「ライアちゃんの過去を知りたい。僕自身の為に、ライアちゃんの為に」彼女の力になってあげたいんだ…。

それでも、ライアちゃんは黙ったままだった。胸が痛くて切なくて、たまらなかった。ただそばにいることが彼女のためだとしても、好きな人に頼ってもらえないのは、あまりにも苦しい。「ごめんね、僕空回りしてるみたいだ。…今日は、父さんの部屋で寝るよ」居づらくて、僕は部屋を出た。振り返りはしなかったけど、ライアちゃんが何か言おうとしてたのは分かった。それでも僕は…逃げ出した。過去のことなんか分からなくたって、彼女にしてあげれることはたくさんあるだろう。でも、僕は…僕は…!

…つまらない意地なのかもしれない、もっと頼って欲しいと…。

お腹は減っている。でもそれ以上に胸がつまっていて、食べる気が全く起きなかった。だからそのまま父さんの部屋で寝ようとした。だけど、色々な考えが交錯して、僕の意識がとんだのはかなり先の事だった。最後に思ったのは、明日ライアちゃんに謝ろう、だった。

今日も一日が終わる。

未だに謎なライアの過去。この先この二人はどうなっていくんでしょうかね。

展開の早さに作者もついていけません・・・

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