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悪魔来  作者: 銀翠
14/18

雨降って地かたまる

「まいったなぁ…」僕は今、亡くなった父さんの部屋で悩んでいる。「どうしよ

っかなぁ」僕が何を悩んでいるのかと言うとだ。まぁ、少し前の話なんだけど…


「んー…朝かな?」体を起こして、時計を見る。「7時か」昨日寝るの早かったか

らなぁ…眠くないや。立ち上がって軽く伸びをすると、隣で寝ていたライアちゃ

んが目を覚ました。「むー…おはようございます」「おはよう、起こしちゃった

かな?」「そんな事ないですよー、昨日は寝るの早かったからねー」「やっぱり

寝るの早いと、早く起きちゃうねぇ」朝早く起きても、やる事ないからなぁ…。

「まぁ、ご飯食べる?」「食べましょー」

僕らは部屋を出て、キッチンに行く。今日はライアちゃんが目玉焼きを作ってく

れたから、それをおかずにご飯を食べた。「今日の黄身は潰れてなかったね」後

片付けをしながら、僕は笑いながら言う。「いつも潰れちゃうわけじゃないです

よー、私だって学習しますから」まぁ、それもそうだな。

後片付けを終えて、部屋に戻り、僕は自分の布団に横になる。ライアちゃんは、

いつも通り僕の隣に横になる。「さーて、今日は何しようか?」「十夜は、何を

したいんですかー?」「んー…」聞き返されたのは初めてで、少し考える。「特

にしたい事もないんだよなぁ」忙しい時は暇が欲しいけど、暇な時はやる事がな

くてつまらないもんだ。「若いのに、そんなんじゃだめですよー」「そうなんだ

けどねぇ…」暇潰し…暇潰し…うーん。「何か二人でやりましょーよ」ライアち

ゃんも、何も考えついてないみたいだなぁ。「二人でやれる事…」僕はつい顔を

赤くしてしまった。やべ…何考えてるんだ僕は…。「どうしたの?」ライアちゃ

んは顔を覗き込んで来る。「いや…なんでもない」エッチな想像したなんて、本

人には口が裂けても言えなかった。やっぱりたまってんのかなぁ…。「むー?」

「ま、まぁそれはおいといて…暇だねぇ」「ですねー」「ご飯食べて、すぐに寝

てるなんて太りそうだなぁ」「前も言いましたけど、十夜はもう少し脂肪つけた

方がいいですよー」「太りにくい体質なんだよね。そういうライアちゃんだって

、小さいよね。胸な

んてまったい…」あっ…やば。ライアちゃんは黙っている、それがすっごく怖か

った。「いやほら、なくても僕はきにしな…」「十夜の馬鹿ー!!」パチン、と

左頬を思いっきりはたかれた。「痛いって!」今回は冗談じゃなく、本気で痛か

った。だからつい、僕もカッとなった。「ライアちゃん、手あげるの早いって!

」「十夜が悪いんですよ!」「だからって、たたくなよ!」そこから先は、口喧

嘩のイタチゴッコだった。

「もう…十夜なんて嫌い、出てけー!」「僕だって嫌いだ!」そう言い残して、

僕は部屋を出た。それから父さんの部屋に行って、少し時間をおいた。時間がた

つにつれて、ライアちゃんに対する怒りはなくなって、罪悪感でいっぱいになっ

て来た。

まぁそんなわけで、今に至るんだけど…。「どうしよう…」売り言葉に買い言葉

で、つい嫌いなんて言っちゃったけど、今はすごく反省してる。「どうすれば許

してくれるかな?」僕だけが悪いわけでもないんだけど、謝らないと話にならな

い…。「はぁ…」ライアちゃん、ほんとに僕の事嫌いになっちゃったのかな…?

そう考えると、自然と涙が出そうになってしまう。「嫌われたくないよ…」胸が

痛い…切ない…。誰かに嫌われる事が、こんなに苦しいなんて思った事あったか

な?「はぁ…」謝りたくても、ライアちゃんが怒っていると思うと、謝る事が出

来なかった。「ほんとに…僕は弱虫だなぁ」寝っ転がって天井を見ても、良い解

決策は見つからなかった。「そういえば…」考えてよまれた事はあったけど、胸

ないね、的発言をしたのは今回が初めてなんだ…だからライアちゃんの怒りは、

尚更なのかなぁ?

「んー…!」一時間ぐらい考えても、何も出て来なかった。

そこからさらに30分ぐらいたってから、僕は立ち上がる。「謝ろう…」気にして

る事言ってごめん、って。嫌いなんて言ってごめん、って…。

父さんの部屋を出て、自分の部屋の前に来る。「すぅー…はぁ」何回か深呼吸。

あれ?デジャウ"かな?前もこんな事あった様な…。「あっ…」ライアちゃんが家

を出て行った日、彼女が死んでしまった日…あの時に似ている。僕は焦って、部

屋のドアを開けた。部屋の中にライアちゃんは…いた。ていうか、寝てた。「ふ

ぅ…」ほっと一息を吐く。良かった…。

僕はライアちゃんを起こさない様に、隣に座る。ライアちゃんが寝ているのは、

僕の布団だった。「謝りに来たんだけどなぁ…」すーすー、と寝息をたてて寝て

いるライアちゃん。「ちょっと、肩の力が抜けたなぁ」起こすわけにもいかない

し、どうするか…。「まぁ…これはこれでありかな?」ライアちゃんの寝顔を見

る。すごくほっとする顔だ。「幸せそうだね」ライアちゃんが幸せなら、僕だっ

て幸せなんだ。

ライアちゃんの寝顔を見ていたら、僕も眠くなって来た。「隣で寝ても、平気か

な?」ライアちゃんの隣に横になる。「ごめんねライアちゃん…おやすみ」起き

たら、もう一度謝ろう。許してくれるまで、何度でも…。僕は夢の中へと誘われ

ていった。


「ん…?」目を開けると、ライアちゃんが僕の顔を見ていた。「…起きた?」「

うん…」いつから見てたのかな?寝顔見られるのは、なんか恥ずかしいや。僕は

体を起こして、口を開く。「「えっと…」」僕らははもった。「あ、ライアちゃ

んから」「あ、十夜から」またはもった。「…」少しの沈黙。「えっとね」僕が

先に口を開く。「さっきは…ごめんね、ライアちゃんが気にしてる事言っちゃっ

て…」ライアちゃんの目を見て、真剣に謝る。「ううん、もう気にしてないよ。

私も…ごめんね」僕らは少しの間、見つめ合う。「嫌いなんて思ってないから、

ライアちゃんの事…大好きだから」「十夜…」何回も好きってライアちゃんに言

ってきたけど、今回はいつもより本気だった。いつもが冗談、ってわけでもない

よ?だって、ライアちゃんに嫌われたくないからさ。「私も…十夜の事大好きだ

よ」どちらからか分からないけど、僕らは顔を近付ける。「ライアちゃん…」「

ん…」そしてキスをした。長い長いキスだったと思う。僕らは唇を離して、はに

かむ様に笑い合う。「かわいいよ」「十夜も、かわいい」かわいいと言われて、

僕は喜んでいいのか

悩みながら、ずっと二人でラブラブしていた。


「やっぱり、こうじゃないとね」「何が?」僕らは夜の道を散歩している。「僕

がライアちゃんの隣にいて、ライアちゃんが僕の隣にいる。それが、すごい嬉し

い」「十夜ー、恥ずかしいですよ」隣を歩きながら、顔を赤くするライアちゃん

。「ケンカして分かるものもあるんだねぇ」「ですねー」ほんと、僕は幸せだな

。好きな人が、いつでも隣にいてくれるんだから。でも…「いつか、魔界に帰っ

ちゃうんだよね?」それが、寂しい。「うん…」ライアちゃんも、寂しそうにそ

う言う。「帰っちゃったら、もう会えなくなる?」「そんな事はないですよ。離

れてたって、私の想いはいつも十夜のそばにいますから」恥ずかしい言葉を、な

んの臆面もなく言うライアちゃん。でもそれって…「やっぱり、会えなくなっち

ゃうんだ…?」「うん…」小さく頷く彼女。「簡単に、来れないの?」「行き来

はそんなに大変じゃないですよ、でも…」「でも…?」「…」ライアちゃんはそ

の先を言わない。「別れがあるのは、しょうがない…のかな?」「うん、しょう

がないんですよ」悲しい別れがあるから、嬉しい出会いがある。そんな事は分か

っていたって、どう

にも出来ない気持ちは…あるんだよ。「私は、十夜に会えて良かった。これから

悲しい別れがあっても、私は後悔しない」強く、しっかりとライアちゃんはそう

言う。やっぱり、ライアちゃんは大人だな…。「僕は、悲しい別れがあるなら、

嬉しい出会いもいらない…」僕は、そこまで割り切れる程大人じゃないんだ。「

だから、嬉しい出会いを悲しい別れにする気はない。わがままだと思うけど、僕

はそう思う」「十夜はまだまだ、子どもだね。でも、それが出来るなら、それが

一番いいね」寂しそうに、ライアちゃんは言う。「二つしか選択肢がないなら、

僕は選択肢を増やしてでもわがままを貫き通す。ライアちゃんのそばにいたいか

ら」ほんっと、僕はガキだなぁ…。「十夜、諦めないひたむきさは大事だよ。で

も諦めないといけない時も、あるんだよ?」「それが大人になるって事なら、僕

は一生ガキでいいや」親の事とか、学校の事とか、友達の事とか、逃げてばかり

いた僕だけど、諦めないで現実を見ようと思った。今をがんばってみようと思っ

たんだ。「それが、私に迷惑をかけるとしても?」「うっ…それは…」僕は言葉

につまる。「僕がわ

がまま言ったら、迷惑?」「迷惑だよ」「そっか…ごめん」涙が出そうだ…胸が

痛い。「迷惑だけど…すっごく嬉しいよ。私だって、離れたくないんだから」「

あ…」そっか、辛いのは僕だけじゃ…ないんだよね。「難しいね」「ほんとにね

ー」ほんと…難しいね。


僕らは散歩を終えて、部屋に戻って来た。「あー…難しい事ばっかり考えてたか

ら、頭がクラクラするよ」「あはは、そうやって大人になるんですよー」僕は布

団に倒れ込む。するとライアちゃんが、僕の胸に飛び込んで来た。「ごほっ…痛

いって」「十夜、ぎゅーってして」「ん…」僕はライアちゃんをぎゅっと抱き締

める。「あったかいね、十夜…」「僕は少し暑いかな…」まぁでも、心地良い。

「電気消さないと…寝るでしょ?」「うん」僕はライアちゃんを抱き締めたまま

、立ち上がって電気を消す。「んじゃ、おやすみ」布団に戻る。「おやすみなさ

い」ライアちゃんの体温を肌に感じながら、僕は夢の中へと誘われていく。二人

の時間を…もっと楽しみたい…なぁ…。

今日も一日が終わる。



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