表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪魔来  作者: 銀翠
13/18

悪魔と天使と

久しぶりに、夢を見ている。久しぶりって言っても、最近忙しかったからそう思

うだけなんだろう。これが夢の中なんだ、って自分で分かっている夢だった。

その夢の中には、母さんと…死んだ父さんがいた。母さんが若かいから、きっと

何年も前なのだろう。「ていうか、夢の中なんだから月日なんて関係ないのかな

?」おお、一人言も言える。

母さんと父さんが、何かを話している。僕は近くに寄って、耳を傾けた。二人に

は、僕の姿は見えてない様だ。「当たり前か」まぁ今は、話しを聞こう。

「稲子、こんな俺でいいのか?」「あなたなら、私はかまわない」そう言って、

母さんが父さんに抱き付く。うわー…なんで僕が二人のラブシーンを夢に見なき

ゃならないんだ?そんな事を考えていたら、次の言葉を聞き逃すところだった。

「俺は…人間じゃないんだぞ?」えっ?「あなたが悪魔でも…私はあなたじゃな

いとだめなの!」悪魔?二人は何を言ってるんだ?

それから二人は何も言わないまま、ただ抱き合っていた。

これは夢だ、自分でも分かってる。なのに…なんでこんなに気になるんだろうか


「うーん…変な夢見たなぁ」起き上がり、目をシパシパさせる。「夢のわりには

、鮮明に覚えてるし…」まぁしょせんは夢なんだろうけど…ていうかもしあれが

現実にあった事なら、僕はさすがに笑っちゃうな。

軽く気持ちを切り替え、時計を見る。時間は9時だ。「まぁ、起きるか」ていうか

、寝る気が起きなかった。変な夢恐るべし…。

隣で寝ているライアちゃんの顔をつっつく。「朝だよー」「むー…」相変わらず

ライアちゃんの頬は柔らかい。だからつい、つっつきたくなる。「おーい」「に

むー…」んー、なかなか起きないなぁ。「まぁ、無理やり起こすのもかわいそう

かな」僕はつっつくのをやめて、立ち上がる。聞きたい事あったんだけど…まぁ

起きたらでいっか。

部屋を出て、まずはトイレに行く。トイレを済ませて、母さんの部屋へ。「いる

かな?」ドアをノック、返事はない。更に五回ぐらいノックしても、返事はなか

った。「帰って来てないか…」しょうがないか…部屋に戻って時間つぶすかな。

部屋に戻ると、ライアちゃんが起きていた。「あ、十夜おはようございますー」

「おはよう」僕が机の前のいすに座ると、ライアちゃんは机の上に座った。まぁ

、いつも通りだね。「どうしたんですかー?何か釈然としない顔してますけど」

ライアちゃんが顔を覗き込んで聞いて来る。相変わらず、鋭い子だよなぁ…。「

少し、変な夢を見たからねぇ…そうだ、ライアちゃんさ」「はいー?」「人間と

悪魔の違いって、簡単に見分けつく?」「えーと…外見で?それとも内面で?」

「どっちでもかわまないよ」「そうですねー…」ライアちゃんは右手を頭に当て

て、考える。「羽は隠してれば分からないですしー…尻尾も隠せるんですよねー

…」「外見じゃ分からないかなぁ?」「ちょっと難しいですねー…でも悪魔は人

間と違って、傷の治りや病気の治りが早いですよー」「へぇ…」僕は前に、ライ

アちゃんからもらった蹴りでついた頭の傷に触れる。結構血が出ていたのに、僕

は次の日にはもう包帯をとっていた。治りが早いって…まさかなぁ。他にも思い

当たる節があるんだよなぁ…。「どうしましたー?」「ああ…なんでもないよ。

他には何かない?」

「そうですねー…個性が強いってのもありますし」「ああ、それは前にも聞いた

ね」僕はどうだろう?個性強いのかなぁ…一人言は多いんだけど。「むー…こう

やって考えると、あんまり違いがないですねー」「悪魔と人間の決定的な違いが

ないなら、なんで悪魔と人間は種族が分かれてるんだろうね?」「あ、それは勉

強しましたよー」「やっぱり何かあるの?」ライアちゃんは無い胸を張って、偉

そうに言う。だけど全然似合ってなかった。「人類が生まれた時にですね、悪魔

や天使も一緒に生まれたんですよー」「えっ?天使もいるの?」悪魔がいれば天

使もいるのが当たり前だろうけど、なんだかなぁ…。「天使もいますよー。悪魔

と天使は敵同士って人間は思ってますけど、そうでもないですよ」「ふーん…難

しいねぇ」「えーとですねー…人間は、羽が生えてる悪魔や天使を迫害したんで

すよ」人間ってやつは、いつの時代も変わってないって事か。「それでですね、

悪魔は人間に対抗して、人間を倒そうとしました。天使は、人間に迫害を受けた

のに、悪魔を止めようとしました」「ふむふむ…」まるで、神話みたいだなぁ。

「全面戦争になりそ

うになった時、全てを作った偉い神様がそれを止めました。そして、魔界・人間

界・天界と別々に、悪魔や人間や天使を分けたんですよー」「なるほどねぇ」「

だから、種族が分かれる事になったんですよー。更に言うとですね」と、ライア

ちゃんは続ける。「迫害をした人間が一番悪いという事になって、神様は人間だ

け、悪魔や天使が実在する事を忘れさせました」「だから、僕ら人間は何も知ら

ないわけか…」まぁでも、悪魔や天使は人間からしたら架空の生物として生きて

いる事にはなっている。本当に全てを忘れていたら、架空の生物としても悪魔や

天使はいない事になるだろうね。「難しいなぁ…」自分で考えて、頭が混乱して

しまった…。「そういうわけなんですよー」「分かりやすく長々とありがとうね

。でもさ、悪魔は人間を恨んでないの?」「すっごく昔の話ですからね、ほとん

どの悪魔は人間を恨んでなんかいませんよ」「ほとんどって事は、いる事にはい

るんだね」人間として、申し訳ない気持ちになった。「しょうがないですよー。

過去ばかり見てたって、良い事なんてないと私は思いますけどね…人それぞれで

すし」「うーん…確かに、過ぎた事はしょうがないのかな」人間の僕が言うと、開き直ってるみたい

で嫌だなぁ…。「あれ?なんの話してたんだっけ?」最初に比べると、結構違う

方に話がいった様な…。「悪魔と人間の違い、ですよー」「そうだったそうだっ

た。決定的な違いがないんじゃ、分からないよねぇ…」「ですねー…それにして

も、いきなりどうしたんですか?そんな事聞いて」「んー…」正直に言おうか?

でもしょせんは夢の事なんだよなぁ…。「ライアちゃん、僕は悪魔に見える?」

「え?十夜は悪魔だったんですか?」この答えを聞けば、十分だ。「いや、人間

だよ」僕は何を悩んでたんだかなぁ…。「むー…十夜が何をしたいのか、さっぱ

りですよー!」「はは、気にしないで」なんか、心の靄が晴れた気分だ。「もー

…十夜が人間でも悪魔でも、十夜は十夜だよ?」「うん…ありがとう」「私にと

って、大切な…人」ライアちゃんは、顔を赤くして言う。なんか、すっごくうれ

しい。「ライアちゃんも、僕にしたら大切な人だよ」悪魔でも人間でも、僕は僕

、彼女は彼女、何も変わりはしない。

「さて、難しい事言ってたら、お腹減ったなぁ…ご飯にしよっか?」「はーい…

ね、十夜」ちゅっ、と頬にキスをされる。「えへへー」とライアちゃんは笑って

いる。もちろん顔は、赤い。「いきなり、だね」僕も、ちゅっ、と頬にキスを返

す。「バカップルみたいだねー」「ほんとだねぇ…」僕らは笑いながら、部屋を

出てキッチンに行った。

いつも通り、おかずをレンジでチンしてご飯を食べる。そして後片付けも手早く

済ませて、部屋に戻る。

「さて、午後は何しようか?」言いながら僕は自分の布団の上に座る。ライアち

ゃんももちろん僕の隣に座る。時間は1時、太陽はまだまだ沈まない。「んー…ど

うしましょーか」「ゲームをするか、昼寝するか…どこかに出かけるってのもあ

りかな?」ライアちゃんと話しているだけでも、僕的には結構な時間潰しにはな

るんだけどね。「出かけるとしたら、どこに行くんですかー?」「そうだなぁ…

」遊園地は行ったし…プールはもうちょい早い時間の方がいいし…。「うーん…

映画とかカラオケとか?」「むー…私歌はうまいですよー」「お、じゃあカラオ

ケ行こうか?」正直僕は歌うの苦手だけど、ライアちゃんが行きたいって言うな

ら、かまわないか。「行きましょー」「あい、じゃあ準備するね」僕は外着に着

替えて、引きだしの中からお金を取り出す。ちなみに、ライアちゃんは僕が着替

えてるのをのんびりと眺めていた。少し恥ずかしかった。

「あつー…」外に一歩出るだけで、太陽はサンサンと僕らを照り付ける。「夏だ

からしょうがないですよー」「まぁね」戸締まりをしっかりとして、自転車にま

たがる。ライアちゃんを後ろに乗せて、いざカラオケ屋に!


自転車で10分程の駅前にあるカラオケ屋に着いた。この10分の間に、僕は何回暑

いって言ったんだろうなぁ…。自転車を駐車場に置いて、ライアちゃんと中に入

る。中は冷房がかかっていて、涼しい。フロントで早々と受付を済ませて、僕ら

は部屋に移動する。「ライアちゃんって、どんな歌を歌うの?」個室も冷房がか

かっていて、なかなか涼しい。「私はですねー、なんでも歌えますよ」「なんで

も…?」僕の頭の中には、演歌を歌っているライアちゃんが出て来た。はっきり

言って、似合ってなかった…。「十夜は、どんなのを歌うんですかー?」「僕は

…」そう言えば、僕も一貫性がないなぁ。「まぁ、いろいろ歌えるよ。高いのは

無理だけどね。それよりも、歌わないと時間がもったいないよ」カラオケ屋に来

てまで、雑談してるのもねぇ…。「じゃあ私からー」ライアちゃんは本から番号

を見つけて、リモコンでそれをいれる。「いきますよー!」マイクを握って、い

すに立ちながら歌うライアちゃん。なんていうか、すっごく楽しそうだなぁ。彼

女が最初にいれたのはさ○らんぼ、まぁ出だしとしては普通かな?

ライアちゃんが歌い終わる。「いやぁ…びっくりした、まさかこんなにうまいと

はなぁ」「久しぶりなので、まだまだ上げていきますよー!」ハイテンションな

ライアちゃん。彼女の新しい一面が見れて、僕としてもうれしいもんだ。「次は

十夜ですよー」「僕の最初は、これなんだよね」ガ○ガSPの○業を、叫ぶのが僕

の始まりだ。マイク片手に叫ぶのはちょっと恥ずかしいけど、かなり気持ちいい

歌い終わる頃には、少し喉が痛かった。「十夜…そんなにおっきい声出るんです

ね…」ライアちゃんは、少しびっくりしている様だ。「普段は結構、抑えて話し

てるからね」僕の声は素で大きい、だからいつもはかなり抑えてしゃべってる。

だけど、カラオケ屋なら誰にも迷惑かからないから、ね。「でも、大きいだけじ

ゃなくてうまかったですよー」「ありがと、どんどん行こうかー」僕らは変わり

ばんこに歌い続ける。

歌い始めてから2時間、さすがに僕は喉がかすれてきた。だけどライアちゃんは、

まだまだ元気だった。「ライアちゃん、すごいねぇ」変わりばんことは言え、休

みなしで歌い続けるのはかなりきついはずなんだけど…。「歌うの好きですから

」「なるほどね、僕は少し休憩かな」

それから30分程ライアちゃんが一人で歌い続けて、最後の30分は二人で一緒に歌

った。デュエット曲じゃないけど、一緒にマイクを持って歌うのは、かなり楽し

かった。

「さすがに疲れたー…帰ろうか」大体3時間、まぁ二人ならこんなもんだろ。「で

すねー、私はまだまだ歌えますけど」「ほんと、すごいなぁ」歌もうまいし、ラ

イアちゃんが歌手になったらなんか良いよなぁ。「行こうか」名残惜しそうなラ

イアちゃんを連れて、部屋を出る。フロントでお金を払って、外に出る。


「んー、すっきりしましたよー」ライアちゃんは大きく伸びをする。「また来よ

うね、僕もまだ歌ってない歌あるし」これでも、レパートリーは広い方なんだ。

えっ?歌うの苦手なんじゃないかって?苦手だけど、嫌いじゃないからね、たま

にはいいさ。「帰ろうか」「はーい」僕は自転車にまたがり、ライアちゃんを後

ろに乗せる。「そうだ、シュークリーム買って帰ろうか?」駅前に、おいしい菓

子屋があるんだよね。「えっ!?いいんですかー!」後ろから、すっごく嬉しそ

うな声が聞こえて来る。「駅前に店があるからね、ライアちゃん大好きでしょ?

」「はい!十夜ありがとー」僕の腰につかまりながら、ライアちゃんは背中に顔

をすりつけてくる。「恥ずかしいって…」いやまぁ…嬉しいんだけどね。自転車

こいでるから少し危ないんだけどなぁ…。

まぁそんなわけで、僕らはシュークリームを買って、ついでにご飯も食べて家に

帰った。

部屋に戻り、布団の上に座る。もちろん、ライアちゃんも横に座る。「疲れたー

…」久しぶりに叫んだから、結構体力を消耗したなぁ。「シュークリーム、食べ

てもいいですかー?」布団の上で、箱を開けるライアちゃん。止めても食べるん

だろうなぁ…。「いいよ、でも布団を汚さない様にね」さすがに、シュークリー

ムこぼしたら洒落にならないからね。ライアちゃんは幸せそうに、シュークリー

ムを食べている。「それにしても…ライアちゃんよく食べるねぇ」体は小さいの

に、僕の二倍は食べてるんじゃないかな?「そんな事ないですよー、十夜が食べ

なさ過ぎなんですよ」「まぁ、確かに僕は少食だからね」マ○クのハンバーガー

二個でお腹いっぱいになるぐらいだからね。「そんなんじゃ、大きくなれません

よー」「それは…」ライアちゃんが言えるかなぁ、とか口に出しそうになったけ

ど、なんとかこらえる。こらえたところで、ライアちゃんは鋭いから僕が何を言

いたいのか分かるのだろう。「むー…その内大きくなりますよー」と言いながら

、シュークリームを頬張っている。

「さてー、お風呂いってきますね」シュークリームを食べ終えて、ライアちゃん

は立ち上がる。「いってらっしゃい」バスタオルを持って、部屋を出て行くライ

アちゃんを見送る。「僕もたまには入らないとなぁ…」三日ぐらい入ってないの

かな?まぁ死にはしないからなぁ。

本を読んでライアちゃんを待っていると、部屋に母さんがやって来た。最近は、

母さんからドアを開けて入って来る。「おかえり、今日は結構早いね」時間はま

だ6時だ。「ただいま。時間に不規則な仕事だからね、私も大変なのよ」「そうい

えば母さん、なんの仕事してるの?」「秘密よ」「そうかい…」まぁ、なんでも

いいんだけどね。「そうだ、あのさ…変な事聞くけど」「どうしたの?」「父さ

んって、人間だよね?」「え?」僕は、一瞬だけ母さんの顔が変わったのを見逃

さなかった。「どうしたの?いきなりそんな事を言って」だけど、すぐに普通の

顔に戻った。「少し気になっただけさ」「変な事言わないでちょうだい、あの人

は人間よ」人間、という部分が少しだけ強調されてる様に聞こえた。「そっか、

変な事聞いてごめんね」母さん、何か隠してるな…。「全く…それじゃ私は行く

わね」「うん、おやすみ、でいいのかな?」「おやすみなさい…」ドアが閉めら

れて、僕は部屋に一人残される。「父さんが悪魔…か」夢とは言え、妙に気にな

るし、何より母さんのあの態度も気になる。「確かに、思い当たる節があるんだ

よなぁ」病気

の治りも早いし、切った傷の治りも早い。まぁ、今更僕が悪魔でも困る事なんて

ないか。「それでも…僕は僕なんだから」

「さっぱりしましたよー」とライアちゃんが部屋に戻って来た。「おかえり、散

歩行く?」「んー…今日はやめません?」「やめよっか、僕もなんか行く気出な

いし」カラオケで歌いまくって、体力を消耗したのが原因だろうなぁ…。「もう

寝ちゃいます?」ライアちゃんが僕の隣で横になる。「かなり早いねぇ…」まだ7

時にすらなってない。でも疲れたし、ご飯も食べたから、結構眠かったりする。

「まぁ、寝ちゃおうか」電気を消して、僕も横になる。隣で横になっているライ

アちゃんから、お風呂あがりの良いにおいがした。「ライアちゃん」「はい?」

同じ布団の中で、僕はライアちゃんに聞く。「もし僕が悪魔だったら、どう思う

?」「むー…?今朝も言いましたよー、十夜は十夜ですよ、私の大切な人です」

「そっか…ありがとね」僕はライアちゃんを抱き寄せる。「十夜…」「ライアち

ゃん、おやすみ」「おやすみなさい」ライアちゃんを抱き締めたまま、僕は眠り

につく。今だにキスまでなんて…僕らも進展しないなぁ…。

今日も一日が終わる。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ