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悪魔来  作者: 銀翠
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その1〜来襲〜

十夜(とうや)、仕事に行ってくるからね。冷蔵庫にご飯あるからチンして食べてね」ドアの向こう側から、母の声がする。「さっさと行けよ…」僕は小さく呟く。

僕の家は母子家庭で、母が仕事に出ている。父は僕が10歳の時に死んでしまった。片親しかいなくても、人間は育つもんだけど、まともに育つとは思わない。実際、僕は15歳にして引きこもり学生だ。高校に入ってから、まぁいろいろあって、一ヶ月ほど通ってそれから行ってない。もう三ヶ月ぐらいは学校に行ってない。僕は学校やめてもいいんだけど、母がそれだけは許さなかった。引きこもりの事には、特には口出ししないくせにね。

「さて、何すっかな」やる事なんて、パソコンかゲーム、たまに読書するぐらいしかない。てきとーにパソコンをいじって、時間をつぶす。


「さて、と」時計を見ると、もう深夜12時。母はまだ帰ってきていない。「また泊まりかよ、やれやれ…」仕事人間なのはご苦労なことだけど、少しは…。まぁいいか。

部屋を出てキッチンに行きご飯を食べる。食べ終わる頃には、時間は12時半。僕は玄関で靴をはき、外へ出る。もちろん戸締りはオーケーだ。

僕が住んでいるのは田舎のほうなので、夜は人が全くいなく、散歩するにはうってつけだ。時期は夏、人はいなくても虫たちはうるさく鳴いている。夜空には星がいくつも輝いている。そんな中を、散歩するのは僕の一番の楽しみだ。別に引きこもってるのが好きなわけじゃない、人間が嫌いなだけだ。

歩いていると、道路脇の草むらに、何か光っているものを見つけた。「なんだ?」僕はそれを手に取る。「卵…かな?」手のひら大ぐらいの卵で、微かに光っている。「でかいなぁ…なんの卵だろう」僕はそれを持って家に帰った。母はやっぱり、いない。

自分の部屋に行き、拾った卵を机の上に起き、まじまじと見る。「ダチョウの卵かな?さすがにそんなわけないか」なんの模様もなく、白くてただでかい卵。何が生まれるか気になった僕は、それをタオルでくるんで暖める。

30分ぐらいだったが、卵は何の変化もなかった。ただ、淡い光を放っているだけだ。

「んー、寝るか」気になるが、時間はもう2時をまわっている。いつもは散歩の後すぐ寝ているので、眠い。「明日でいいや」タオルで二重にくるみ、僕は電気を消した。少しだけタオルから光が漏れていた。


「あー…」起きると朝になっていた。まぁ当たり前だ。たまに昼になってるのはしょうがないことだけど。時間は9時、今日も一日暇だろう。

「ああ、そういや」卵のことをすっかり忘れてた。机の上にある卵をくるんでるタオルをとると、小さくひびが入っていた。「お、生まれるかな?」10分ほど様子を見る、でも変化はない。「飯だな」僕は卵をタオルでくるみ、ご飯を食べにキッチンに行く。

冷蔵庫に入ってる昨日の残りをチンして食べる、まずい…。

部屋に戻り、卵の様子を見る。ひびが少しだけ大きくなっていた。「少しずつか…これなら後2時間ぐらいかな」またタオルでくるみ、ゲームをやる。

大体30分置きぐらいに、一回確認。少しずつひびが大きくなる。2時間ほどたった辺りで、もう割れそうだった。「さーて、何が出てくるかな」ゲームはもう消し、卵に見入る。ドキドキしながら、少しずつ動く卵を見つめる。

「うわっ!」いきなり強い光が僕を襲う。視界は真っ白で、何も見えない。真っ白な部屋で僕は混乱した。

「一体何が…」光がひくと、部屋に女の子が立っていた。身長が80センチぐらいの小さい女の子だ。黒のシャツと黒のスカートを着ている。髪に毛も黒で、肩につかないぐらいの長さ。顔はおっとりしてそうだけど、かわいい系だ…って冷静に分析してる場合ではない。

「き、君は?」なんとかそう搾り出す。女の子はこちらを見て言う。「あなたは誰ですか?」いやむしろお前が誰だよ…。混乱の中、机の上にあった卵がない事に気づく。まさか…!?

女の子はもう一度口を開く。「あなたは誰ですか?」「えーっと…僕は霧崎十夜(きりさきとうや)、君は?」こちらが名乗らないときりがなさそうなので、とりあえず名乗る。

「で、君は?」「私は…なんでしたっけ?」「いや、僕に聞かれてもなぁ…」なんなんだろうかこの子は…。女の子は頭に右手をあてて考える。そしてポンと手を打つ。「そうでした、私は悪魔のライア、よろしくお願いします」そう言って頭をペコリと下げる。悪魔?この子は何を言っているんだ。「悪魔だって?まぁよろしく」頭を下げられたので下げ返す僕。変なとこで律儀だと自分で思う。

「はい、悪魔です。だからあなたには死んでもらわないといけません」「はっ?」いきなり何を言うかこの子は…。いきなりは今更だろと思うけどね。「迷わず死んでくださいね」女の子は背中から小さい鉛筆っぽい物を取り出す。「ああ!?これじゃない、間違えましたー」そう言いながら、背中から色々なものを取り出しては、色々なものをしまってゆく。鉛筆やら消しゴムやらノートやら、下敷きまで!?…どうやって収納してるんだろうなぁ…。

5分ぐらいたってから、ようやくお目当ての物が見つかったらしい。それは小さい鎌だった。「やっと見つかりました…。あ、いつもはもっと整頓してあるんですよ!本当ですよ!」必死に言い訳をする女の子。そんな女の子を見て思った。なんだろうか…ちょっと可愛いな。

女の子は鎌を振り上げる。「じゃあさっそく死んでくださいね」笑顔で言う。「えっ?ちょっと待っ…」「だめですよ」女の子は鎌を振り下ろす。「うっひゃぁ!」なんとか避ける。「避けちゃだめですよー」おいおいおいおい冗談じゃねぇ。「避けなきゃ死ぬって!」女の子は鎌をもう一度振り上げる。「待った待った!殺す理由は?」お、今度は止まってくれた。振り上げたまま、「なんでしたっけ?」ええい、この天然娘め!「あれー?理由…理由…」鎌を下ろし、左手に持ち替えて頭に右手を当てて考えている女の子から、すかさず鎌を奪い取る。「あっ、何を」「何をじゃない!殺されてたまるか!」僕は鎌を振り上げる。女の子はそれを普通に見ていた。

だけど、僕はその鎌を振り下ろせなかった。悪魔とは言うけれど、外見は小さい女の子、しかもかわいい。僕には殺すことができなかった。女の子は振り上げて止まっている僕を、不思議そうに見る。「やらないんですか?」「馬鹿言うな、人なんか…殺せない」僕は振り上げた鎌を下ろす。「悪魔なんですけどね。死ぬのもやだ、殺すのもやだ、じゃあ私にどうしろって言うんですか!?」そりゃこっちのセリフじゃー!!

「というかなんで君がキレる!?」もう訳わかめとか、本当に訳が分からないことを言いたくなる。「だってー、殺さないと…えーん」なぜか泣き始める女の子。もう何が何やら…しかし喜怒哀楽の激しい子だなぁ。「わーわー!分かったから泣くな!」正直女の子の涙は苦手なんだ…。「だってー、ぐすっ」なんとか泣き止む。「で、理由があるんだろ?泣かなきゃいけないような理由がさ」僕は少しずつ落ち着いてきた。女の子の面白い性格のせいもあるし、引きこもりの僕なんて死んだほうがいいな、とか思ってきたからだ。

女の子は口を開く。「理由はですね。あなたを殺さないと私魔界に帰れないし、卒業もできないんです」魔界?卒業?「何それ?」「だからですね、私は悪魔の落ちこぼれなんです。だから卒業するために学校から課題を出されたんですよ」「その課題が僕を殺すって事?」落ちこぼれか、僕も似たようなもんだしな。「卵を拾って孵化させた人を殺すので、たまたまあなたになっただけですね。卵でたまたま、なんてあはは」ああ、なんかすごく笑顔だ。つまんないよ、とか言えない…。だから軽く笑っといた。「たまたまね、あはは」誰かこの子をなんとかしてくれ…。

「だから、鎌を返してくださいー」僕はとっさに、鎌を持った腕を上にあげる。女の子はピョンピョンと、ジャンプする。が、全く届かない。「うー…泣いちゃいますよ?」「まぁまぁ、ちょっと落ち着いて…じゃあこうしよう」女の子は首をかしげる。「覚悟を決める時間をくれよ」まぁ実際死んでもいいやとか思ってたんだけど、やっぱり怖いものは怖い。時間あければ女の子の考えも変わるかもしれないし、僕も決心がつくかもしれない。どちらかの気持ちが変われば、ハッピーエンドだろう。「殺さないといけない期間みたいなのないの?何日まで、とかさ」女の子は右手を頭に当てて考える。今気づいたけど、この子考えるとき頭に右手あてる癖があるんだな。

女の子はそうでした、と口を開く。「二ヶ月以内ならいいんですよー」「なるほどねぇ…」魔界とやらの時間の流れについて考えた。なんだかなー…。

「じゃあ、二ヶ月以内に覚悟を決めてくださいね」女の子は笑顔で言う。「まぁ、それでも嫌だったら逃げるけどね」「逃げちゃダメですよー」まぁなんだかんだで、この場は丸く治めれたかな?「まぁいいや、はいこれ」僕は女の子に鎌を返す。「ありがとうです」その鎌を背中にしまう。「それ、どうやって入ってるの?」僕は純粋な疑問をぶつける。女の子は首をかしげ、「どうやって入ってるんでしょうね?」と言う。ああ、天然娘は強いよ父さん…。なんとなく死んだ父に話しかける。全然意味はないんだけどね。

「じゃあどうなってるのか見せてよ」僕は興味津々に聞く。「だめですよ!恥ずかしいー」顔を赤くして否定する女の子。はぁ…もういいや。

女の子は気を取り直し、言う。「じゃあそれまでの間、よろしくお願いしますね」「まさか、泊まるの?」女の子はうなずく。「はい、逃げられたら困りますから」そんな屈託のない笑顔で言われてもなぁ…。「まぁいいかな、よろしくライアちゃん」「はい!」


なんか分からないけど、悪魔が一人(?)僕の家に住み着いた。少しは暇が減りそうで、いいかもしれない。別に死んだってかまいやしない人生なのだから…。

なんというか、書き始めた時に比べると大分考えてた内容と違う感じになりました。この先どうなるのか、作者にも予想つきません。

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