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読まれるエンタメ物語の構成テンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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9/12

ダン・ハーモンのストーリーサークル(8つのステップ)

やあ(´・ω・`)


ようこそ、円環の構成「ダン・ハーモンのストーリーサークル」へ。


今回のタイトルを見たとき、君はこう思っているかもしれない。


「8つのステップ? それって三幕八場とどう違うの?」


もっともな疑問だ。


前回、俺たちは三幕八場という最強のカーナビを手に入れた。あれは「どこで何を起こすか」というイベント配置の地図だった。だが、地図だけじゃ物語は動かない。なぜなら、そこを歩く人間キャラクターがいないからだ。


「イベントは起きているのに、なぜか主人公に共感できない」

「話は進んでいるのに、なんか薄っぺらい」


そんな悩みを解決するための物語構成が「ストーリーサークル」だ。これをマスターすれば、君のキャラクターはただの駒から、血の通った人間へと進化するだろう。


ということで今回はこの円環構成を解説していこう。


◆ ◇ ◇ ◇


1.ストーリーサークルとは何か?


この理論の提唱者は、ダン・ハーモン(Dan Harmon)。彼はアメリカのテレビ脚本家で、カルト的な人気を誇るコメディ『Community』の制作者兼プロデューサであり、SFアニメ『リック・アンド・モーティ』の共同制作者だ。


どちらの作品も1話あたり約20〜25分の尺で、基本は1話完結型として成立する構成を取っている。しかも何シーズンも続く長寿シリーズだ。


とはいえ、短い尺の中で毎回きちんとストーリーのある面白い話を作り続けるのは簡単ではない。


そこでダン・ハーモンはジョーゼフ・キャンベルの「英雄の旅(ヒーローズジャーニー)」をシンプルにし、短編エピソードでも使える新しい物語の型をまとめ上げた。コンセプトは「誰でも破綻しない話を組めるように」だ。


ストーリーサークルの概念図を説明しよう。


円を描いて、12時の位置から時計回りに8つのポイントを打つ。上半分は「秩序(いつもの世界)」、下半分は「混沌(特別な世界)」。主人公はこの円を一周して、原則として元の場所(上)に戻ってくる。とてもシンプルだ。


この構造の最大の特徴は、「行って、帰ってくる」という動きに特化している点だ。三幕構成が直線的(解決へ向かう)なのに対し、ストーリーサークルは循環的(変化して戻る)だ。



だから、連続ドラマや日常アニメ、連載小説の1話完結エピソードや章ごとの構成にめちゃくちゃ強い。『リック・アンド・モーティ』を見ればわかるが、彼らは毎回とんでもない異次元(下半分)に行き、ひどい目に遭い(代償)、家に戻ってくる(上半分)。でも、何かが少しだけ変わっている。このリズムこそが、読者を中毒にするんだ。


もしもWeb小説で無限連載を行いたい人や、コメディやギャグ、人間ドラマの一話完結型作品を書きたい人には、これは必修レベルの構成だ。


◆ ◆ ◇ ◇


2.ストーリーサークルの8つのステップ


では、具体的な8つのステップを見ていこう。英語の原文が非常にシンプルで強力なので、それも併記する。


■上半分:日常パート(秩序)


【1.You(主人公)】

「主人公」は快適圏コンフォートゾーンにいる。いつもの日常だ。まだ何も起きていない。だが、何かが足りない。

例:主人公がその辺を散歩している。


【2.Need(欲求)】

主人公は何かを「欲する」。現状の不満を解消するため、あるいは何かを手に入れるために、動機が生まれる。これがないと物語は始まらない。

例:機嫌の悪いガキ大将にいじめられた。仕返しする道具が欲しい!


■下半分:非日常パート(混沌)


【3.Go(越境)】

主人公は快適圏を出て、未知の世界へ「行く」。ここからが物語の本番(下半分・混沌の世界)だ。後戻りできない一線を越える。

例:便利なロボットから道具を貸してもらい、外の世界へ飛び出す


【4.Search/Struggle(探索・適応)】

主人公は目的のために「探す」。新しいルールに適応し、試行錯誤する。

例:道具を使ってイタズラしたり、調子に乗ったりする


【5.Find(発見)】

主人公は欲しかったものを「見つける」。目的の達成だ。だが、ここが重要だ。ただ見つけるだけじゃない。そのあとに何かしらの反応がある。

例:ガキ大将を倒した! スッキリした!


【6.Take(代償)】

主人公は欲しいものを「手に入れる」が、同時に「代償を払う」。ここがハーモンの真骨頂だ。タダでは終わらせない。欲しいものを得た結果、大きなしっぺ返しを食らう。あるいは、本当に大切なものを失う。なお代償は主人公だけではなく周囲への影響でもOKだ。

例:調子に乗りすぎて道具が暴走し、自分もひどい目に遭う。


■上半分:日常パート(秩序)


【7.Return(帰還)】

主人公は元の世界へ「戻る」。混沌から秩序へ。命からがら逃げ帰ることもあれば、勝利の凱旋もある。

例:ボロボロになって家に帰ってくる


【8.Change(変化)】

主人公は「変わっている」。元の場所(You)に戻ったが、冒険の前と同じではない。少しだけ成長したか、あるいは新たな傷を負ったか。

例:もうあんな道具はこりごりだと反省する。……まあ、日常系なら次回また忘れるんだけどな



どうだ? シンプルだろう?You->Need->Go->Search->Find->Take->Return->Change。このリズムが、物語に呼吸を与えるんだ。


ここでのキモは、「Find」と「Take」がセットであること。欲しいものを得たら、支払いが発生する。支払いがあるから物語が軽い願望充足(ただの夢)で終わらない。さらに「Return」と「Change」がセットだ。帰ってきたのに、同じ人間ではいられない。この戻るけど変わるが、サークルの心臓部だ。


メリットとデメリットも挙げておく。


■メリット

・短い尺でも破綻しにくい(1話完結、短編、エピソードに強い)

・主人公の行動原理(Need)と代償(Take)が強制的に入るので、ドラマが立ちやすい

・「戻る/変わる」があるので、成長・学習・後悔・執着など内面の線を描きやすい


■デメリット

外的事件きっかけが弱い話だと、Go以降を無理やり作って不自然になりがち

・「Need=欲しい物」と浅く捉えると、Find→Takeが薄味になり、話が軽くなる

・群像劇や視点が頻繁に切り替わる作品では、誰のサークルなのかが曖昧になりやすい



三幕八場と同じ8ステップだが、三幕八場とは見ているものが主に違う。


■三幕八場:

これはプロット(出来事)の地図だ。

「ここで事件が起きる」「ここで敵が強くなる」という、主にイベント配置を管理する。主役はストーリーの進行だ。


■ストーリーサークル:

これはキャラクターのコンパスだ。

「主人公が欲しがる」「主人公が痛みを払う」「主人公が変わる」という、主人公の動きを管理する。主役は主人公の変化だ。


だから、この2つは喧嘩しない。むしろ、重ねて使うと最強になる。三幕八場でイベントを配置し、ストーリーサークルで主人公の感情を流し込む。そうすれば、展開は面白いのに、キャラも深いという奇跡が起きる。


◆ ◆ ◆ ◇


3.Web小説での使い方


Web小説でストーリーサークルを使う最大のメリットは、「1話完結」や「章ごとのまとまり」を作りやすいことだ。


Web小説は、ダラダラと続きがちだ。「主人公がずっとダンジョンにいて、日常に戻らない」「ずっと俺TUEEEしていて、代償(Take)を払わない」みたいな感じで続くことがよくある。


それでも面白いのだが、これだと、読者は変化を感じられない。そのうち、ただの作業日誌になる。最初の方はいいが、何度も続くと飽きてくる。だって何も変化しないのだから。そのうち読者が離れていくだろう。最初は面白くてもだんだん飽きてきていつの間にか読まなくなった小説はないか? 


キャラクターを魅せるためならいいが、最初の方でキャラクターを確立していない場合はなおさら離脱は早い。だから、早めにキャラクターを深めるため意識的に小さな円を描くんだ。


おすすめ運用としては1エピソード(数話)を1サークルにすることだ。例えばダンジョン攻略編にこのサークルを適用してみると。


・You:街でのんびりしている。

・Need:レア素材が欲しい(金欠)。

・Go:ダンジョンへ入る。

・Search:魔物と戦い、奥へ進む。

・Find:レア素材ゲット!

・Take:……と思ったらボスに見つかり、装備が壊れる(代償)。

・Return:命からがら街へ逃げ帰る。

・Change:金は手に入ったが、装備の修理代で消えた。「世の中甘くないな」と学ぶ。


どうだ? たったこれだけで、ただの攻略回がドラマになっただろう?特に「6.Take(代償)」を入れるだけで、物語が一気に締まる。次の回で装備を一新するきっかけにもなる。


Web小説の読者は同じ展開の連続には飽きるが、理不尽すぎない代償にはリアリティを感じて喜ぶんだ。特にコメディやギャグ寄りのスローライフをしている場合は、一度試してみてくれ。


また、面白くないと感じた場合はこのサークルから判断することができる。


■失敗例A:Needが弱い(主人公が動かない)

→「欲しい」が曖昧だと、GoもSearchも薄くなって、読者が何を見せられてるか分からなくなる。主人公の行動原理が謎でストーリーが破綻しがち。


■失敗例B:Returnしない(状況が変わりっぱなし)

→更新のたびに舞台が崩れて、読者が追えなくなる。Returnは読者の再入場の足場だ。情報を整理するためにも日常へ戻る工夫が必要になる。


逆に成功例は、めちゃくちゃ単純だ。「欲しい(Need)→取りに行く(Go)→代償(Take)→変化(Change)」これが毎回どこかに入っている話は、読者が離れにくい。


◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


ダン・ハーモンのストーリーサークルは、主人公を導くためのコンパスだ。


主人公(You)を快適な場所から引き剥がし(Go)、欲望を追いかけさせ(Need)、代償を支払わせ(Take)、別の人間にして戻す(Change)。


三幕八場が迷わないための地図なら、ストーリーサークルは主人公が進むためのコンパスだ。


もしも君が永遠に続く物語を書きたいと思っているのなら、この構成はきっと役に立つだろう。


君の次のエピソード(あるいは企画中の章)について、これだけ埋めてくれ。


You:いま主人公はどんな平常にいる?

Need:今回「欲しい」ものは何?(物でも感情でもOK)

Take:それを得る代償は何?(ここが一番大事だぞ!)

Change:最後に何が少し変わる?


この4点が決まれば、あとの4つは勝手に埋まる。


今回は以上だ。解散!

【参考】

Story Structure 101: Super Basic Shit

https://channel101.fandom.com/wiki/Story_Structure_101:_Super_Basic_Shit

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