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読まれるエンタメ物語の構成テンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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起承転結

やあ(´・ω・`)


ようこそ、東洋の神秘にして無限の構成「起承転結」へ。


この言葉を聞いた瞬間、君はきっとこう思ったはずだ。


「そんなの知ってるよ。国語の授業でやったし」「起きて、承って、転んで、結ばれるやつだろ?」


まあ待て。ブラウザバックするのはまだ早い。日本の創作論では、この「起承転結」があまりにも雑に扱われすぎている。たいていの創作本では「4部構成の日本版」とか「4分割した三幕構成」なんて説明されているが、はっきり言おう。それは大間違いだ。


三幕構成と起承転結は、似ているようで根本的に思想が違う。


ざっくり言えばこうだ。三幕構成は、狩猟民族の武器だ。獲物(目的)を見つけ、邪魔者(葛藤)を倒し、肉(解決)を得る。これが基本思想だ。だから「対立・葛藤(Conflict)」がないと成立しない。敵がいなきゃ始まらないんだ。


対して起承転結は、農耕民族の知恵だ。種をまき(起)、育て(承)、季節が変わり(転)、収穫する(結)。そこに「誰かと戦う」必要はない。


つまり、起承転結には対立・葛藤がなくてもいい。敵がいなくてもいい。世界を救わなくてもいい。ただ、そこに「ちょっとした変化」があればいい。


この違いがわかれば、君の武器庫に新たな最強ツールが加わる。特に日常系や短編、そして1話ごとの構成において、起承転結は三幕構成を凌駕する切れ味を発揮する。


今回は、この誤解されがちな「起承転結」を、Web小説という戦場で使える形にアップデートして渡そう。


◆ ◇ ◇ ◇


1.起承転結とは何か?


もともと起承転結は、漢詩(絶句)の構成法だ。詩を美しく、効果的に読ませるためのリズムであり、物語の構造というよりは「情報の提示手順」だと思った方がいい。


本来の意味合いはこうだ。


・起:歴史や人事を題材とし、比喩や連想から詠み始める。(導入)

・承:穏健に作る。突飛なことや平板すぎることを避ける。(展開)

・転:読み手を驚かす変化を入れる。承と表裏一体でありながら、視点を変える。(転換)

・結:余韻を残してフェードアウトする。(収束)


これが漢詩以外に転用され、文章の構成や物語の構成として使われるようになった。それぞれの役割を、物語の出来事としてではなく、読者の理解として翻訳するとこうなる。


■起:

状況の提示。読者に「これから何の話をするのか」をわからせる。

(例)春の日に、男が川辺を歩いている。


■承:

状況の展開。情報を足し、関係を深める。まだ大きな変化は起きない。

(例)男は桜を見上げ、昔の恋人を思い出す。風が吹く。


■転:

転換。意味が変わる。見え方が変わる。前提が崩れる。ここが一番大事だ。派手なアクションじゃなくていい。「視点」や「意味」が変わればいい。

(例)ふと足元を見ると、そこには恋人が好きだった花が咲いていた。(ただの散歩が、追憶の旅に変わる)


■結:

収束。転で生まれたズレを回収し、読後感(余韻)を作る。

(例)男は花を一輪折り、川に流す。そして歩き出す。



見ての通り、ここには「魔王」も「ライバル」も「悪役」もいない。三幕構成なら「いじめられっ子が(問題)→川辺でいじめっ子に絡まれる(対立)→反撃して追い返す(解決)」のように、葛藤のための悪役が必要だが、起承転結にはいらない。


もし三幕構成を強引に起承転結で表すとしたら、「起→承→転(PP1)→承→転(MP)→承→転(PP2)→結」みたいに、何度も転ばなきゃいけない。忙しい話だ。それに比べて本来の起承転結は、一回転ぶだけでいい。スマートだろ?


これが起承転結の最大のメリットだ。日常系、ほのぼの、ギャグ、あるいはエッセイ。「問題を解決しない物語」を書きたいなら、三幕構成(問題解決型)は捨てろ。起承転結を使え。無理に葛藤を入れると、せっかくのほのぼのスローライフが血生臭くなるぞ。


◆ ◆ ◇ ◇


2.配分リズムの話


三幕構成(1:2:1)と違って、起承転結の比率に絶対の正解はない。だが、尺(長さ)によって美味しい比率は変わる。


■短い物語(4コマ漫画、掌編):

1:1:1:1(25%ずつ)テンポよくポンポンポンと進む。オチ(転・結)の切れ味が命だ。


■長くなるにつれて(短編~長編):

物語が長くなると、「承(展開)」が肥大化する。当然だ。いきなり転んでも読者はついてこない。じっくりと状況を積み上げる時間が必要になるからだ。


イメージとしてはこうだ。起→承→承→承→承→転→結のように、物語の配分によって承のブロックが増えていく。


目安としてはこんな感じだ。


・短編:起(25):承(40):転(20):結(15)

・中編:起(20):承(55):転(15):結(10)

・長編:起(15):承(70):転(10):結(5)


『シナリオ・センター式物語のつくり方』の新井一樹氏は、「起10%、承80%、転結10%」とさえ言っている。つまり、物語のほとんどは「承」だ。「起」でサッと状況を見せ、「承」でたっぷりと楽しみ、「転」でハッとさせ、「結」で余韻を残す。これが黄金比だ。


ただし、例外もある。まれに「転」がありまくりの物語(ギャグに多い)もある。起承転転転転転転……結みたいな構造だ。まさに『ボボボーボ・ボーボボ』がそれである。あれを使いこなすことができるなら、君は天才として歴史に名を残すだろう(ただし読者は選別される)。


また、長編小説において無限連載をする際に、1話単位で起承転結を適用する場合はもっと極端になることもある。起(5):承(80):転(10):結(5)。これは前話で次に何をするかを説明しているため、「起」は一瞬でいい。「はい、ダンジョン入りましたー」で済むからだ。


とにかく配分については自由だ。「承」でしっかり読ませて、「転」で裏切る。これだけ覚えておけばいい。


◆ ◆ ◆ ◇


3.起承転結の使い方


起承転結を使いこなすコツは一つだけだ。「転」で何を変えるか、最初に決めろ。


多くの初心者が、「転」をどんでん返し(サプライズ)だと思って、無理やり隕石を落としたり、夢オチにしたりする。やめろ。それは事故だ。


起承転結の「転」は、「意味の変化(Recontextualization)」でいい。出来事の派手さより、情報の質を変えるんだ。


使える「転」のパターンを4つ授けよう。


■A.情報の転:

新事実が出て、それまでの意味が変わる。

・(起)あの子はいつも放課後に残っている。

・(承)勉強熱心だなあ。

・(転)実は黒板で落書きをしていた。

・(結)彼女の面白さを知る。


■B.立場の転:

優位・劣位が入れ替わる。

・(起)俺は無敵の勇者。

・(承)スライムなんて楽勝。

・(転)スライムが分裂して服を溶かし始めた!

・(結)裸で逃げ帰る。


■C.目的の転:

主人公の目的が更新される。

・(起)ケーキを買いに行く。

・(承)売り切れていた。

・(転)仕方ないから材料を買うことにした。

・(結)手作りケーキでヒロインが喜ぶ。


■D.解釈の転:

同じ出来事の見え方が変わる(誤解が解ける)。

・(起)怖い顔の先生がいる。

・(承)いつも怒鳴っている。

・(転)雨の日、捨て猫に傘を差しているのを見た。

・(結)先生のことが少し好きになる。



どうだ? どれも見たことあるだろ? 「対立」も「葛藤」もない。だけど、読者の心の中で「あ、そういうことだったのか」というカタルシスが生まれている。これが起承転結の本質、「情報の提示と転換」だ。


◆ ◆ ◆ ◆


4.Web小説における起承転結


Web小説は「1話ごとの満足度」と「続きへの引き」の両立が求められる過酷なリングだ。ここで起承転結が火を吹く。


現在の小説家になろうの累計1位(※執筆時点)の『とんでもスキルで異世界放浪メシ』を見てみろ。あれは、1話単位で見事に起承転結が採用されていることが多い。


「世界を旅する」という大目標はあるが、各話は極めて平和だ。

・(起)「今日はここの森を行くぞ」と説明があり、

・(承)魔物を狩って、飯を作って、フェルたちが美味いと唸り、

・(転)ちょっとした変化(新しい情報、びっくりする出来事、仲間ができる、新スキルの取得など)があり、

・(結)「じゃあ次はあっちへ行こう」と進む。


他の異世界スローライフ系や、婚約破棄後のモノづくり系、グルメファンタジーもこのパターンが多い。たいていの場合、その物語の「売り(クリエイティブ)」な部分――建築、錬金術、料理、創作魔法、モフモフ――を「承」と「転」に組み込んで話を進めている。クリエイティブ系の長編連載は、だいたいこの平和な起承転結の繰り返しに落ち着く。なぜなら、読者が求めているのは「血みどろの戦い」ではなく「安心できる楽しみ」だからだ。


そこから、Web小説の1話テンプレートとして、これを使え。


【Web小説版・1話構成テンプレ】


■1.起:今回の「お題」提示

読者に「今日は何の話か」を瞬時にわからせる。

(例)今日はダンジョン攻略回です。


■2.承:小さな前進と展開

情報を足し、関係を進める。日常パートやバトルの序盤。

(例)順調に敵を倒し、奥へ進む。ヒロインとの会話イベント。


■3.転:意味が変わる出来事フック

ここで「おや?」と思わせる。ただ進むだけじゃなく、変化を入れる。

(例)奥の部屋に行くと、そこには魔物ではなく、傷ついたライバルがいた。


■4.結:次回の「問い」を残す

ここが重要だ。Web小説の「結」は、物語を閉じる場所じゃない。「次の扉を開ける場所」だ。

(例)ライバルが口を開く。「罠だ、逃げろ」と。暗転。(次話へ続く)


「結」をあえて閉じず、少しだけ開けておく。これを「クリフハンガー(引き)」というが、連載においてはこれが生命維持装置になる。



■失敗例:

・「起」が長い:前回のあらすじや状況説明で1000文字使う。読者はスクロールして逃げる。

・「転」がない:「承(ダンジョン探索)」がダラダラ続いて、「今日の探索終わり!」で終わる。それは日記だ。時々ならいいが毎回それだと飽きる。

・「結」で閉じすぎる:完全に問題を解決して、「めでたしめでたし」で終わる。読者は満足して、明日から戻ってこない。



■無限連載(日常系)と起承転結:

最後に、「終わらない物語(日常系)」の話をしよう。『サザエさん』や『ドラえもん』、あるいは『こち亀』のような作品だ。これらに三幕構成(成長と変化)を持ち込むと、物語が終わってしまう。


ドラえもんが未来に帰ったら連載終了だろ?だからのび太君は成長もしないし変化もしない。毎回ジャイアンにいじめられドラえもんに泣きつくのだ。

サザエさんだってそうだ。カツオたちが成長したら、いつかは死んで終わってしまう。


だから起承転結だ。日常系は「転」で変化しても、「結」で元の日常に戻る。これを繰り返す。


・(起)カツオがテストで0点を取る。

・(承)隠そうとしてドタバタする。

・(転)波平に見つかるが、実は波平も子供の頃0点を取っていたとバレる。

・(結)みんなで笑って夕飯を食べる。(日常への回帰)


この円環構造こそが、読者に安心感を与え、一生読み続けさせる魔法だ。変化させたいなら三幕構成。維持したいなら起承転結。この使い分けができれば、君はもうプロだ。


◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


起承転結は、三幕構成の下位互換ではない。「葛藤なし」でも物語を成立させる、高度な情報操作テクニックだ。


・起:状況を見せる。(何の話?)

・承:広げる。(なるほど)

・転:意味を変える。(えっ、そうだったの?)

・結:余韻か、次への引き。(ふう……で、次は?)


どちらが優れているわけでもなく、目的によって使い分けることができる。


さて、君の物語はなんだ?課題を解決させるためのもの(三幕構成)か?それとも、愛すべき日常を描くもの(起承転結)か?


もしも日常系なら、無理に葛藤させるな。起承転結を意識して構成してみろ。それだけで物語はぐっと引き締まる。


今回は以上だ。解散!

【参考】

新井一樹, シナリオ・センター式 物語のつくり方

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