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読まれるエンタメ物語の構成テンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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5/13

四部構成/7点構成(三幕構成+ミッドポイント+ピンチ)

やあ(´・ω・`)


ようこそ、三幕構成の改良版「四部構成/7点構成」へ。


俺は以前に三幕構成は最強だと言った。その言葉に嘘はない。だが、実際にプロットを書き始めた真面目な君は、今ごろ壁にぶつかって泣いているんじゃないか?


「第2幕……長すぎだろ……いったい何を書けばいいんだ?」


そう、それだ。三幕構成の比率は「1:2:1」。つまり、物語の半分(50%)が第2幕だ。12万文字の長編なら、6万文字が第2幕になる。


第二幕で「主人公が頑張る」「敵と戦う」と言葉にするのは簡単だ。だが、実際に6万文字を埋めるのがどれほど地獄か、想像してほしい。文庫本にして約半冊分。その間、ずっと中だるみさせずに書き続ける? 初心者にそれを求めるのは、武器を持たせずに「ちょっと魔王倒してきて」と言うようなものだ。


いわば第2幕という名の広大な砂漠。多くの作家がここでネタ切れを起こし、方向を見失い、更新が止まり、エタって死ぬ。Web小説の墓場に行ってみろ。多くの作品が、第2幕の途中で更新が途絶えているはずだ。


安心してくれ。その悩みは君だけじゃない。あの脚本の神様、シド・フィールドでさえ悩んだ。「第2幕、長すぎて何書けばいいか迷うわ」と。


そこで神様は、三幕構成に改良を加えた。第2幕という巨大な砂漠に、強制的にオアシスと道標を置くことにしたんだ。それが今回紹介する「四部構成」であり、それをさらに実務的なチェックリストにした「7点構成」だ。


ということで今回は、この「長い第2幕をどう攻略するか」に特化した話をしよう。これを知れば、君の物語から中だるみという言葉が消滅し、エタる確率は劇的に下がるはずだ。


◆ ◇ ◇ ◇


1.四部構成/7点構成(三幕構成+ミッドポイント+ピンチ)とは何か?


まず、言葉の整理をしておこう。多くの創作本では「三幕構成+ミッドポイント+ピンチ」をまとめて「三幕構成」として扱っている。一部の創作論では「四部構成」や「7点構成」と呼ばれたりするが、中身はだいたい同じだ。微妙な解釈の違いはあるが、本稿では便宜上もともとの三幕構成と区別するために四部構成/7点構成という言葉を使っている。三幕構成の一部として理解してくれ。



それでは説明を行う。四部構成、それは三幕構成の第2幕を「真ん中 (ミッドポイント)」でバッサリ半分に割り、全体を4つのブロックで捉える考え方だ。それぞれのブロックの比率は均等だ。


そして7点構成とは「ピンチ」と呼ばれるイベントを第二幕に2つ差し込んで「1.設定→2.PP1→3.ピンチ1→4.ミッドポイント→5.ピンチ2→6.PP2→7.解決」という物語の7つのマイルストーンで分けた構成のことを言う。


この四部構成と7点構成が合わさったのが改良型三幕構成となる。わかりやすくするとこうなる。


=====================

【第1部】(第1幕)[25%]

---------1.設定---------

---------2.PP1---------

【第2部】(第2幕の前半) [25%]

---------3.ピンチ1---------

---------4.ミッドポイント---------

【第3部】(第2幕の後半)[25%]

---------5.ピンチ2---------

---------6.PP2---------

【第4部】(第3幕)[25%]

---------7.解決---------

=====================


どうだ、美しいだろう?全体を均等な4つの塊に分けることで、ペース配分が劇的に楽になる。長かった第二幕も2つにわけることで「6万文字の果てしない砂漠」が、「3万文字の小砂漠×2」に変わるイメージだ。これなら心理的ハードルも下がる。


ではミッドポイント(MP)とピンチ(Pinch)、それぞれの機能について説明しよう。



■ミッドポイント(物語のへそ)

四部構成の核となるのが、この「ミッドポイント(Midpoint)」だ。名前の通り、物語のちょうど真ん中(50%地点)に置かれるイベントだ。ここで起きるべきなのは、単なるイベントじゃない。「ギアチェンジ」だ。物語の「質」や「ルール」が変わる瞬間。それがミッドポイントだ。


なぜ第2幕で失速するのか? それは「変化がない」からだ。ただ戦って、移動して、戦って……同じテンションで続いていれば、読者は飽きる。そこで強制的に物語の景色を変える装置が必要になる。


ミッドポイントでよくあるパターンを2つ紹介する。


A.情報の反転(The Truth)「実は〇〇だった」という衝撃の事実が発覚し、主人公の目的や認識が根本から覆るパターンだ。


(例)倒すべき魔王だと思っていた相手が、実は世界を守る装置だった。

(例)魔王を倒すための方法が、実はヒロインを生贄にささげることだった。

(例)ずっと疑っていた不審者が、実は自分を守っていた味方だったと判明する。


B.立場の反転(Reversal)優勢と劣勢が入れ替わる。あるいは「遊び」が「ガチ」になる瞬間だ。これを「偽りの勝利」または「偽りの敗北」と呼ぶこともある。


(例)順調に勝っていたのに、敵の罠で全軍壊滅し、逃亡生活に入る(攻め→逃げ)。

(例)スパイとして潜入していたが、正体がバレて敵地で孤立する(潜入→脱出)。

(例)船でイチャイチャしていたが、船が氷山にぶつかる(日常→非日常)。



ミッドポイントを過ぎると、物語は「引き返せない」レベルではなく、「別のゲーム」に変わる。主人公は、前半(第2部)までの「巻き込まれて、とりあえず対応している(受動的)」状態から、後半(第3部)の「目的のために自ら動く(能動的)」状態へと覚醒するんだ。


有名な映画『タイタニック』では船に氷山がぶつかるところがミッドポイントになるが、どうだ?それ以前とそれ以降では全然雰囲気が変わっているだろ?


「ここで読者の目を覚まさせる!」と意識して、特大の爆弾を配置しろ。



■ピンチポイント

次に「ピンチ(PinchPoint)」だ。これは、ミッドポイントで割った第2部と第3部の、それぞれの真ん中あたりに置かれるイベントだ。「ピンチ1」と「ピンチ2」がある。ピンチの役割は、ストーリーを前に進めるためのものである。


よく勘違いされるが、この「ピンチ」は、「主人公がピンチ(危機)になる」という意味じゃない。「挟む(Pinch)」という意味だ。何を挟むためのものか?ストーリーをしっかり挟んで結びつけ、脱線させないように前進させるためのものだ。


読者が主人公の冒険や非日常パートに慣れてきた頃、あるいは主人公がちょっと調子に乗ってきた頃に、「おい、忘れるなよ。お前の課題はこれだぞ」と見せつけるイベント。それがピンチだ。


主人公の尻をペンチでつねるようなものだと思っていい。「痛っ!そうだ、敵がいるんだった!」と思い出させるんだ。



■【ピンチ1】(全体の37%付近)

敵の強さ、邪悪さや課題を達成するための困難を読者に提示する。主人公はまだ勝てない。あるいは、敵の影が忍び寄る。


(例)主人公がのんきに修行している間に、隣の村が敵幹部に焼き払われる。

(例)ライバルが登場し、主人公が手も足も出ずに敗北する。

(例)主人公が襲われ、犯人も捕まるが、その事件には黒幕がいることが判明する。



■【ピンチ2】(全体の62%付近)

主人公も成長したが、敵も力を蓄えていることを示せ。特にミッドポイントで偽りの勝利があり、主人公がさらに調子に乗っている場合は最大級の絶望(死、喪失、裏切り)を与えるポイントだ。ここで読者に「もうダメかもしれない」と思わせる。


(例)最強の武器が折れる。

(例)信頼していた仲間が裏切るまたは追放される。

(例)ヒロインが死の呪いにかかり、余命が宣告される。



ピンチがない第2幕は、ただのピクニックだ。主人公をいじめろ。徹底的に追い詰めろ。それが読者を物語に釘付けにする唯一の方法だ。


◆ ◆ ◇ ◇


2.どう使うか


さて、ここまで説明した要素を並べると、物語は4つの箱に分けられ、7つのマイルストーン(節目)で管理できることになる。第二幕に置かれたオアシスと道標によって楽にストーリーを作れるようになっただろ。とりあえず以下の7つを埋めることを考えろ。



■第1部(第1幕):設定と旅立ち【0%~25%】

ここでの目的は主人公や世界の紹介。そしてセントラル・クエスチョンの設定だ。この物語は誰が何をするのかを描け。


【1.導入、設定(Hook)】

日常パート。主人公の紹介。世界観の紹介。主人公の価値観や欲求を描く。読者の興味を掴む。


【2.転換点1(PlotPoint1)】

日常から非日常へ。主人公は後戻りできない一歩を踏み出す。物語が本格的にスタートする。



■第2部(第2幕前半):試練と学習【25%~50%】

ここでは主人公が解決しなければならないことについて書く。また敵対勢力について再確認すること。結果的に順調に行ってもいいが、ミッドポイントで変化をつけよ。


【3.ピンチ1(Pinch1)】

敵の脅威。最初の壁。「あ、これヤバい奴だ」という認識。


【4.ミッドポイント(Midpoint)】

ギアチェンジ。情報の反転、または立場の反転。「ここから話が深刻になるぞ」という合図。



■第3部(第2幕後半):反撃と代償【50%~75%】

前半とは違った課題をクリアする。ピンチ2では主人公をどん底に叩き落とせ。読者がこれからどうなるんだとハラハラさせるように仕向けよ。そしてプロットポイント2で最終決戦へと持ち込め。


【5.ピンチ2(Pinch2)】

最大の試練。絶望。大事なものを失う。「勝てる気がしない」という底。


【6.転換点2(PlotPoint2)】

最終決断または出来事。必要なものは揃った。あとはやるだけ。



■第4部(第3幕):決戦と結末【75%~100%】

最後にセントラル・クエスチョンへの回答を行え。第1部で設定した誰が、何をする話か?に答えられるような結末になっているかを意識せよ。


【7.決着(Resolution)】

クライマックス。勝利、または敗北による変化。



どうだ?この7つの点を埋めるだけで、スカスカだったプロットに背骨が通った気がしないか?「第2幕をどうしよう」と悩む必要はない。「ピンチ1」でビビらせ、「ミッドポイント」でひっくり返し、「ピンチ2」で絶望させる。そうすれば、勝手に第2幕は埋まるんだ。


◆ ◆ ◆ ◇


3.Web小説での「四部構成」


「でも、これって映画の技術でしょ?Web小説はもっとダラダラ書くもんだよ」


……まだそんな寝言を言っているのか?いいか、Web小説(連載)こそ、この四部構成が最強の武器になる。


なぜならWeb小説には引き(クリフハンガー)が命だからだ。


毎日更新、あるいは毎週更新の中で、読者に「続きが読みたい!」「ブックマーク外せない!」と思わせるには、定期的にヤバいことを起こさなきゃいけない。そのタイミングが、まさに「ピンチ」と「ミッドポイント」なんだ。


Web小説でこの構成を使いこなすための、実戦的なコツを3つ伝授しよう。


■コツA:ピンチは更新の区切りにぶつけろ

「ピンチ1」や「ピンチ2」のイベント発生直後で次話へ続くにしてみろ。主人公がボロボロになり、ヒロインが連れ去られ、絶望的なセリフを吐いた瞬間に更新を終えるんだ。読者は気になって夜も眠れなくなる。「ふざけんな!」「早く続きを!」とコメント欄が阿鼻叫喚になるだろう。それが連載のライブ感だ。ピンチは、読者を次の更新まで繋ぎ止めるための鎖だ。


■コツB:ミッドポイントで「タイトル回収」か「タイトル詐欺」をしろ

Web小説においてミッドポイントは「ゲームが変わる瞬間」だ。ここでタイトルの意味が変わるような展開を持ってくると最高に熱い。


例えば『勇者パーティを追放された俺』というタイトルなら、ミッドポイントで「実は追放されたんじゃなくて、勇者が俺を守るためにわざと冷たくして逃したんだ」と気づくとか。そうすれば、後半の第3部・第4部は「復讐劇」ではなく「勇者を救うための共闘劇」に変わる。読者の期待を裏切り、予想を超えるにはここしかない。


■コツC:第3部は「報酬」より「代償」を見せろ

Web小説、特になろう系では、主人公にガンガン報酬(スキル、嫁、金、称賛)を与えるのがセオリーだ。俺もそれは否定しない。ストレスフリーは正義だ。だが、物語の終盤手前である第3部(ミッドポイント~ラスト手前)でそれをやりすぎるとダレる。緊張感がなくなるからだ。


ここでは代償コストを見せろ。「勝てるけど、何かを失うかもしれない」「ヒロインを救うには、最強のスキルを捨てなきゃいけない」「この魔法を使えば、二度と元の世界には戻れない」


Web小説の読者は俺TUEEEが好きだが、それ以上に「何かを賭けて勝つ」瞬間にカタルシスを感じる。失うリスクがあるからこそ、最後の勝利(第4部)の爆発力が生まれるんだ。ずっと無双しているだけじゃ、それは物語じゃなくて作業報告書だ。それでも楽しいが、ずっと続くと飽きてしまう。


◆ ◆ ◆ ◆


まとめ


三幕構成が大きすぎて使いにくいなら、刻めばいい。第2幕は長すぎる死の砂漠。そのまま挑むとミイラになる。ミッドポイントで割って「四部構成(1:1:1:1)」にする。ミッドポイントで物語のゲームを変えろ。ピンチを置いて、「7点構成」として管理する。敵の巨大さを見せろ。


これで君の物語には7つのピンが刺さったはずだ。ピンとピンの間を埋めるのは、君の想像力 (キャラクター)の仕事だ。でも、もう砂漠で迷子にはならない。次はどこへ向かえばいいか、オアシスと道標が教えてくれるからな。


さあ、今すぐ君の物語を見直してくれ。「真ん中 (ミッドポイント)」で、ちゃんと読者を驚かせているか?「ピンチ」で、敵は本気を出しているか? 主人公を甘やかしていないか?


すべてのチェックポイントをクリアすれば、読まれるエンタメの骨格が出来上がる。スポンジが焼き上がれば、あとは美味しいクリームを塗るだけだ。


今回は以上だ。解散!

【参考】

シド・フィールド, 素晴らしい映画を書くためにあなたに必要なワークブック

ラリー・ブルックス, 工学的ストーリー創作入門 売れる物語を書くために必要な6つの要素

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