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読まれるエンタメ物語の構成テンプレ集 ~テンプレは悪じゃない!読者の期待を外さない物語の組み立て方~  作者: 夕月 悠里
第1章:基本のテンプレ

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3/12

三幕構成(Three-Act Structure)

やあ(´・ω・`)


ようこそ、三幕構成という名の「黄金の構成」へ。


早速だが質問だ。なぜ、ハリウッド映画は面白いのか?なぜ、王道の少年漫画はあんなにも熱いのか?


答えはシンプルだ。「三幕構成」を使っているからだ。


三幕構成とは、物語を機能別に3つのブロックに分ける考え方だ。シド・フィールドという脚本の神様が体系化したこの理論は、エンタメの聖書バイブルと言っていい。


ハリウッド映画では、これが使われていない作品を探す方が難しい。映画館で君が涙を流し、拳を握りしめたあの作品も、間違いなくこの構成が適用できる。映画業界では「水は飲みもの」というレベルの常識だが、小説界隈、特にWeb小説の現場では意外と知られていない。


もったいない話だ。武器を持たずに戦場へ行くようなものだからな。


というわけで今回は、Web小説書きの君たちに、三幕構成の最も基本的な形を伝授しよう。


◆ ◇ ◇ ◇


1.三幕構成の基本について


三幕構成の物語は、以下の3つの幕(Act)でできている。



■第1幕:設定(Setup)

状況説明だ。主人公は誰で、何が足りなくて、どんな世界にいるのか?そして、この物語は「誰が、何をする話なのか」という「セントラル・クエスチョン(主人公は目的を達成できるのか?)」を提示する。


■第2幕:対立・葛藤(Confrontation)

試練と対立の嵐だ。主人公が目的に向かって進むが、障害にぶち当たりまくる。主人公は自らの課題を達成するために、敵と戦い、自分と戦い、傷だらけになりながら進む。ここが物語のメインディッシュだ。


■第3幕:解決(Resolution)

クライマックスだ。第1幕で提示されたセントラル・クエスチョンの答え、すなわち「主人公は課題を達成できるのか?」という問いに対する答えが明かされ、物語は終わる。



比率は1(第1幕):2(第2幕):1(第3幕)だ。2時間映画なら「30分:60分:30分」。12万文字くらいの本1冊分の文量なら「3万文字:6万文字:3万文字」だ。この配分を無視するとどうなるか?導入が長すぎて飽きられるか、結末が駆け足すぎてポカーンとされるかだ。


そして、この構成を成立させるために最も重要なのが、幕と幕をつなぐ2つの「プロットポイント(PP)」だ。



■プロットポイント1(PP1):

第1幕の終わりにある「後戻り不能点」だ。事件が起き、主人公が「もう日常には戻れない」と覚悟を決めて、新しい世界(非日常)へ踏み出す瞬間。ここから本当のストーリーが始まる。勇者もので言えば、「村が焼かれ、復讐を誓って旅に出る」瞬間だ。ここで「やっぱ家で寝てよう」とは言えなくなる。


■プロットポイント2(PP2):

第2幕の終わりにある「決意の点」だ。最終決戦に向けて状況が収束し、後は突っ込むしかない形に“物語が”なる点。ボロボロになった主人公が、最後の敵を倒すために「やるしかない」と決める瞬間。勇者もので言えば、最強の武器を手に入れ、仲間との絆(あるいは犠牲)を背負い、「魔王城への突入」を決めるシーンだ。ここを過ぎたら、勝つか死ぬかしかない。



アスキーアートで図解しよう。


=====================

【第1幕:設定】[25%]

(日常・きっかけ)

↓↓↓

【PP1:後戻り不能点】

(日常を捨てる決断)

↓↓↓

---------------------

【第2幕:対立】[50%]

(試練・葛藤・成長)

↓↓↓

【PP2:決意の点】

(退路を断つ決断)

↓↓↓

---------------------

【第3幕:解決】[25%]

(決戦・結末)

=====================



どうだ、シンプルだろう?


ここで「あれ?ミッドポイントは?」と思った君。鋭いな。君はすでに脚本術の沼に片足を突っ込んでいる。だが安心しろ、その強力すぎる武器については次回以降でたっぷりと解説する。今日はまず、この大きな3つの箱を理解してくれ。



ここまで見てきて、難しそうだと思ったか? 構えるな。シンプルに考えろ。君の物語に、以下の5つの釘を打てばいい。


■セントラル・クエスチョン(問い)は何か?

物語全体を通して解決すべき問題はなんだ?

例:魔王を倒せるか?/彼女と付き合えるか?/ここから脱出できるのか?


■PP1(引き返せない点)はどこだ?

主人公が巻き込まれ、あるいは自ら飛び込み、もう「やーめた」と言えなくなるのはどこだ?

例:故郷が滅びた/恋に落ちた/入口が崩落した


■解決のために必要なアクションは?

主人公が解決しなければならないことはなんだ?

例:伝説の剣を探す/ダイエットしてイケメンになる/迷宮の地図を作る


■PP2(最終決断)はどこだ?

すべての武器、すべての情報を集め終え、「あとはやるだけ」になるのはどこだ?

例:魔王城の門をくぐる/クリスマスにデートに誘った/最深部のボス部屋を開ける」


■クライマックス(答え)はどうなる?

セントラル・クエスチョンへの回答はなんだ? もしダメな場合は他に何を得られた?

例:倒した(Yes)/付き合えた(Yes)/脱出できた(Yes)/負けたが大事なことを知った(No,but...)/付き合えなかったが幼馴染とくっついた(No,but...)



最低限、これだけ決めておけば、物語は勝手に動き出す。あとは主人公の背中を蹴飛ばしてやればいいんだ。


◆ ◆ ◇ ◇


2.三幕構成のメリット、デメリット


最強に見える三幕構成だが、もちろん万能薬じゃない。効く症状と効かない症状がある。


【メリット:ここが最強】

・迷子にならない:「導入→中盤→結末」のレールが敷かれているから、作者も読者も安心できる。エタる確率が激減する。

・問題発見が楽:「中盤がつまらない」なら第2幕の障害不足。「導入で切られる」ならPP1が遅すぎる。どこを直せばいいか一発でわかる。

・成長が描ける:第1幕のダメな主人公が、第2幕で揉まれ、第3幕で変わる。この落差が感動を生む。

・再現性が高い:才能に頼らず、ロジックで面白さを再現できる。


【デメリット:ここが苦手】

・変化しない物語には不向き:『サザエさん』や『ドラえもん』の日常回に三幕構成はいらない。あれは「変わらないこと」が価値だからだ。三幕構成は「変化するための装置」だ。

・俺tueeeとの兼ね合い:いわゆる「最初から最強」の物語でも使えるが、工夫がいる。主人公が物理的に苦戦しないなら、精神的な葛藤や、守るべきものへの脅威など、別のベクトルで第2幕(対立)を作らないと平坦になる。

・型にハマりすぎる:何も考えずに当てはめると、「はいはい、ここでピンチね」と読者に先読みされる。型を知った上で、どう「ズラす(外し技)」かが腕の見せ所だ。



三幕構成は基本的に成長、課題解決型のストーリーに対して絶大な威力を発揮するが、雰囲気重視の小説には向かない。そもそも課題がない物語(日常系、ギャグ)に対しては向いていない。


そもそもなぜ三幕構成はここまで絶賛されているのか?それは人間の脳が理解しやすいからだ。アリストテレスの時代から、人類はずっとこのリズムで物語を語り継いできた。設定、対立、解決。このリズムは理解しやすい形として古くから定着している。だからこそ、この構成に従うだけで、読者の脳は「気持ちいい!」と感じるようにできているんだ。


感情的に満足感の高い、ゆえに人気の高い物語が持っている共通の法則性。それが三幕構成なのだ。


◆ ◆ ◆ ◇


3.Web小説で役に立つのか?


「映画の話はわかった。で、俺たちの戦場(Web小説)で使えるのか?」


答えは、イエスだ。ただし、使い方を間違えると爆死する。


映画には2時間という制限があるが、Web小説にはない。文字数は無制限。描写も自由。これが罠だ。


まず最初に、俺の遺言だと思って聞いてくれ。


「12万文字(文庫1冊分)の中に、最低1回は三幕構成を完結させろ」


これが鉄則だ。


ダラダラと続く100万文字の物語全体だけで三幕構成をやろうとするな。第1幕(日常)だけで20万文字も書いたら、PP1に来る前に読者は全員ブラウザバックだ。小説は映画より自由だが、「読者の飽き(ブラウザバック)」という制限時間は映画より厳しいと思え。


現場でよく見る死体を検分してみよう。


【失敗例A:第1幕が終わらない病】

主人公がウジウジ悩んでいる。世界観の説明が延々と続く。飯を食って寝る。10万文字いっても冒険に出ない(PP1が来ない)。

診断:読者は「この話、いつ始まるの?」とイライラして離脱する。これを「序盤の壁」と呼ぶ。


【失敗例B:第2幕が平坦地獄】

冒険には出た。だが、敵と戦って勝つ、戦って勝つ、の繰り返し。敵が強くならない。主人公も追い詰められない。

診断:緊張感がない。第2幕は「対立」だ。右肩上がりに状況が悪化しないと、物語の心電図は「死(横一直線)」を示す。


【成功例:フラクタル構造(入れ子)】

上手いWeb作家はこうやっている。「マトリョーシカ」のように、大小の三幕構成を組み合わせるんだ。


大目標(小説全体):魔王を倒す

中目標(章単位):四天王の一人を倒す

小目標(数話単位):伝説の剣を手に入れる


「伝説の剣を手に入れる」という短いスパンで三幕構成(依頼→ダンジョン攻略→ボス撃破・入手)を回す。読者は「お、剣ゲット!」という達成感(第3幕の報酬)を得て、次の「四天王討伐」へ進む。ギャップを埋めるための階段を作れ。


いきなり魔王は倒せない。だから「仲間」「武器」「情報」という中間地点ハードルを置き、その一つ一つに三幕構成を適用するんだ。そうすれば、長編でも作者も読者も迷わず、セントラル・クエスチョンの答えを求めて走り続けられる。


12万文字で完結するならいいが、それ以上になると読者が飽きる。複数の三幕構成を連結して大きな三幕構成を実現する。これがWeb小説で大事なことだ。


また三幕構成を12万文字にすると、書籍化した際にどこで区切るかを迷わないでいられる。そうすると、読者の満足度が一番高くなるところで1冊の本として出せるんだ。


それって素晴らしいことだとは思わないかい?


◆ ◆ ◆ ◆


4.まとめ


三幕構成とは、要するにこうだ。


1.問題発生(Start)

2.引き返せないラインを超える(PP1)

3.地獄の試練(Act2)

4.覚悟の決断(PP2)

5.解決(End)


これを一冊単位、一章単位、一話単位で使いこなせ。そうすれば、君の物語は常に「目的」があり、「動き」があり、「解決」があるエンターテインメントになる。


だが待て。鋭い君なら気づいたはずだ。「第2幕が一番長くて(50%)、一番難しいって言ったよな?具体的に何を書けばいいんだ?」


いい質問だ。第2幕の砂漠で迷子にならないための道標、「ミッドポイント」と「ピンチ」について……と言いたいところだが、それはまた別の講義で話そう。


まずはこの「1:2:1」の骨格を、君のプロット用紙に叩き込んでくれ。スポンジ(土台)が焼けなきゃ、ケーキは作れないからな。


今回は以上だ。解散!

【参考】

シドフィールド, 映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと

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― 新着の感想 ―
コレって「序破急」ですよね?  所謂、「起承転結」だと、「起」が 1.問題発生(Start)と 2.引き返せないラインを超える(PP1)、「承」が 3.地獄の試練(Act2)、「転」が 4.覚悟…
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