物語は「マトリョーシカ」でできている
やあ(´・ω・`)
ようこそ、第1章へ。
ここからはいよいよ、具体的な【物語の構造】の話をしていく。
この章で扱うのは、物語全体を支える大枠のテンプレだ。「三幕構成」「起承転結」「五幕構成」……本屋の創作論コーナーに行けば、こういう言葉が並んだ本が山のようにあるだろう。そして君はこう思う。「難しそうだな」「俺には関係ないかな」と。
断言しよう。関係大ありだ。むしろ、毎日更新という過酷な戦場で戦うWeb作家にこそ、この大枠が必要なんだ。
なぜか? Web小説は増築工事だからだ。書きながら考え、読者の反応を見て展開を変え、気づけばとんでもない長さになっている。設計図(大枠)を持たずに増築を繰り返すとどうなる? ある日突然、構造が重みに耐えきれず崩壊する。「エタる」ってやつだ。あるいは、迷宮のような構造になって、読者がトイレ(離脱)に行ったきり帰ってこなくなる。いつの間にか妖怪ブクマ外しが出現するかもしれない。
この増築の恐ろしさは、書いたり読んだりを続けているうちはいいが、一度でも物語から離れた瞬間迷子になることだ。作者も読者もどこに行きたいかもわからず元居た位置に帰ることもできず物語がエタるのだ。
この章の目的は、君に「物語の地図」を渡すことだ。どんなに物語が長くなっても、どんなに脇道に逸れても、「俺はいまここにいる」と指差せる地図。それさえあれば、君も読者も絶対に迷子にならない。妖怪ブクマ外しも退散することだろう。
◆ ◇ ◇
さて、ここからがこの話のハイライトだ。「大枠のテンプレ」と聞くと、物語の最初から最後までを一本の線で引くイメージを持つかもしれない。だが、Web小説でそれをやると失敗する。長すぎて線がたるむからだ。
そこで登場するのが、「マトリョーシカ構造 (フラクタル)」だ。難しい言葉に聞こえるか? やることは単純だ。
「全体と同じ構造を、部分にも適用しろ」
これだけだ。
物語全体に「三幕構成」があるとしよう。その中の第1部(1巻分)にも「三幕構成」がある。その中の1つの章にも「三幕構成」がある。
極端に言えば、1話の中にも「三幕構成(発端→展開→引き)」がある。
[全体の大三幕]
┣[第1部の三幕]
┃ ┣[第1章の三幕]
┃ ┗[第2章の三幕]...
┣[第2部の三幕]...
┗[第3部の三幕]...
マトリョーシカ人形を開けると、中から同じ顔の小さな人形が出てくるだろう? あれと同じだ。この「入れ子構造」を作れると、物語に無限の深みが生まれる。
読者は「第1章が終わった!」という小さな達成感(報酬)を得つつ、「でも魔王はまだ生きてる!」という大きな期待(牽引力)を持って次へ進める。「小さな完結」と「大きな未完」を同時に走らせる。これが、無限に読ませるための最強のエンジンだ。
◆ ◆ ◇
具体的にどう組むか、定番の「勇者もの」でシミュレーションしてみよう。全体を「三部作」として設計し、それぞれに三幕構成を入れるとこうなる。一部当たり本一冊分の文量があるとする。
【第1部:旅立ちと準備】(=全体構成における「第一幕」)
小・第一幕:勇者が村を出る。目的が決まる。
小・第二幕:仲間が集まる。世界のルール(魔法や魔物の強さ)を知る。
小・第三幕:最初の大ボス(四天王の最弱)を倒す。「こいつは四天王の中でも最弱…」と知り、本当の敵の大きさに気づく。
【第2部:中盤の地獄】(=全体構成における「第二幕」)
小・第一幕:新たな土地へ。敵が強くなり、今までの戦法が通じない。
小・第二幕:「中盤の死 (ミッドポイント)」。敗北、仲間の離脱、武器の破壊。読者が一番ハラハラする「夜明け前の闇」。
小・第三幕:覚醒イベント。失ったものを乗り越え、反撃の狼煙を上げる。
【第3部:決着と回収】(=全体構成における「第三幕」)
小・第一幕:魔王城への突入。最終決戦の空気を高める。
小・第二幕:ラスボスとの対峙。最大の選択。「世界を救うか、ヒロインを救うか」みたいな究極の問い。
小・第三幕:魔王討伐。そしてエピローグ(大団円)。伏線をすべて回収して着地。
見ての通り、各部(第1部、第2部…)だけで見ても、ちゃんと「始まり→試練→解決」がある。だから読者は途中で飽きない。でも全体を通して見ると、それらが繋がって巨大な「行って帰ってくる物語(三幕構成)」になっている。これがマトリョーシカ構造の美しさだ。
◆ ◆ ◆
最後に、これから長旅に出る君のために、ブレないための「杭」を打っておこう。細かい技術はあとで教えるが、まずはこの3つだけ心に刻んでくれ。
「ゴール」を一文で決めろ「誰が」「どうなって」終わるのか。具体じゃなくていい。「勇者が魔王を倒して故郷に帰る」でいい。ゴールがないマラソンは地獄だ。まず旗を立てろ。
「寄り道」を「伏線」に変えろ。Web小説は寄り道 (サブイベント)が楽しい。ヒロインたちがきゃっきゃしているのを見るのも楽しい。だが、無意味な寄り道は読者を冷めさせる。寄り道をするなら、必ずメインの目的に繋がる何か(アイテム、情報、仲間、あるいは敵の強さの再確認)を持ち帰らせろ。手ぶらで帰ってくるな。もし何も本編に影響を及ぼさないなら章の最後にSSとして別途分けておけ。
区切りごとに「小さな達成感」を作れ「いつ面白くなるの?」と読者に聞かせるな。常に「今が面白い」と思わせろ。そのためには、章ごとに、あるいは話ごとに、小さな解決 (スカッと)を用意するんだ。大目的は遠くても、小目的はこまめに達成させてやれ。週刊少年ジャンプでの連載を考えろ、面白くなかったらアンケートで死が確定する。
さて次話からは、いよいよ物語構造の紹介だ。準備運動は終わりだ。さあ、設計図を広げよう!




