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氷の下の化石

 周囲は氷と、まだ誰も踏んでいない雪で染まっていた。

 “北方氷原地帯“。その一角にひっそりとハルド博士の古生物調査隊の姿はあった。調査隊と言っても、案内役が1名、博士を含めた研究員が4名(うち1人は博士の助手)と言うささやかな隊だ。

 「博士、なぜこの地を?」

 「5年前にも一度調査をしたが、その時は成果を得られなかった。だが地質から考えて間違いなく何かがあると確信している。」

 寒さが肺を刺す度に切り上げ時を探していたが、未知の生物と思われる化石を発見した後は皆情熱を取り戻していた。

 ようやく化石の表面の半分ほどを露出させることに成功し、一息つこうと簡易椅子を探すと雪の白い光が鋭く入る。とっさに目を細めながら、再び化石のほうに視線を移すと、助手のリアンが眺めていた。

 「記録は出来たのか?」

 「はい。…これって生物だったんですよね?」

 博士は化石を見つめながら言った。

 「形状的には骨格構造に近い。鳥の近似種にも見えるが、骨が太すぎる。まだ断定はできない。」

 リアンは、博士のわずかに早い口調から化石に寄せる期待の大きさを感じ取った。


 数日後、発掘は順調に進み、化石の全容が明らかになった。鳥に近似していること、骨が太すぎて飛行できないであろうこと、そして未知の生物であることの3点は、調査隊の意見として一致していた。

 昼食時、博士は1人化石を眺め、削り出しが可能かどうか思案していた。ふっ、と辺りが暗くなる。

 「なんだ?」

 見回すとリアンが上を向いていた。引き寄せられるように上に目を移すと、太陽円の一部が欠損していた。

 「日食か…」

 突然のことに驚いたが、原因がわかれば大した事ではない。が、リアンは見入っているようだ。14歳には劇的な光景かも知れない。

 思案に戻ろうと化石に目を戻すと、

 「…光っている?」

 骨格に沿うように淡い光が漏れ出していた。

 心臓が跳ねる。

 手を伸ばしかけて、止まる。

 (触れていいのか―)

 しかし、探求を望んだ手が化石に触れる。骨格の部分だけが暖かい。全体を確かめようと、さらに手を滑らせた時、赤が目に飛び込む。

 (色が変わった?いや、違う。)

 化石に鋭利な部分があったのか、寒さによるひび割れか、人差し指の先がわずかに切れていた。空は暗く、漏れ出る光は増していく。ついに、光が弾けた。


 意識が戻ると、博士は全身に鈍い痛みを感じつつ、周囲の状況を確認した。どうやら、2メートルほど吹き飛ばされたらしい。空にはいつもの太陽が浮かんでいる。

 立ち上がると、すぐに倒れたリアンが見つかった。近付いて、膝をつき脈を取る。

 (…正常。目立った外傷もない。)

 わずかに肩を揺すり、名前を呼ぶと、すぐに意識を取り戻した。

 「…博士?…何が」

 「わからない。ひとまず村まで引き返そう。歩けるか?」


 (…異常だ。村に着けば、誰かが説明を求めるだろう。)

 調査隊は5名だった。幸い、残り2名の研究員はリアン同様、倒れていただけだった。案内役が先に村に戻ったことは、足跡から推測できた。辿るように歩を進めると、煙が見えた。この燃えた村が、私が最初に確認した“魔法による被害“となった。

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