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首のない亡靈

〈椋鳥のぎやあぎやあ集ふ驛の樹よ 涙次〉



【ⅰ】


君繪の泣き聲でカンテラは目醒めた。普通の1歳児並みに夜泣きなどするのか- カンテラは寧ろ安堵した。(あらパパ、事はそんなに單純ぢやないのよ)カンテラ、ずつこけた。肉體としての君繪は1歳だが、精神はもう大人より大人らしいのだ。(さうなのよ。アンヴィヴァレントつて云ふのかしら)-(で、乳児の君繪を泣かせてゐるものつて、何なの?)-(怖い夢よ。子供の見る惡夢)-(どんな夢?)-(頭のない剣士のお化けが、わたしを攫ひに來るの)



【ⅱ】


事務所の日課である、テオからの、最近の仕事の傾向についてのレクチュアが終はつた。カンテラは、一味が特に仕事を抱へてゐない時の常として、昨夜の夢の内容を、一味メンバーにインタヴューした。夢には仕事への導入口となる成分が含まれてゐる事が多いからである。「ぴゆうちやん」が「僕、怖イ夢見タヨ」と云ふ。だうやら君繪の「夜泣き」の原因となつた夢に似通つた夢を、「ぴゆうちやん」も見たらしい。



【ⅲ】


「頭のない剣士のお化け、つて云つたら、* 坊上定(ぼうのかみ・さだむ)を思ひ出すなあ。奴の首級は、事務所のフリーザーで冷凍保存してゐる」とじろさん。「よもや、奴が自分の首を求めて-」-「それは大いにあり得るな。奴の躰は、あの瀧壺に蹴落とした筈。化けて出たのかも」カンテラ。

「奴は生きる意思が旺盛だつたからなあ」-「確か俺が白虎の力を借りて、斃したんだつた。なかなか手強かつたつて記憶がある」-「事務所の乳幼児メンバーは敏感だから、その夢に出て來たつて譯か」



* 当該シリーズ第80・83話參照。



※※※※


〈毒バッタなどを捜さす苛めつ子の無責任さが寧ろ懐かし 平手みき〉



【ⅳ】


テオのスマホが鳴る。タイムボム荒磯からだ。* 力子が惡夢を見て、怯えてゐる、と云ふ。だうにかならないかと、荒磯は相談して來た譯だ。

カンテラ「これは... 他の子供たちも惡夢を見てゐる可能性があるな。テオ、ちよつとデータ集めてくれ」-「ラジャー」



* 当該シリーズ第100話參照。



【ⅴ】


すると- 出るわ出るわ。SNS始め各方面で、うちの子が怖い夢見て泣き已まないと云ふ話で持ちきりだ。自民党総裁選の話題より、そつちの話の方が多いくらゐだ。「これは...」


今の内成敗して置くに越した事はない。カネは多分、その子たちの親が醸金してくれるだらう。と云ふ事で、「ぴゆうちやん」の夢に、カンテラ・じろさん・テオ、「修法」を使つて潜入した。



【ⅵ】


「ぴゆうちやん」の夢の中で一行がまづ出會つたのは、「ぴゆうちやん」のパパママである。「おやまあ、カンテラさん、皆さん。うちのがいつもお世話になつてをります」-「挨拶はいゝ。パパママ、こゝいらで首のない侍のお化け、見掛けなかつたかい?」-「それなら、ほれこゝに」-パパママがその鎌を合はせると、魔導士の魔術のやうに、坊上の惡靈が「召喚」された。【魔】であるパパママに睨まれたのでは、惡靈と云つたところである坊上など、ひとたまりもないのだ。


じろさん、首のない坊上の襟首を摑み、地面にひれ伏させた。其処をカンテラが剣で刺す。「しええええええいつ!!」。また蘇生されると厄介だから、テオが髙性能爆藥を使つて、坊上の遺骸を爆裂・四散させた。



【ⅶ】


〈露草も見掛けぬ街の腐敗かな 涙次〉



さて、人間界。ロボテオ2號が呼び掛けて、被害者同盟を結成。其処からカネが出た。テオ「でかしたぞ、2號」-「イヤソレ程デモ」‐とは云へ、やけに嬉しさうな2號なのだつた。上司に褒められて、嬉しくない奴なんてゐないだらう。


と云ふ譯で、坊上の亡靈咄、一卷の終はり。今回はコンパクトに纏めてみました。ぢやまた。

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