【癒やしの聖女】第8話 夜襲
日没後。
丸太を十字に組んで、使い古した下着を着せたダミー人形を作る。それから鑪の上に薪を組んで、その前に丸太のダミー人形を立てた。
わたし自身は闇に紛れて、その場を離れる。
鑪の火が薪にうつり、勢いよく燃え上がった。揺れるの炎の前だとダミー人形もユラユラと動いて見えるから、遠目なら焚き木で暖を取っている姿に映るだろう。
ならず者連中は、魔蝙蝠をネタにして町に寄生している。だから、襲撃してくるなら魔蝙蝠を退治する前に仕掛けてくると予想した。
天空で星の瞬きが綺麗な分、足下は暗い。焚き木の炎だけが真っ暗な闇の中で揺らいでいる。焚き木が舞い上げる火の粉に負けないくらい、天空の星も輝いて見えた。
それから刻は過ぎて、東の地平が微かに明るくなる。
……ヒュン!
……ヒュン!
東の地平に光りが差すのを合図としたように、弓矢が風を切る音が辺りに響いた。
そろそろ燃え尽きそうになっていた焚き木に向かって、幾本もの矢が飛ぶ。そのうち3本の矢がダミー人形に突き刺さり、ダミー人形は焚き木の炎の中に倒れ込む。
しばしの静寂。
それからガサガサと草を踏むが数カ所からして、焚き木の炎に5人の人影が集まった。
「ちくしょう!」
「木偶人形だ! 騙しやがったな!」
男の声で、丸太を組んだダミー人形に毒づくのが聞こえる。焚き木を蹴り上げた者がいて、炎の勢いが強くなった。
わたしは投石紐の中央部に石を仕掛ける。そして遠心力をのせて、その石を飛ばす。
「ぐあ!」
命中……一人が額を抑えてしゃがみ込んだ。
投石紐……二つ折りすると肘から指先くらいの長さの紐で、二つ折りする中央部に石を包む帯がついている。そこに石を入れて紐の端を持って振り回す。遠心力が乗ったところで、紐の一方の端を離すと石が勢いをつけて飛んでいく武具だ。
使いこなすには慣れがいる武器だが、弓のように嵩張らなくていい。
「どうした?」
「どこから仕掛けたんだ?」
「卑怯だぞ! 出てきやがれ!」
闇に紛れて先に奇襲を仕掛けてきたのは、そっちだろうに……それは卑怯ではないのか。
東の空こそ少しだけ白んでいるが、まだ周囲は闇に包まれている。焚き木の炎に集まっている連中は、闇に紛れたわたしに取っては一方的に狙える的でしかない。
……二投目。
……三投目。
「うおぉぉぉ!」
……四投目。
……五投目。
……六投目。
「ぐわぁ!」
ここで用意した石礫が尽きたが、3人に手傷を負わせたなら十分だろう。
引き抜いた海賊の剣を肩に担ぐと、わたしは焚き木の側にいる残る二人に向かって歩き出す。




