【癒やしの聖女】第6話 忠告?布告?
町長の家の前に、人相の悪い男が2人いた。一人はロングソードを腰に差しており、もう一人は褐色のローブを着ている。
剣使いと魔法使いが、見張りに立っているのだろう。
わたしとノアールが近づくと、剣使いはロングソードの柄に手をかける。
「何だ、お前らは?」
褐色のローブの男も、筒状の呪具をこちらに向けた。炎の弾を撃ち出す呪具だが、いきなり人に向けてくるのか。
「森の魔蝙蝠は、わたし達が狩ることになったのでね。領主様から派遣されたと言う冒険者に伝えに来たのさ」
「はあ?」
二人は顔を見合わせてヘラヘラと笑った。
「あのバカでかい魔蝙蝠を、お前ら2人で退治するだと?」
「魔蝙蝠の吐き出す炎に焼かれて、キレイな銀髪がチリチリになっちまうぜ」
人相の悪い顔が、嫌らしく笑うから更に醜悪に見える。銀髪をキレイと褒めてくれた点だけは有り難いが……素直に礼を言いたくなるような連中ではないな。
「今日か明日には魔蝙蝠はいなくなる。アンタらは、もう用済みってわけさ。さっさと町から出て行きな」
それだけ言うと、わたしは踵を返した。すると案の定、背中に下司な殺気が流れる。
チラリと後ろを見ると、人相の悪い顔がロングソードを頭上に振り上げるところだ。一歩踏み込んで、剣先が振り下ろされる前に男の顔面に拳を叩き込んだ。
「……ぐぇ」
蛙の鳴き声みたいな音を漏らして、男は仰向けに引っ繰り返った。見事にカウンターが決まったようで、男は気を失って動かなくなる。
ローブの男が口元を歪める。筒状の呪具の狙う先が、わたしの足下から胴体に向く。
「用済みの冒険者は,町に留まる理由はないんだ。アンタらのリーダーに伝えておいておくれよ」
同じ科白を繰り返してもう一度、踵を返して背中を向ける。背後には、魔法使いの殺気があるがそれも計算のうち。数歩の後、わたしの顔の横を熱風が通り過ぎた。
……2発目。
……3発目。
3発目の熱風が通り過ぎたところで、小さく振り返った。魔法使いの顔が、口をあんぐりと開けて呆然としていた。
7人の冒険者のうち、2人が「炎の呪具を使う」魔法使いだと聞いている。だから、土妖精から貰ったサーコートを着てきたのだ。魔蝙蝠の炎の魔法すら弾くのだから、人の魔法が通じるはずがない。
あの魔法使いと剣使いが、リーダーとやらに「炎の魔法が通じない冒険者が、魔蝙蝠退治に向かった」と伝えてくれるだろう。
ならず者と言うのは、自分の面子にだけは敏感だ。これ見よがしの挑発を受けたら、わかりやすい反応をしてくれるはずだ。




