【癒やしの聖女】第2話 町外れの教会
ノアールは、もう魔蝙蝠を喰らうつもりになっている。
森の中に分け入って、あの巨大な魔蝙蝠をおびき出せそうなひらけた場所を探し始めた。きっとわたしは、囮役としてこの場所で野宿することになるのだろう。
「野宿しながら魔蝙蝠をおびき出すのはいいけど、もう食料が無いんだよ。少し先に町があるはずだから、食料を仕入れてからにしないかい?」
ノアールに餌を与える代償に「死にかける」のは、もう諦めがついている。それでも、餓死は避けたい。まあ、ノアールが鳥や獣を捕ってきてくれることもあるのだが……採ったばかりの獣肉はパサついてるだけで美味くないのだ。肉をさばくも面倒だし。
「……わかりました」
微妙に間のある返事だったが、町へ向かうことをノアールも同意した。
小さな町で、住民が酷く余所余所しい。そして、妙に荒んだ雰囲気が町中に漂っている。
専門的な店はなくて、家業を営む住民から必要なものを直接買い付けるようだ。宿屋もなくて、部屋の余っている家に泊めて貰うのだと言う。
とは言え……不意に現れた余所者は警戒されて、泊めてくれる家はなかった。
「教会があるそうだから、そっちへ行ってみようか」
まるで腫れ物に触るかのような態度の住民と、買い物の交渉をしながら「町外れに教会がある」のを聞き出せた。教会なら、旅人の扱いにも慣れているはずだ。
町は荒んだ印象だったが、教会の周りは活気があった。
修道女一人が切り盛りしている小さな教会だが、その修道女が美人なのだ。町の男どもが、率先して教会周りの草刈りやら雑用やらを引き受けているらしい。
……男どもが美人に弱いのは、どこでも一緒である。
「まあ。それでしたら、礼拝堂で一晩身体を休めて下さい」
大まかな事情を話すと、修道女は礼拝堂の一画を一晩使わせてくれると言う。
礼拝堂……祭壇こそあるが、長く祭事や祈祷が行われている様子はなかった。簡易的な間仕切り壁で小さな区画を作って、そこにやはり簡易に作られた寝台が並べられている。寝台には怪我人や病人が横たわり、それに付きそう人もいる。
戦場で、怪我人を収容するテントでの光景に似ていた。しかし、こちらの方がずっと小綺麗だ。
「ちょっとした病院だね」
わたしとノアールには、祭壇の脇の狭い場所が与えられる。二人が横になるギリギリの幅で寝台もない。
「申し訳ありません。寝台は、怪我や病気の方を優先させたいのです」
洗濯された毛布を差し出しながら、美人の修道女は、申し訳なさそうに頭を下げた。




