【ラゲルナの厄日】第10話 旅立ちと誓い
二日後に行われた野盗討伐は、ほどほどの成果を上げる。
代官屋敷から出陣する討伐隊を怖れた野盗連中は、半数以上が逃げ出してしまい、森のアジトに残っていた頭目とその取り巻きは騎士団にあっさりと捕らえれた。
新たに騎士団長となったグレイドミー卿の長男は、初陣を勝利で飾った。
「逃げ延びた野盗どもが、再び体勢を整えて戻ってくることも考えられるからな。騎士団も鍛錬を怠らないようにせねばならない」
グレイドミー卿の長男は、騎士団長と言ってもお飾りである。新しい騎士団長の勝利を喜びつつも、実質的に騎士団を統括する立場にある副団長は、警戒を続けるつもりのようだ。
しかし、わたしとノアールはもうすぐこの地を去るのだからどうでもいい。
「捕らえられた野盗どもが妙なことを言っている。数日前にフラリと現れた二人の魔法使いに、魔法の呪具や呪符を奪われたそうだ。その者達には炎の呪具を放っても、弾が勝手に曲がってしまい当たらなかったとか……それで、魔法使いが皆逃げ出してしまい、魔法で罠を仕掛けることができなくなったそうだ」
「そうかい。じゃあ、討伐隊は良い頃合いで野盗と戦えたね」
傭兵としての報酬を受け取って、これで今回の契約は終わった。後は、八百長の金貨5枚だ。
「それでは、約束の金貨5枚だ」
そう言って、副団長は両替商の証文を差し出した。受取人には、わたしの名前が書かれている。
「え?」
この証文を両替商に持って行き、わたしの身分を証明すれば金貨5枚を受け取れる。しかし……その両替商が、ヤクトの町の両替商なのだ。
「……」
わたしとノアールは、事情があってヤクトの町の魔法使いに招待を受けている。しかし、面倒だから断っているのだ。
大した荷物はないが、それをまとめると直ぐに代官屋敷を後にする。少女のメイドが、屋敷の門の前で、わたしたちが見えなくなるまで見送ってくれた。
ノアールが、何度も振り返って少女の姿を確認している。あの少女のことが、本当に気に入ったらしい。そんなノアールにお構いなしに、わたしは足早に歩く。
一刻も早く、代官屋敷から離れたかった。
もしかしたら。
今回のわたしは、グレイドミー卿か副団長の掌の上で転がされていたのかも知れない。
⋯⋯ヤクトの町へ向かせようと。
そう考えたら、金貨5枚で浮かれ気味になっていたのが恥ずかしい。恥ずかしくて火照った顔を、足早に歩くことで少しでも冷やしたかった。
「もう絶対にツケにはしないからな。現金払いで取り立ててやる!」
せめて、それだけを固く心に誓う!
Ep ラゲルナの厄日 -終-




