【ラゲルナの厄日】第9話 奇襲
契約を終えて、お屋敷で用意してくれた部屋に戻る。少女のメイドが丁寧に頭を下げて部屋を出て行く。
それを待って、わたしは革鎧とサーコートを身に付けた。
ノアールに空間を繋いで貰って、屋敷の外へ転移……それからノアールと共に、野盗どもが巣くっていると言う街道沿いの森へ向かう。
森の端から少し入ると、人相の悪い連中が、先端を尖らせた丸太を組み上げて馬防柵を作っている最中だった。
「やっぱり、代官の討伐隊の話は筒抜けだったね」
この馬防柵で、騎士の馬を足止めして、徒歩で近づいて来る討伐隊に罠を仕掛ける作戦だろう。
「何だ、てめぇは?」
問われたが、面倒だから返事はしない。必要もないし。取り敢えず、人相の悪い3人を海賊の剣で叩き伏せる。腕か足の骨でも折れてくれればちょうど良い。
そこから奥に進むと、落とし穴を掘っている奴らがいた。其奴らにも痛い目にあって貰って、更に進む。
野盗は30人と言っていたっけ?
明後日の討伐隊に備えるために、アジト周辺に広く罠を仕掛けようと分散しているようだ。おかげで、一度に相手にする人数が少なくて楽だ。
「アジトには魔法使いもいるかも知れないね。魔法使いは、ノアールの好きにして構わないよ」
「はい!」
餌にありつけるかも知れないと期待したのか、ノアールは元気に返事をする。
野盗に身を落とすような魔法使いが持っている呪符は大したものではない。何か、騙してしまったような気がして後ろめたいな。
大きめの木樵小屋を中心に、軍用テントが4基ほど張ってあった。これが野盗どものアジトだな。
「何だ、てめぇら?」
木樵小屋から出てきた一際人相の悪い大男が、わたしとノアールに気付いて声を上げる。更に大声を上げて、手下を呼び集めた。
直ぐに集まったのは6人くらいか。末端の手下は罠や馬防柵を仕掛けに散らばっているから、集まるにも時間がかかるだろう。
……バーン!
……バーン!
……バーン!
筒状の炎の弾を撃ち出す呪具だ。6人のうち3人は魔法使いらしい。
「何だぁぁ!」
3人が放った炎の弾は、わたしの身体を避けて軌道を変えてしまう。方向を変えた炎の弾は、テントの一基に飛び込んで炎を上げた。
土妖精から貰った火蜥蜴の鱗を編み込んだサーコートがあるから、火の魔法は気にしなくていい。
ノアールが、魔法使いの傍へ転移して行った。後は、任せよう……できれば、逆らわないでくれれば余計な死人を出さないで済むのだが。
そして。
わたしは、海賊の剣を肩に担いで、一際人相の悪い大男に向かって歩き出す。




