【ラゲルナの厄日】第6話 腕試し?
晩餐会の翌日、代官屋敷の兵舎に案内された。
グレイドミー卿の騎士団で副団長を務める騎士が、野盗討伐隊の募集に集まる傭兵や冒険者の対応していると言うことだった。
令嬢専属らしい少女のメイドが、副団長にグレイドミー卿からの書簡を渡す。代官直々の推薦なら、直ぐに話がつくかと思っていたら……副団長は、なかなか納得しない。
「グレイドミー卿とエミリーお嬢様に取り入るのが上手なのはわかった。しかし、本当に腕は立つのか?」
この副団長は、わたしが野盗から令嬢の馬車を助けた時に、遅れて救出に来た5人の騎士の中にいたらしい。
わたしが倒したのは本当のところは野盗6人のうち2人……それを昨日の晩餐会では「10人の野盗を一人で全滅させた」ことになっていた。あの、過剰な宣伝が気に入らないと言う。
奇遇だな、わたしだって実はそう思ってる。
「あんたの腕を見せて貰いたい」
副団長は、左手で腰のロングソードを持ち上げて見せる。要するに、実際に剣で立ち合って「腕を試したい」と言うことだ。
「お嬢様を疑うなんて、不敬ですよ!」
少女のメイドが、声を荒げて抗議してくれた。
普段なら「腕を見せろ」と言われても相手にしないのだが、今回の状況なら副団長が納得しきれないのもわかるな。
「わたしは不器用だから、手加減できないよ。それでいいのかい?」
副団長の顔には薄ら笑いが浮かう。そして、わたしの言葉に頷く。互いの剣は鞘に納めたままで仕合うことで、大事には至らないように配慮した。
わたしと副団長が模擬戦で仕合うとなったら、あっと言う間に騎士団の騎士たちが見物に集まってきた。更に野盗討伐に参加する傭兵や冒険者や代官屋敷の使用人も混じっている。
「皆さん、どうされたんですか?」
人の話を聞いていないノアールは、人々が集まる理由を理解してない。集まった見物人は騎士や傭兵が多い……念のため、カン違いしないように「手を出すな」と釘を刺しておく。
「どこからでも、かかって来い」
副団長は、鞘を固定したロングソードを身体の正面で構える。
かなり大柄な男で、右腕の筋肉が固く鍛えられている。おそらく左腕に盾を持って、右の片手で剣を振るうのが基本のスタイルなのだろう。
鞘に収まった海賊の剣を右肩に担いで、わたしは副団長との距離を詰める。
真っ直ぐに突き出される剣先は素早く鋭い。副団長の剣の腕はなかなかのようだ。しかし、申し訳ないが、わたしの敵ではない。
振り下ろす海賊の剣が、突き出されるロングソードを弾き、それを握る副団長の右手を痺れさせる。




