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異形の美女と道連れとなって、神々の忘れ物を拾い集めます  作者: 星羽昴
Ep:ラゲルナの厄日

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【ラゲルナの厄日】第5話 賞賛の歌?

 晩餐会には、上等なワインが振る舞われているらしい。グレイドミー卿は、北方から出来の良い新酒を取り寄せたと自慢げに語っている。招かれた客人たちも、食事をほどほどにワインを酌み交わして会話を楽しみ始めた。

 それを見計らうように、大広間に竪琴の演奏が流れる。そして、良く通る高い男の声での歌が歌われた。

(ああ、吟遊詩人を呼んでいたのか)

 吟遊詩人は、美しい声で軽やかに歌う。


 ……街道を進む馬車、それに乗るお姫様

 ……迫り来る盗賊

 ……取り囲まれる馬車、脅えるお姫様


 わたしとしては酒を飲むつもりもないし、余所者で共通の話題もないから客人たちの会話にも加われない。音楽とやらにも興味はないから、肉を頬ばることに専念する。


 ……お姫様を守る従者が、盗賊の剣に倒れる

 ……お姫様の恐怖と絶望、しかし次の瞬間

 ……大剣を持つ女戦士が盗賊の前に現れる

 ……選択肢は二つ

 ……このまま立ち去るか、痛い思いをしてから立ち去るか


 盗賊相手につまらない選択を突き付ける奴がいるものだと呆れるが、何となく聞き覚えがある科白な気がした。あれ?


 ……馬車とそれに乗るお姫様を逃がす女戦士

 ……そして、大剣を振るう女戦士

 ……倒される盗賊

 ……颯爽と立ち去る女戦士

 ……お姫様の使者が、女戦士を追う

 ……そして礼として屋敷に招く


 相当に脚色されていたが、令嬢を助けたわたしのことを歌っている。令嬢の馬車は、その場から逃げた後だから、盗賊との戦いは誰も見ていない。壮絶な戦いは、丸ごと創作フィクションである。


「おお!」


「なんと、お強い!」


「一人で盗賊を全滅させるとは!」


 晩餐会の客人たちの視線が、わたしに集まる。皆の感嘆の声や絶賛は、歌った吟遊詩人ではなくわたしの方へ投げられた。


「……」


 酒を飲んだわけでもないのに、顔が熱くなる。集まる視線に居たたまれない、一刻も早くこの場を離れたくなる。

 野盗討伐の出陣式を兼ねた晩餐会だから、戦勝を予言する歌を歌うつもりだったはずだ。それを急遽、わたしの強さを称える歌に変更してくれたのだろう。グレイドミー卿あるいは令嬢の、わたしへの感謝と持て成しだろうが……そう言う気遣いに慣れていないから逆に重苦しい。


「顔が赤いです。大丈夫ですか?」


 相変わらず、他人ひとの話を聞かないノアールはいつも通りだ。吟遊詩人の歌も聴いていなかっただろうし、客人たちの視線も全く意に介していない。

 こう言う時には、ノアールの飄々とした笑顔は救いだな。

 ノアールの傍にいた少女のメイドが、顔を赤らめているわたしに気付いて、水を持って来てくれた。

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