【拾い集めるモノ】第28話 約束?
光の檻の中にいるノアールは、天まで伸びる光の柱とその間に張り巡らされた光の模様を珍しそうに観察している。その様子を、男は「自身を閉じ込めた凄い魔法に感心している」と解釈しているようだ。
「た、対等な取引を致しましょう。あ……貴女お二人が、我が師匠の元へ来訪下さると約束して頂ければ……わ、私はこの魔法を解きましょう。そうでなければ……私は、この場にあって魔法の檻を発動し続ける覚悟です!」
無理矢理に「対等な取引」とか言い出すあたりに、必死にプライドを保とうとする強い意思を感じてしまった。
それと、師匠に対する忠誠心も本物か。優先順位は、一段低い気はしたが……。
「そうかい。じゃあ、頑張っておくれ」
「……は?」
わたしの応援の言葉に、男は、両腕の痛みを忘れたかのような頓狂な声を漏らした。
「ノアール、帰るよ」
「はい」
返事と共に、ノアールは空間を繋いでわたしの傍に転移して来る。
「……?」
男は呆けた顔で、空になった光の檻と外で荷物を担ぐノアールを交互に見比べる。本当に「何が起こったのか」を理解できていない顔だ。魔法陣の細工なしで好き勝手に空間を転移できる力は、古の魔法にもないだろうからな。
「仕立屋さんのお店にあったカーテンの刺繍に似た模様でしたが、ずっと粗雑な形でした。仕立屋さんの刺繍の方が、ずっと綺麗です」
ノアールは少し残念そうに言う。男は、古の魔法で「ノアールを閉じ込めた」つもりだったようだが、当のノアールは、光の柱の間にできた模様を面白がっていただけらしい。
男の両腕は動かないから、今なら背中を見せても大丈夫だろう。海賊の剣を鞘に納めて、わたしはノアールと歩き出す。
「お……お待ち下さい!」
動かない両腕をダラリと下げたまま、男は立ち上がって、わたしとノアールをヨロヨロと追いかけて来る。見上げたしつこさだが、マジでウザい。
振り返って、嫌味を言ってやることにする。
「あんたは、あの場所を動かないじゃなかったのかい?」
「わ……私は、お二人を師匠の元へお連れするのを使命と心得ます。言葉の揚げ足取りは、止めて頂きたい!」
ああ、そうか。
……ボクッ!
今度は手加減なしでぶん殴ったから、男の身体は結構吹っ飛んだ。仰向けに倒れたまま動かないから、気絶したのだろう。
男の身体は、ちょうど光の檻の傍に転がってる。わざわざ「ここを動かない」と宣言したのだから、あの辺りにあるなら調度良かろう。
「全く……ヤクトの町の魔法使いと言うのは、自分の約束すら一人じゃ果たせないのかね」




