【拾い集めるモノ】第25話 密かな監視役
わたしの右手が海賊の剣の柄に伸びるのに気付いた旅人風の男は、両の手の平を前に向けて制する仕草をする。
「お待ち下さい。私は、お二人と争う意思はありません」
構わず、わたしは海賊の剣を引き抜く。不意打ちに失敗して居所がバレたら、そう言うしかないだろう……警戒を解かないわたしに、レグラスと名乗った男は、切なそうな顔になる。
「私は、我が師匠よりスネート様を監視する命を受けていました。そして、もしもスネート様が道を誤った際には、大事に至らぬうちに事態を収拾し、スネート様を止める役目を仰せつかっておりました。必要とあれば、スネート様の命を奪ってでも『息子に道を間違えさせてはならない』と師匠に言い含められてこの地へ参った次第です」
その言葉が本当であれば、その師匠とやらはマトモな感覚を持っているようだ。そして、嘘であるなら「わたしの油断を誘いたい」のが見え見えだな。
「カルロと言う魔法使いの噂は、師匠の耳にも入っておりました。バルドリック商会が妙に使い勝手の良い呪具を扱うようになったことで、それを造る魔法使いのことがヤクトの町でも注目されていたのです」
そう言えば、イカサマ魔法使いは「自分の作った呪具は、評判がいい」と自慢していたな。
「そんな折り……師匠の元に、エロイーズより『拾い集めるモノと遭遇した』との報告がありました。拾い集めるモノは、我ら魔法に関わる者にとっては特別な存在です」
それで、わたしとノアールの足取りを調べさせたか。まあ、辺境伯様の相談役を務める大魔法使いが号令をかけたら、直ぐに情報は集まっただろうな。
「ナザレの町での子供の行方不明事件に『拾い集めるモノ』が関わり、カルロを追いかけているとわかりました。ですのでナザレの町に、師匠自ら出向く手筈を整えたのです。それが出発直前に、不幸な事故で脚を痛めてしまいました」
不幸な……の部分を、男は妙に強調する言い方をした。事故とは思っていなさそうだな。
「実は……カルロは、師匠の魔法工房に『自身を売り込む』書面を送っていたのです。邪な魔法を探求する者など、師匠は相手にしません。しかし、その魔法にスネート様は興味を抱かれました。スネート様は、師匠とは全く別の思惑を持って、このナザレの町に繰り出して来たのです」
その言葉通りなら、不肖の息子とイカサマ魔法使いはまだ接触していないことになるな。
「師匠は私に、密かにスネート様を追うよう命ぜられました。そして、先の言葉を託されたのです」




