【拾い集めるモノ】第21話 そして……追跡
一度でも、魔の依代となったモノは憑依されやすくなる。腐敗しなくなった子供達の遺体をこのまま埋葬したら、魔が濃くなれば再び魔物と化す可能性もある。埋葬するにも、魔法での処理が必要だった。
ノアールが、子供の遺体を「焼き尽くして灰にする」ようログールに進言したのは、子供達が再び魔物とならないようにするためだろう。
スネートが、ノアールに使った魔法は「失われた古の魔法」らしく、呪符があってもナザレの町の魔法使いの知識では発動させることはできなかった。然るべき知識を習得したエロイーズが協力してくれて、ようやく子供達の遺体を焼くことができた。
灰となった子供達を棺に戻して、それをログールの仲間たちが町の墓地に運んでいく。
ノアールは、それを見送っていた。
「優しいところもあるのね」
エロイーズが呟く。小さな声のはずだが、わたしの耳が「甲高い声」に敏感になっているせいか非情によく聞こえてしまう。
「あれでも、ノアールは意外に子供好きなんだよ。子供を魔物にしたくなかったのだろう」
「スネートも、まだ子供だったわ」
その言葉に、わたしの全身の血が沸騰しそうになる。海賊の剣を鞘に納めたまま、横薙ぎに振るった。海賊の剣は、エロイーズの腹部にモロに当たり、その身体を弾き飛ばした。
地面に転がったエロイーズは、腹部を押さえてゴホゴホと咳き込んでいる。
「今この場でケリをつけようじゃないか。あんたは、弟弟子の敵討ちのため。わたしは、先に遺恨を引き摺らないためだ」
海賊の剣を抜こうとするわたしの右手に白い靄が纏わり付いていた。背筋が冷たくなり指が強ばる……剣の柄が握れない。
「待ってくれ!」
異変に気付いたログールが駆け付けて来る。わたしの直ぐ傍にはノアールも現れる……空間を繋いで、転移して来てくれた。
「エロイーズのおかげで子供達を埋葬できたし、あんた達も町にとっては恩人だ。恩人同士が、争うのを見たくない」
ログールに諭されたわたしは、地面にへたり込んだままのエロイーズを見た。わたしの視線に気付いたエロイーズが小さく頭を下げる。
「……ごめんなさい」
辺境伯領で一番の魔法使いと言えど、その息子が「子供を魔物に造り変える邪な魔法」に手を染めたとなれば名声は地に堕ちる。今のエロイーズは、師匠の名声を「人質」に取られたような状態かも知れない。
「あたし、カルロと言う魔法使いを追いかけるわ。そいつが、スネートを狂わせたんだもの……絶対、許さない」
蹌踉めきながら立ち上がったエロイーズは、ボソリと言った。




