【拾い集めるモノ】第20話 全滅の報告
「お願い! あの娘を止めて!」
エロイーズが、わたしの腕を掴んでいた。
「子供の遺体は返すわ。二度と貴女たちには、手を出さない。スネートは、あたしが必ず説得するから!」
できもしない空約束だ。エロイーズにスネートを説得できるのなら、最初からこうなっていない。
ああ言う輩は、後々まで根に持って必ず禍根を残す。わたしやノアールに手を出せなければ、一番弱いナザレの町に嫌がらせをするだろう。
「ノアール! お願い!」
わたしが動かないと諦めて、エロイーズは駆け出した。蹲るスネートの背中に覆い被さり、庇おうとする。
……無意味なことする。
ノアールは、人の命に価値を見出さない。庇おうとするエロイーズごと、引き裂かれるだけだ。
「お願い! スネートに、改心するチャンスをちょうだい!」
黙したまま、ノアールが右の鉤爪を持ち上げる。そして、振り下ろす。
刹那。ログールが飛び出して、エロイーズを抱きかかえた。エロイーズの身体をスネートから引き剥がして紙一重で飛び退ける。
……グシャ!
ノアールの鉤爪は、ログールの肩を掠めてスネートの頭蓋を砕いた。スネートの頭部は、樹から地面に落ちた果実のように赤い液体と肉片を撒き散らす。ログールの腕から這い出たエロイーズは、地面に飛び散る赤いシミの前で呆然となった。
捜査団は、森に巣くった強力な魔物と遭遇して、激しい戦いの末に相打ちとなり全滅……とヤクトの町には報告することになった。
ただ一人の生存者エロイーズによって。
「師匠の息子の仇討ちがしたいのなら、わたしとノアールだけを狙いな。ログールは、アンタの命の恩人なんだ。間違っても、ログールやナザレの町を逆恨みするんじゃないよ」
エロイーズは、目を伏せたままで返事はしない。
人を魔物に造り変える邪な魔法に手を出す……そんな行為は、人としても魔法使いとしても道を外れている。それを表沙汰にしないために、口裏を合わせることには同意したのである。
しかし。
目の前で弟弟子を殺された心情は、また別なはずだ。
捜査団が使っていた6頭立ての馬車の中を探っていたノアールが戻ってきた。
「これを」
馬車の中で見つけてきたらしい木製の呪符を、ログールに渡す。
「これは?」
呪符を渡されたログールは、怪訝な顔をする。わたしも、ノアールが他人に話しかけたことに驚いている。
「これは、先ほど妾の身体を焼いた呪符です。この魔法なら、腐敗しなくなった子供達の遺体も焼き尽くせるでしょう。お墓には、その灰を葬ってあげて下さい」
その言葉に、ログールは深く頭を下げた。




