【拾い集めるモノ】第18話 じゃあ、任せるよ
エロイーズの制止の声は有り難いが、もう遅い。心の傷を抉られて穏便に済ませられるほど、わたしは優しくない。
「この人達の相手は、妾がいたします」
わたしの変調を察したノアールが、前に出てくれた。
「ちょっとぉ! それじゃ、主旨が違うでしょう。ノアールさん、貴女のパートナーとしてラゲルナが相応しいかどうかを試そうって言ってるんだよ。わかってる?」
スネートが、抗議の声を上げる。しかし、そんな抗議に意味はない。
「じゃあ、任せるよ」
「はい」
涼やかな声で返事をすると、ノアールは剣を抜いている五人のうちの一人の方へ歩き出した。黒いローブから猛禽類の如き鉤爪の右手が覗く。
一歩か二歩の距離に近づいて来たノアールに、騎士は困惑する。
「あんたの相手をする命令は受けてない。下がっていろ」
「では、おとなしく死んで下さい」
ノアールの鉤爪の右手が、騎士の顔面に伸び、それを握り潰した。バクンと言う湿った破裂音と共に赤い血と飛び散る。
「!」
その場にいた全員が驚愕し、言葉を失う。振り返ったノアールは、スネートを真っ直ぐに見つめた。
「おぉぉぉ!」
「やあ!」
主人であるスネートの身の危険を察した4人の騎士が、一斉にノアールに斬り掛かる。しかし、次の瞬間、視界に映る景色はモザイクのようにズレる。そして白く発光した後には、空間と共に引き千切られた4体の死体が地面に転がっていた。
「な、何をしたんだ?」
魔法の天才少年も、ノアールの出鱈目過ぎる能力は想像できないようだ。しかし、その顔にはまだ余裕の色がある。
スネートに向かって、ゆっくりとノアールは歩き出す。対してスネートも、仁王立ちで待ち構える。
「面白い芸を見せてくれたね。『拾い集めるモノ』の能力も興味深い。その魔法も研究させて貰う」
さすがに、語尾を伸ばして他人を小馬鹿にする余裕はなくなか。虚勢は張っているが、緊張しているのが丸わかりだ。
「それ以上、近づくな。痛い目をみることになるよ」
そう言うと、スネートはローブの懐から木製の呪符を取り出した。その呪符を見たエロイーズの顔が強張った。
「その呪符は……ノアール、止まって!」
無理だろ。他人の話を聞かないノアールが、止まるわけがない。
「ちっ!」
そのまま歩いて来るノアールに向かって、スネートは呪符を投げた。地面に落ちた呪符は雷光のような光を発し、その後に地面が大きく揺れ出した。
ノアールの足下の地面が裂けて、その亀裂の中から青白い炎が吹き上がってノアールを包む。




