【拾い集めるモノ】第17話 心の傷
「盾の乙女のラゲルナ。元々は北の海賊の女戦士で、故郷を出てからレイドリク伯の元に身を寄せていたよね。女魔法使いと旅に出たとの噂だけど、それが『拾い集めるモノ』だったわけだ」
ほう? わたしのことも調べてるのか。
「最近ではトレールの町で魔鯰、フェルトの町で魔狼や魔蝙蝠を退治してる。その、退治した魔物はどうしたのかな?」
ノアールが『海の幸』と『山の幸』のつもりで喰らったな。しかし、それを教える前に話を付けないとならないことがある。
「ログールに、子供の遺体を引き渡してもらう。話は、それからだ」
「それはできないって言っただろう。黙って、こちらの指示に従って貰う。……でないと、大変な目に遭うよ」
不肖の息子様は、わたしの顔を目ね上げながらニタリと笑った。
「君たちは流れ者だから、余所へ行けば良いかも知れない。けど、ログールだっけ? ナザレの町は、辺境伯様の不興をかったら大変だよねぇ」
ログールの顔が歪む。そんなログールの方を見て、不肖の息子様は、面白そうにクスクスと笑っていやがる。
「何をしろって言うんだい?」
取り敢えず、コイツに喋らせよう。その隙を突いて、首根っこを押さえつけてから交渉だな。
「君たちには、魔を集めて貰う。カルロは非情に独特な魔法を開発したようだけど、それを実現させるにはもの凄い量の魔が必要なんだ。『拾い集めるモノ』なら、簡単に集められるだろう」
喋らせている間に距離を詰める……つもりだったが、わたしの敵意を感じた護衛の騎士が、間に割り込んで来やがった。
不肖の息子様は、口角を吊り上げて馬鹿にするように舌を出す。
「冒険者としては腕が立つのだろうけどね、辺境伯様直属の騎士相手じゃ勝てないさ。物騒なことは考えない方がいいよ」
5人の護衛の騎士は、わたしの周囲を囲んでいた。不肖の息子様を捕らえようとした分、出遅れてしまったか。
「あのね。『拾い集めるモノ』のパートナーは、君である必要はないんだ。君よりもっと剣の腕が立って、魔法の知識を備えた者はいくらでもいるんだよ」
仕方ない、面倒な交渉と割り切ろう。わたしが海賊の剣に手をかけると、護衛の騎士達も一斉に剣を抜く。
「スネート! いい加減にしなさい。みんなも剣を納めて!」
エロイーズの、ガラスを鉄の剣で引っ掻くような甲高い声が響く。
「大丈夫だって、エロイーズ。ラゲルナはね、北の地でのトラウマを引き摺ってるから『人は殺せない』んだよ」
その言葉に、わたしの身体で全身の血が逆流した。そして、わたしの周囲に白い靄が纏わり付く。




