【拾い集めるモノ】第16話 腐敗したもの
近くで見ると「不肖の息子」様は、もう少し年下に感じられた。身長がやや低いせいで、そう見えるのか……精神年齢のせいで、そう見えるのか。
「それで。集めた魔は、どうしてるの?」
「?」
何を訊かれたのか、その意味がわからない。わたしが返事をしないことに、不肖の息子は露骨に顔を顰める。仕方なく、エロイーズの方を見て小首を傾げて見せた。
「スネート。ラゲルナは、魔法使いじゃないの。口伝の詳細も知らないし、魔法使いの取り決めも知らないのよ」
「はあ……そんなことも知らずに『拾い集めるモノ』の相棒やってるの? 面倒だなぁ、エロイーズが説明してやりなよ」
そう言うと……不肖の息子様は、手を頭の後ろで組み馬車の方へ戻っていった。馬車の側で、護衛の騎士達と何やら話し合いを始める。
わたしの傍には、エロイーズが来て申し訳なさそうな顔で近づいて来る。エロイーズが説明とやらをする前に、わたしの方が確認したいことがあった。
「この捜査団は、ナザレの町で子供が行方不明になった事件を調べに来たんじゃないのかい?」
「……」
「犯人のイカサマ魔法使いを捕まえてくれるんだよね?」
「カルロの行方は、必ず捜すわ」
そこにログールが、割って入ってきた。
「子供たちの遺体を捜査団が回収したと聞いている。その遺体を、引き取らせてくれ。この町の墓に葬ってやりたいんだ」
「ごめん、それはできないの」
「どうして!」
ログールの声に怒気が籠もった。エロイーズは、顔を伏せて黙ってしまう。
「ああ、もう! まどろっこしいなぁ!」
不肖の息子様が、エロイーズを押しのけてログールの前に立った。
「あの子供達は随分前に死んでいるはずなんだ。けれども、遺体は全く腐敗していない。おそらく、魔物化したせいだと思うんだけどね」
不肖の息子様は、半笑いを浮かべている。妙に嬉しそうに見えるのは、わたしの気のせいか。
「人を魔物に造り変える魔法なんて、画期的だよ。今までの魔法の概念を、根底から創り変えるかも知れない。あの遺体は、その貴重なサンプルなんだ。誰にも渡せないよ。まして、墓に葬ろうなんて馬鹿者にはね」
唖然とするログールを捨て置いて、不肖の息子様はわたしの方へ向き直った。
「子供の行方不明なんかで、ヤクトの町から捜査団が来るわけないだろう。尋常ではない呪具を作るカルロと言う魔法使いを調べるのが目的だよ。ついでに、エロイーズが報告してきた『拾い集めるモノ』が関わってるのも都合良かったしね」
子供の遺体は腐らないようだが、コイツの性根は腐りきっているな。




