【拾い集めるモノ】第13話 師匠の息子
「エロイーズさんのお師匠の容態は、大丈夫なのか?」
ログールは、倒れたと言う師匠のことをエロイーズに確認した。
「え? ええ、大丈夫みたい。手紙は、お師匠様の字で『行けなくなった』ことを謝罪する内容だったから。自分で、手紙を書けるくらいには回復したと思うわ」
「そうか、それは良かったな」
「ありがと……」
ログールの気遣いに、エロイーズが礼はぎこちなく頭を下げる。意外な気遣いだったらしく、エロイーズは困惑と同時に恐縮してしまったようだ。
顔を上げてから、エロイーズは少し息を詰まらせた。師匠のことを思い出して、改めて心配は込み上げてきたのかも知れない。
「スネートは、お師匠様の一人息子なのよ。でも、お師匠様は自分の後継者としては認めてないの」
エロイーズにとっては弟弟子となるらしい。
その、姉弟子のエロイーズが、更に「師匠の息子」であるにも関わらず「大変だ」と大騒ぎするような人物と言うことらしい。
「魔法使いとしての才能はズバ抜けているのは間違いないわ。もう、あたしよりずっと高度な技や術を身に付けてるかも知れない。でも、何と言うか……スゴく我が儘なのよ」
エロイーズが我が儘と言うなら、相当だろうな。立派な魔法使いの息子と言うことで、周囲からチヤホヤされて天狗になってしまったのか。
「お師匠様の工房には、古の呪具や呪符も沢山あるの。スネートは、それも上手に使いこなすわ。魔法の才能を鼻にかける面もあるにはあったけど……本当の意味で解明できていない古の魔法を『使い方を知っている』だけで、さも自分の力のようにひけらかしたり……」
どこかのイカサマ魔法使いと『友だち』になれそうだと思ってしまった。
「魔法使いが『人を助けるため』に魔法の腕を磨くのを、古くさい因習と馬鹿にしたりして……お師匠様といつも衝突してたわ」
師匠の方は、まともな人らしいな。魔法は上手だが、子育てが下手だったと言うわけか。
「エロイーズさんの師匠と言えば、辺境伯様の相談役でもある。ヤクトの町、いやフェアトレー辺境伯領で一番の魔法使いだ。そのご子息とあっては、周囲の者も諫めるのは難しかったか」
ログールの指摘に、エロイーズが肩をすくめる。師匠の息子だから……と甘やかしてしまった自覚はあるようだ。
要するに。
正義感や道徳心で、動くような人物ではない……と言うことだ。
そんな人物が、自分から志願して乗り込んでくるのは「何かしらの旨味」の匂いを嗅ぎ取ったからと考えるのが自然だな。
捜査団を当てにせず動いたのは、正解だった。




