【拾い集めるモノ】第12話 急変
メモの方は呪具や呪詛を作成するための材料を書き留めたものらしい。他に日用品の注文書らしいものも混じっている。この辺境伯領を代表する大商人に取り入っていたから、必要な物は楽に調達できただろうな。
手紙らしいものを見た魔法使いが、顔色を変えた。
「これは、古代文字だな」
国や地域によって言葉や文字が違う。国や地域同士が外交をするときには、誤解を生じさせないために公用文字で文書を作るのが習わしだ。その時に使われるのが古代文字である。
日常で使われるものではないので、読み書きができる者は限られる。教会の神官や魔法使いなら、古い文献を調べるので教養として身に付ける。それ以外だと、領主の側で外交に関わっている者とかだろう。
「書いてある内容は、時候の挨拶だ。カルロの送った手紙に、儀礼的に返事を返しただけだな。察するところ、自分の技術を売り込もうとしたが、相手からは体よく断られたって感じだろう」
「相手は?」
「署名はあるが、知らない名前だ」
イカサマ魔法使いは、自分の売り込みにも余念がなかったと言うことか。自己顕示欲と承認欲求の塊みたいな奴だったからな。
「この手紙は『残念ながら……』と言う内容だが、中には色よい返事もあったかも知れないな」
「その、色よい返事を返したところが、カルロの逃亡先かも知れないわけか」
途轍もなく朧気だが、イカサマ魔法使いの手がかりが見えてきた気がする。
正直な話、これでヤクトの町の捜査団の到着はどうでもよくなった。
わたしとノアールは、仕立屋に頼んだ緑の服が仕上がるのを待つために町に留まるだけだ。ログール達は、子供たちの遺体を取り返すために、別荘の持ち主である商人と交渉を始めると言う。
元工房の小屋での見張りを中止して3日。そろそろヤクトの町からの捜査団も到着する頃だが、その前にエロイーズが騒ぎ出す。
再び冒険者たちがギルドに集められて、わたしとノアールも駆り出されてしまう。
「大変なのよ!」
あの、甲高い声がギルドに響き渡る。
「はあ、はあ」
急いで駆け込んできたのか、息を切らせている。そのせいか少しだけ、声のトーンが低い。ずっと息を切らせてくれていれば有り難いと思う。
「お師匠様が……ヤクトの町で倒れたそうなの。それで、スネートが捜査団のリーダーとしてやって来るんだって」
エロイーズのもとへ、急ぎの連絡が入ったそうだ。スネートと言うのは、エロイーズの師匠の息子で「父親に代わって、リーダー役を買って出た」のだそうだが……どうやら性格に問題がある人物だと言う。




