【拾い集めるモノ】第10話 疑惑
エロイーズが「お師匠様の立派な人格」について、必死に説明しようにも、ギルドに立ち込めた嫌な空気は拭えない。
「何かあったのなら、エロイーズさんのところには連絡があるかも知れない。内密な話かも知れないが、差し支えのない範囲で、俺たちにも情報をくれないか」
ログールからそう言われたエロイーズは「あるかも知れない連絡」のために急いで宿へ戻ることにする。
……ログールの、この場からエロイーズを遠ざける方便だな。どうやらログールも、捜査団とやらに不信を抱いていたようだ。
ギルドには、わたしとノアール、それとログールと彼と親しい二人の剣使いと魔法使いが残っていた。ちょうど、最初に小屋の見張りに行ったメンバーだ。
「これじゃあ、カルロの奴が逃げる時間を稼いでいるようなものじゃないか」
カルロと言うのが、イカサマ魔法使いの名前だったな。
「もしかしたら、捜査団とカルロが裏で繋がってるのかも知れないな」
わたしもそんな気がする。疑惑の方向は、みな一緒だ。
現実として、イカサマ魔法使いには『取引』に使える手札があるのだ。
……人の死体を依代にして新しい魔物を造る魔法。
……巨大な石人形を造る魔法。
どちらも「もし本当なら、魔法の新境地を開く」ような凄い技術だと、その場にいた魔法使いは感嘆する。
だが、一方で。
「何の為の魔法だよ。魔法使いは、人を魔物から守るために技と技術を磨いてきたんだ。人を魔物に造り変えるなんて、絶対に許せねえ!」
魔法使いは、大声で怒りを露わにする。ログールと剣使いも黙って頷いた。
おそらく……その「新境地を開く」魔法を実現させるには、膨大な魔力が必要なはずだ。普通の魔法使いには、そんな魔力を集める術はない。
しかし、イカサマ魔法使いは膨大な魔力を供給できる『魔石』を持っているかも知れないのだ。
「魔物にできるのは、おそらく子供だけです」
「え?」
いつも他人の話を聞いていないノアールが、自分から会話に割り込んできた。
「子供の身体は、大人の身体よりも魔に馴染みやすいのです。その性質を利用するために、子供を使ったのだと思います」
ノアールにとっては、神の領域の魔法さえ生活の知恵だ。しかし、それを他人に対して口にすることは滅多にない。この町で緑の服を注文できたから、機嫌が良いのか。
「冗談じゃないぞ。もし、捜査団とカルロが裏取引して手を結んだら……辺境伯領のあちこちで子供が犠牲になるかも知れないじゃないか」
まるで、歯ぎしりの音が聞こえてきそうなくらいに、ログール達の顔が歪む。




