【拾い集めるモノ】第9話 労働に対する報酬
二回目の小屋の見張り当番。
正直に言うと、わたしはヤクト町から来ると言う捜査官に不信を抱いている。さっさと小屋を家捜しして、悪事の証拠を押さえるのが先決ではないか。家捜しを遅らせるのは、イカサマ魔術師が逃亡するのに時間を与えるようなものではないか。
捜査団を率いるのは、エロイーズの師匠に当たる魔法使いだったっけ。
師匠と言うのが、どんな人物か訊いてみたい気もするが……あの甲高い声を、わざわざ耳元で聴く気になれない。後で、ログールに相談しよう。
エロイーズは、この日も遠足気分で手の込んだ昼食を作っていた。
ノアールに至っては、飽きて完全にやる気を失っている。魔狼を見つけても喰らおうとしない。
「あちらに魔狼がいます」
ノアールが見つけた魔狼を、わたしが狩りに行く。この日に二体の魔狼を屠ったのは、わたしの海賊の剣だ。
あっさりと、緑の服を仕立屋に注文したのを後悔していた。
『しっかり魔物を狩ったら、御褒美に服を買ってあげるよ』
……と、この機会に「労働に対する報酬」と言うものを、ノアールに教えるべきだった。
そもそも、ノアールはわたしのことを嫁認定していなかったか。
嫁を養う義務を果たして欲しいぞ。
日没近くに見張りを交代して、町の中心地へ戻る。
交代の時に、ログールからの「ギルドへ寄って欲しい」旨の伝言があった。
「お師匠様たちが到着したのかしら」
エロイーズは、久しぶりの師匠との再会が楽しみの様子だ。
「ああ、そうだといいね」
わたしとしても、こんな中途半端な緊張感を引き摺るのは好きではない。自分から首を突っ込んだとは言え、早くこの町のゴタゴタに決着をつけてしまいたかった。
しかし。
ギルドで、ログールから受けた連絡は「捜査団の到着が、数日遅れる」と言うものだった。
「ええ?」
一番驚いていたのはエロイーズである。
「お師匠様は、約束には特に厳しい方なのよ。今回みたいに、一刻を争うかも知れない事柄に約束の日時を違えるなんて……何かあったのかも知れないわ」
一刻を争うかも知れない事柄……との認識はあったのか?
一方で、ログールの表情はひたすら渋い。捜査団の到着が遅れる間、小屋の見張りを続けないとならないのだ。それだけ冒険者たちのただ働きが続くことになる。
ギルドの方にも通常の依頼が溜まっているはずだ。冒険者なんて、本音は金目当てで危ない仕事をやっている連中がほとんどだ。金になる仕事を後回しにして「ただ働き」を要求するのは無理がある。




