【拾い集めるモノ】第8話 仕立屋
明け方。見張りの交代となって、わたし達は町の中心地に戻った。
町の中心と言っても、田舎町なので特に何もない。呪具の製造で名を馳せるトレールの町に通じる町なので、商人の行き来はある。そんな商人向けに立派な宿屋や飯屋があるだけだ。
わたしとノアールが泊まっているのは安宿だったが、エロイーズは立派な宿にいた。
「貴女たちもこの宿に移りなさいよ。ヤクトの町から来る捜査団で、貴女たちの分の宿代も負担するわ。宿代の心配しなくていいわよ」
冗談ではない。宿に帰ってまで、この甲高い声に責め苛まれるのは御免こうむる。
見張りの合間でも多少は仮眠していたので、宿でも眠くはなかった。一休みして、ノアールと仕立屋へ行くことにする。
ログールからも、その仕立屋は「気難しい年寄りだが、腕は良い」と言われていた。
仕立屋では、布生地を見せて貰った。布生地の扱いがとても丁寧な仕立屋で、緑色の布生地は「あまり求めがない」そうで倉庫の奥から持って来てくれる。
「元の布地があるなら、ちゃんとあてがって色を比べた方がいいよ。布が大きくなると、明るく鮮やかに見えてしまうからね。服にすると違った色味になってしまうよ」
仕立屋の助言に従って、駄目にしたノアールのドレスの布片と比べて近い緑色をさがしてみる。
「腕の良い仕立てだね。この刺繍も綺麗な細工だよ」
仕立屋は、前に仕立ててもらったノアールのマントを見て感心していた。布生地の扱いや謙虚な様子から、わたし達はここにお願いすることにする。
仕立屋に注文を出してから、宿屋に戻る。
わたし達の次の見張り当番は、明日の日の出から日没まで。正直、キツいローテーションだ。ヤクトの町から来る捜査団に、早く到着して貰わないと、このナザレの町の冒険者が疲弊してしまう。
ナザレの町の冒険者は「子供がいなくなった」ことを怪しんで、有志が調査に乗り出しただけで無給なのだ。わたしだって、ノアールの餌は欲しいが報酬なしでやっている。
「明日の朝は早いからね。少し早いけど、休もうか」
夕食は取らないで、もう寝ることにした。
「はい」
緑の服を注文できたので、ノアールは機嫌がいい。服が出来上がるまでは、この町に留まることに文句は言わないだろう。
毛布で身体を包むと、ノアールは壁を背にして床に座り込む。ノアールは寝台では眠らない。こうやって床に座り込み、毛布から左脚を伸ばして眠りにつく。
ノアールの左脚からは、蛇の頭を持つ触手が伸びている。眠りにつく主人を守るように、蛇は周囲に警戒の目を向ける。




