【拾い集めるモノ】第3話 灰色の石
わたしがログールに念を押した灰色の石とは『魔石』のことだ。
魔が封じ込められていて、誰でも魔法を簡単に使えるようになる。イカサマ魔法使いは、魔石を使って「優れた魔法使い」を装っていた。しかし、便利ではあるが魔を撒き散らすために、周囲に魔物が発生しやすくなる。
このナザレの町でも、魔物が大量発生して町の住民を脅かしていた。
工房の中へは踏み込まないことにしても、放っておくわけにはいかない。万が一、イカサマ魔法使いが戻ってくるかも知れないのだ。ログールを筆頭にした冒険者七人が、交代でイカサマ魔法使いの工房を張り込むと言う。
それならば、わたしとノアールもついて行くことにした。
森番小屋を改修した、イカサマ魔法使いの工房は森の入り口近くにある。昼を過ぎた頃に、魔狼と遭遇した。
連携の取れた冒険者は、ログールを筆頭に二人の剣使いと魔法使いが魔狼を取り囲む。
「おぉぉぉ!」
「やあぁぁ!」
魔法使いの呪符で動きを封じられた魔狼に、二人の剣使いが一斉に斬り掛かってトドメを刺す。
魔狼が黒い砂になって崩れてゆく。
魔を喰らうノアールも、今のところ腹が一杯らしく魔狼には関心を示さない。今のノアールが興味を持っているのは、地面から生えた薬草だ。
「アザミやスイバが多い土地ですね。これでは野菜はあまり育たないでしょう」
人外のノアールは、何故か薬草に詳しい。数百年を、森で魔を喰らいながら彷徨ってきた「生活の知恵」である。
「痩せた土地で貧乏な町ってことか。首都のご機嫌取りに必死になるのも仕方ないところだね」
魔狼を屠ったログール達が、こちらへ歩いて来る。
わたしとノアールは戦いには参加せずに、後ろの方で昼食を準備していた。切り刻んだ腸詰め肉を豆と一緒に牛の乳で煮込んでいる。人数が多いから、鍋で煮込む料理の方が手間は少ない。
「もう、煮えたのか。すごく手際が良いんだな」
真ん中に大きめの穴を掘って、左右から斜めに穴を掘り底の方で繋がるようにしておけばいい。大きめの穴で、薪に火をつければ勢いよく燃えてくれる。野宿での簡易的な爐の作り方を知らないログール達は、火の勢いに驚いていた。
「わたしとこの娘は先に食べたから、後は勝手にやっておくれ。次は、わたし達が一回りしてくるよ」
チーズと黒パンの入ったズタ袋を鍋の脇に置いて、わたしとノアールは立ち上がった。
「ああ、頼むよ。何かあったら、これで呼んでくれ」
ログールから笛を受け取ると、わたしはノアールを連れて工房の周囲を見回るために歩き出す。




