【拾い集めるモノ】第2話 ことの始まり
ことの始まりは、ナザレの町だ。
旅の途中で、根性のねじ曲がったイカサマ魔法使いに、わたしとノアールは絡まれた。そのイカサマ魔法使いが「ナザレの町で悪さをしている」との噂があったので、立ち寄ってみたのである。
イカサマ魔法使いが森に構えた工房を『家捜し』すれば、ノアールの餌が手に入るかも知れない。ナザレの町でも、悪事の証拠を押さえたがっていた。
ところが。
「家捜しを待てって、どうしてだよ?」
ナザレの町で冒険者をやっているログールと言う男が、周囲から飛んでくる疑問に顔を顰める。
「ああ。悪事の証拠を押さえるためにも、一刻も早く工房を家捜ししないといけないのはわかってるんだ。だが、ヤクトの町から捜査官が来ると言うんだ。それで町のギルドに対して『捜査官が到着するまで、勝手なことをするな』と命令してきたそうなんだ」
ログールは、このナザレの町の冒険者ではリーダー格である。そのリーダーが、従う方向でいるのだから、他の冒険者もそれには口を噤むしかない。
ヤクトの町は、ここフェアトレー辺境伯領の首都である。辺境伯の領主邸があり、もっとも栄えている裕福な都市だ。ローカルな町の冒険者ギルドとしては、中央のご機嫌を損ねたくないのだろう。
「じゃあ、わたしとノアールだけで家捜しさせて貰うよ。わたしは余所者だがら、この町の冒険者ギルドに義理はないからね」
目的が一緒なら、足並みを揃えよう……と言うことで、ナザレの町の冒険者と一緒に「魔法使いの工房」へ向かう予定だった。しかし、冒険者たちは中央からの命令に従うしかないようなので、わたしは勝手にやるだけだ。
「いや、待ってくれ。アンタらが余所者で、ギルドにも辺境伯にも義理がないのはわかっているんだが……『手を出すな』と指示が来ているのに、黙認はできない。後で『何故、黙って見ていたのか?』と追求される、オレらの立場もわかってくれよ」
「……」
そう言って、ログールはひたすら頭を下げる。余所者で、しかも女二人の流れ者に頭を下げるリーダーの姿に、他の冒険者が目のやり場に困っている。
「ああ、ああ。わかったよ!」
納得はしてないが、頭を下げ続けるログールが面倒になって承諾の返事をした。
「その代わり。念を押しておくけど、灰色の石があったら必ずわたし達に渡して貰うよ」
「それは約束する。あのイカサマ魔法使いの情報を貰った礼だからな」
ログールは、かなり義理堅い男らしい。イカサマ魔法使いのことを知らせに来たことで、わたし達には恩を感じてくれているようだ。




