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異形の美女と道連れとなって、神々の忘れ物を拾い集めます  作者: 星羽昴
Ep:水魔

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【水魔】第5話 正義の味方

 魔鯰ばけナマズが巨大な口を開けた。これは、馬一頭ではなく二頭くらい丸呑みできそうだ。口の中には歯と思えるものはなく、喉の奥が真っ暗な洞穴のようだった。


「ラゲルナ様、離れて下さい。わたしは、これから正義の味方になるんです」


「正義の味方?」


 ノアールが何を言っているのか、わたしには全く理解できない。


「正義の味方は、相手が1人ならあくまで一対一で戦うものなんです!」


 ええと……誰かがノアールに「正義の味方」とやらを吹き込んで、それを真に受けてしまっている……と言うことでいいのかな?


「妾は大丈夫です。正義の味方ですから!」


 いや、まあ……大丈夫なのはわかっている。わたしも反射的に身体が動いてしまっただけで、ノアールが負けるとは全然思っていない。

 足手纏いにならないうちに、わたしはもう一度は後ろへ下がることにする。



 ノアールの右の鉤爪が、大口を開ける魔鯰ばけナマズの唇部分を鷲掴みにした。泥で泥濘んだ地面を右脚で蹴って、水の浸みていない土を探り当てる。

 泥濘んでいない土を足場にして、右の鉤爪を大きく引き寄せた。

 水しぶきと共に、魔鯰ばけナマズが水面から浮き上がるのが見えた。6頭立ての馬車くらいの巨体が、岸辺の木々をなぎ倒して岸辺の土の上に落ちる。紫がかったドス黒い背中はヌメヌメと鈍く光り、脇腹に向かうほど白っぽくなる。

 巨体が身を捩る度に、岸辺の木々がへし折られている。


「あら、足が抜けなくなりました」


 またもノアールが間抜けな声を出す。

 魔鯰ばけナマズが水面から飛び出すときの水しぶきで、足場にした土がまた水を吸って泥濘んでしまったのだ。

 なるほど。

 魔鯰ばけナマズは、ノアールの腕力で引きずり出されたのではなく、水しぶきを飛ばすために自ら跳ね上がったのか。そのタイミングに合わせて、ノアールが引っ張り上げたのだな。

 左手で脚の周りの泥を掻き出して、ノアールはヨロヨロと不安定な体勢で立ち上がる。足下でベチャベチャと湿った音をたてながら、ノアールは魔鯰ばけナマズの方へ足を運んだ。


「それでは、海の幸を頂いてきますね」


 わたしの方を振り返ってニッコリと笑うノアールに「鯰は淡水魚だから、海の幸ではないよ」との言葉を飲み込んだ。



 巨体をうねらせながら水に戻ろうとする魔鯰ばけナマズの脇腹に、ノアールの蛇が喰らい付いた。蛇が噛みついた傷からは黒い砂が噴き出す。

 ノアールの顔に亀裂が走り、唇の端から耳元まで裂けた。裂けた真っ赤な口には鋭い牙が並んでいる。右の鉤爪で魔鯰ばけナマズの肉を抉り取り、耳元まで裂けた口の中にそれを放り込む。

 魔鯰ばけナマズは、黒い砂を噴き出して苦しそうに身を捩る。

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