【狙われたノアール】第14話 神の使徒の輝き
「いやぁぁぁー」
悲鳴を上げて、2人の小間使いはメイドをおいて逃げ出した。メイドも2人を追いかけようとしたが、その首に巻き付いている蛇のために立ち上がることもできない。
「……ひぃぃぃぃ」
顔の間近に迫った蛇の牙に、悲鳴が漏れる。
「もう一回、訊くよ。カルロの研究室は何処だい?」
それでも、メイドは首を横に振る。カルロに対してか、それともカルロに信頼を寄せるお嬢様への義理立てかはわからないが、脅されて白状する気にはならないらしい。
「では、結構です」
ノアールはメイドを見限った。メイドの、蛇の巻き付く首の辺りからボキリと音がした。目を見開き、半場に開いた口から涎が垂れて、メイドの身体は床に転がる。
魔を喰らい集めることを神々に託されたノアールは、人の命に価値を見出さない。邪魔になるのなら、排除の対象でしかない。
「右腕は大丈夫なのかい?」
ノアールの右腕は、切断されたままの状態だった。てっきり、直ぐに生えてくるなり復元されるなりするものと思ったが違うのか?
「妾は大丈夫なのですが、右手の方が心配です。早く取り返さないと面倒なことになります」
何が大丈夫で、何が心配で面倒なのか……さっぱりわからないが、何時になくノアールが深刻なのはわかる。だから、きっと大変なのだろう。
「魔狼の気配に気付けませんでした。あの魔法使いが、魔の流れを煩雑にする仕掛けを、お屋敷中に施してあるようです。それも、かなり強力な仕掛けです」
「すると、カルロを探すのは大変そうかい?」
ノアールが小さく首を横に振った。
「あの魔法使いや魔物の気配は探せませんが、妾の右手は探せます。妾の力は、魔とも異なる光で輝きますから」
ああ、ノアールの力の輝きは魔と近いようで違う輝きなのだと言っていたっけ。神の使徒を自称するのだから、神の力に近いのかも知れない。
ノアールはゆっくりと周囲を見渡した。それから廊下に沿って暫し進み、そして立ち止まる。
「どうやら、地面より下にあるようです。この、真下あたりです」
地面より下と言うことは、研究室は地下に造ったと言うことか。
「今から地下への出入り口を探す手間と時間が勿体ないね。この真下にあるのが確実なら、床をぶち壊して行けばいいさ。ノアール、翼を出しな」
わたしの提案が意外だったのか、ノアールは少し驚いた顔をした。しかし、直ぐに納得して微笑んだ。
「はい」
わたし自身、もう一切遠慮する気はない。最悪、このお屋敷丸ごと焼き払ってでも、カルロに「やった事」の償いをさせてやるつもりだった。




