【狙われたノアール】第10話 ノアールの予感
カルロの「オレは優れた魔法使い」話から解放され、わたしとノアールが部屋に戻ったのは真夜中近い頃だと思う。
剣使いのわたしには魔法使いの技量は予測し難い。しかし、強者が纏うオーラのようなものは感じた。戦えば、相手を捻じ伏せる術をいくつも隠し持っているに違いない。
そうすると……実は、わたしは「山賊のフリをした冒険者たち」の命を助けていたのかも知れない。わたしが現れるのがもう少し遅かったら、あの冒険者たちはカルロに片付けられていただろう。
「明日、ここを出てナザレの町に行ってみようか。あの魔法使いの工房があるところだよ」
夕食に出た白パンをズタ袋に入れたが、白パンは日持ちがしないのだ。カビが生えたら勿体ないから、早く旅に出たい。
何よりも、カルロの自慢話には付き合いきれそうにない。正直、お友達にはしたくないタイプだ。
「はい、わかりました」
ノアールがあっさり承諾したのは意外……ここに来る前は、舌舐めずりしていたのに。思わず「いいのかい?」と確認してしまった。
「あの方の、妾を見る目がイヤラシいのです。近くにいたくありません」
奇遇だ。ノアールも、カルロとはお友達にはなりたくないらしい。
ノアールを欲しがった……と言うことは、カルロは「魔物使い」でもあると考るべきだろう。それも、相当に厄介な「魔物使い」だ。
カルロは、ノアールに「君が望むものをもっと簡単に、そして沢山与えられる」と言って誘った。
魔物が『望むもの』なら、恐怖や怨嗟などの人の『負の感情』だ。それを呼び起こすために、魔物は人を襲い、殺し、喰らう。『負の感情』に集まる魔を得るために。
おそらく、カルロは「人を贄として与える」ことで魔物を使役している。
そうすると、ナザレの町の冒険者が言っていた「子供が行方不明になっている」話が、一層キナ臭いものになる。
取り敢えず。カルロはお嬢様の信頼を得ているようだから、ここでゴタゴタを起こすのは不利だ。工房のあると言うナザレの町で、何かしらの証拠を捜してみよう。それから、お嬢様を説得してみるか。
休んでおこうと思ったのに、ノアールが落ち着かない様子で寝ようとしない。普段は「寝よう」と言えば、すぐに毛布に包まるのに。
だが、今夜は何か違う。
「どうしたの?」
「魔の流れ方が異様です。これから、何かが起こります」
わたしは、慌てて下着の上に革鎧を着込んだ。そして、海賊の剣を引き抜く。
何か……が、何事かは全くわからない。しかし、ノアールの予感が外れることは滅多にないのだ。




