【狙われたノアール】第7話 魔法使いとの会談
それから「食事の用意ができたから食堂へ」と呼ばれたが、それも断った。食事をしないノアールの件を問い質されるのが面倒と思ったからだが、そうしたら2人分の食事が部屋に運ばれてきた。
「豪華なものだねぇ」
運ばれてきた食事に、思わず感嘆してしまった。
白パンは焼きたてで、野菜を煮込んだシチューと焼いた豚肉は香辛料をふんだんに使って香ばしく味付けされていた。砂糖で甘みを増すよう工夫された果物もある。
白パンは旅に戻った時に食べるつもりでズタ袋にしまい、シチューと豚肉を2人分平らげた。果物も新鮮だった。
パンは、できれば日持ちがする黒パンの方が有り難かったな。
完全に日が落ちる頃、あの慇懃無礼なメイドが、部屋の灯り用の油を持って来た。
湯浴みの道具の後片付けも食事の後片付けも、このメイドが仕切って、小間使い達にやらせている。おそらく、わたしとノアールの監視役を命じられているのだろう。
少しして「応接間にいらして下さい」とのお呼ばれの声がかかる。酒でも酌み交わしながら、旅の話が聞きたい……からと。
酒は飲まないが、相手の出方を窺う意味でノアールを連れて出向くことにする。
応接間で待っていたのは、カルロと名乗った魔法使い1人だった。
部屋に設置されたテーブルの上には、ワインと肴を載せた大皿が数種類置かれている。
「どうぞ。この辺境伯領で造られるワインは、かなり質が良くなりました。ようやく王都でも商いができるレベルのワインになった、とバルドリック商会の御主人が鼓判を押しています」
魔法使いは、自分の向かいの席にグラスを置いてそのグラスにワインを注ぐ。グラスは1つだけしかない。
「こちらは2人で来たんだけどね」
わざと嫌味っぽく言ってみた。すると魔法使いはニヤリと笑う。
「そちらのモノは、ワインの味はわからないものと思いまして、用意はしておりませんでした」
ノアールを人外の存在と承知している……と言うわけか。
魔にどっぷりと浸かっている魔法使いは、魔に敏感になるからな。ノアールから滲み出す魔に気付いても不思議はない。
「まあ、いいよ。どうせ、わたしも酒は飲まないからね」
「おお。それは失礼しました。では、せめて茶の用意をさせましょう。そちらの使い魔の分も一緒に」
ノアールが使い魔にされたか。どう言うわけか、滲み出す魔を感知してノアールが人外の存在だと気付く者はいるのだが、決まって能力が過小評価されてしまう。
ノアールにとっては、その方が「餌の方から近づいて来てくれる」から都合がいいらしいのだが。




