【狙われたノアール】第4話 ナザレの町
数ヶ月前。
ナザレの町に、旅の魔法使いが流れて来た。冒険者には加わらず、町の外れで廃屋になっていた森番小屋を借り受けて魔法工房にした。
腕のいい魔法使いで、冒険者の呪具の修理や補充を手伝ってくれて便利な存在となった。
それから町の周囲の森や街道に魔物が増えて、住民にも不安が広がる。更に、町の中にも突然魔物が現れるようになると、誰もが「何かおかしい」と思い始めたそうだ。
「町の中に?」
「魔物が増えるだけなら『魔物退治の仕事が増えた』と冒険者は喜んでいたんだがな。町の中にまで現れるようになるは、おかしいだろう」
魔は人の負の感情に集まるとされるが、魔物として具現化するには依代が必要だ。大凡は、森で獣の死骸などを依代にして魔狼や魔猪となる。
「魔法使いが自分から売り込んだのか、バルドリック商会が出来の良い呪具に目を付けたのかは知らない。だが、いつの間にかバルドリック商会が後ろ盾になっていて、魔法使いはナザレの町でも好き勝手に振る舞ってやがるよ」
「それで山賊になりすまして馬車を襲ったのなら、単なるやっかみじゃあないのかね」
わたしの嫌味に、ログールは苦笑する。しかし、彼の目元は笑っていない。
「子供が行方不明になってるんだ」
「子供?」
ログールは大きく頷いた。
「魔法の修行をさせる、と言って町の孤児院から子供を何人か引き取ったんだ。だが、いつの間にか誰もいなくなっていた。修行がきつくて逃げ出した……と魔法使いは言っているが、それなら孤児院へ逃げるはずだが孤児院には戻っていない。冒険者ギルドのツテで周辺の町にも問いかけたが、それらしい子供は見つからない」
怪しい魔法使いと行方明の子供か……大昔には「闇落ちした魔法使いが、使役する魔物に子供の肉を喰らわせていた」との逸話がある。
「今も時々、魔法使いは『工房の小間使いをさせたい』からと、孤児を集めてる。バルドリック商会が圧力をかけているらしく、孤児院は逆らえないんだ」
「あの馬車には、その孤児が乗せられていたのかい?」
「いや。それは無いと思うが、何か手がかりはあったかも知れん」
この連中は、山賊に扮して「子供の救出の手がかり」を捜すつもりだったようだ。
わたしとノアールは、ナザレの冒険者たちと別れてバルドリック商会の別荘へ向かう。
ログールからは、何か情報を入手したらナザレの町の冒険者ギルドへ連絡して欲しいと言われたが……敢えて、返事はしなかった。今の段階では、ログールの話が、どこまで真実かわからないのだから。




