【最強の戦士】第20話 やっと旅立ち
魔蝙蝠退治は果たした。ノアールも満足しただろうし、もうフェルトの町には完全に用はなくなった。このままノアールとわたしは旅に戻るつもりだ。
しかし、エロイーズがまたも金切り声を上げる。
「ギルドへの報告は冒険者の義務よ。それに、町に戻らないと成功報酬の分も受け取れないわよ」
「報告は任せるよ。成功報酬をその手間賃にしてくれていいからさ」
もう荷物はまとめてノアールに持たせてある。エロイーズと2人の冒険者がいなくなれば小屋の中を確認して直ぐに旅立つ用意ができている。
「ねえ、ヤクトの剣に入らない? 貴女たちを歓迎するわ」
エロイーズは、急に話を勧誘に変えた。もう断った話なのに……本当に話と顔の表情がコロコロ変わるな。
「ブローガルは『ヤクトの町で最強の冒険者パーティ』と言ったけど、わたし達としてはフェアトレー辺境伯領で最強だと自負してる。王都の冒険者にも負けないと思ってるわ」
そうだな。ブローガルは相当な腕で、まともに戦って勝てる剣使いは王都でも限られるだろう。
「貴女たちもすごく強い。最強の戦士に相応しい仕事と名声を、ヤクトの剣なら用意できると思うの。それに……」
エロイーズは一度目を伏せて、言葉を飲み込む。それから。
「わたし達にも必要なの。命の大切さと戦いの虚しさを知っている人が……ヤクトの剣が、傲慢な集団にならないために」
ラウルのニヤついた顔が、わたしの脳裏を過った。
「ブローガルは、そう言って貴女たちをヤクトの剣に入れようとしたの。でも、ラウルが『腕を確認してからだ』って……」
ヤクトの剣がどんな集団で、どんな集団になって行こうがわたしには関係ない。エロイーズの勧誘を断り、他の2人と共にフェルトの町へ帰って貰った。
最強の戦士に相応しい仕事と名声か。エロイーズの言葉を思い出すと、虚しさが込み上げてくる。
わたしにとっての最強の戦士はアルミウスだ。一族の英雄で、わたしの許嫁だった。
アルミウスが死なずにいたなら……わたしは北の地でアルミウスの子を産んで育てていたはずだ。
小屋の中で、念のためノアールに確認する。
「この小屋の中に、何かありそうかい?」
「いいえ。小屋の中には《《美味しそう》》なモノは何もありません」
ノアールの食欲に関する嗅覚は絶対だ。地面に激突して、足が折れても食欲優先だからな。
翼があるのだから飛べばいいではないか……そうすれば足も折らないだろうに。
ノアールは最強だが、身体が不死身なせいで守りが疎かなんだ。そのせいで、わたしも死にかけるんだぞ。
Ep 最強の戦士 -終-




