【最強の戦士】第18話 拾い集めるモノ
神話やおとぎ話の類いだ。
世界を創った神々は、今はもういない。それでも神々の『創世の力』は、今も世界に漂って魔法や聖なる奇跡を起こす根源となっている。魔物が生じるのも『創世の力』の残滓のせいだ。
しかし、神々は世界に『創世の力』が残ることを許さない。
世界に散らばる『創世の力』を回収するために、神々は使徒を送り込んだ。
使徒は、神々の命を受けて世界に散らばる『創世の力』の残滓を拾い集める。
限られた、極一部の魔法使いには口伝で伝わっている寓話だと聞いたが……エロイーズは、知っている方の魔法使いらしい。
『神々が忘れ物を取りに来たのなら、還さねばならない』
それが魔法使いの使命とのことだから、ノアールの邪魔はしないはずだな。
キェー!
悲鳴のような雄叫びをあげる魔蝙蝠が、口から炎の弾を吐き散らかした。炎の弾が、地上の草や木々を焼く。
ドォォン!
ドォォン!
真下で脚を掴んでいるノアールに、その攻撃は届かない。苦し紛れの悪あがきか、わたし達へ炎の弾を吐き出してくる。
「きゃあー!!」
足下で炸裂した炎の弾に、エロイーズが悲鳴をあげる。
「……ちぃ!」
傍にいたわたしも、魔法の炎の熱さに声が漏れてしまった。
仕方ない……先ほど、ノアールが現れた場所には、色々な荷物を放り込んであるズタ袋が落ちている。一旦、エロイーズをその場に残してズタ袋を取りに戻ることにする。
「ちょっと、何処行くのよ!」
ズタ袋に手を突っ込んで、中からサーコートを取り出す。サーコートは、鎖帷子や革鎧の上に身に付ける「袖なしで脇の開いた」丈長外衣のことだ。
しかし、これは特別製の代物だ。そのサーコートを纏い、エロイーズのところへ戻る。
「わたしの後ろから離れないようにね」
エロイーズの前に、盾になるように立った。数条の炎の弾が、こちらへ飛んで来る……大丈夫と思うが緊張するな。
炎の弾は、わたしの身体を避けてあらぬ方向へ流れていく。
大丈夫だったか……と、予想通りではあったが安堵する。後ろでエロイーズが口をパクパクさせているが、多分「ちょっとぉ」と言うつもりで口を動かしているのだろう。
このサーコートは、土妖精から貰ったものだ。火蜥蜴の鱗を編み込んだもので「人の魔法で作る炎くらいなら、はじき返せる」と言われた。魔蝙蝠にも通用したな。
わたしの無事を確認したのか、魔蝙蝠の脚にぶら下がっているノアールが、こちらを向いてにっこりと微笑む。
魔蝙蝠は、首から頭や胸までをノアールの蛇に喰われている。頭の半分が黒い砂になって崩れていた。




