【最強の戦士】第17話 助けておくれ
魔蝙蝠が、口から炎の弾を吐き出すとは……どうせ、蝙蝠の化け物だと思って舐めていたな。
目の前で、逃げ込もうとした木々の重なる場所は炎に焼かれている。逃げ込み損ねたおかげで、火傷をしないで済んだのだから……エロイーズに感謝しないといけない。
「こっちに来るな!」
駆け寄ろうとしたエロイーズを制止して、立ち上がる。木々の先端より僅かに高い位置に、魔蝙蝠は浮かんでいた。
翼の羽ばたきで飛んでいるのではない……魔力で宙を舞っているようだ。
木々のない、上が開けた場所に一歩踏み出す。
獲物を捕らえようと、魔蝙蝠が脚爪を向けて、三度目の急降下をしてくる。
「ノアール、助けておくれ」
刹那、わたしのすぐ前にノアールが現れる。空間を繋いで、別の場所から瞬間的に転移してきたのだ。
「ラゲルナ様、伏せて下さい」
ノアールの背に隠れるように、わたしは身を低くした。
急降下してきた魔蝙蝠は、その脚爪をノアールの両の肩に食い込ませる。脚爪が食い込んだ場所から血が噴き出し、黒いローブがドス黒い血で濡れる。なのに、当のノアールは口角を吊り上げて笑っていた。
バサバサバサ
バサバサバサ
獲物を掴んで空に舞い上がろうとする魔蝙蝠だが、どうやら上手く舞い上がれないようだ。ノアールの魔力が、魔蝙蝠の飛ぶ能力に干渉しているのかも知れない。
必死に翼をバタつかせて、ようやくノアールの身体を持ち上げる。
屋根くらいの高さに持ち上げられたノアールは、黒いローブの前を開けさせた。
ローブの下は裸だ。白い肌に、胸や腰は丸みを帯びた女の身体をしている。しかし、その右手は猛禽類のような鉤爪で、左脚には蛇の頭を持つ触手が巻き付いている。
鉤爪の右手と人の左手が、肩を捉えている魔蝙蝠の脚を掴む。そして左脚から解けた触手が伸びて、魔蝙蝠の喉元へ蛇の頭が牙を立てる。
……キェー
……キェー
必死に羽ばたいても、宙に留まるのが精一杯なのか……魔蝙蝠は苦しげな鳴き声をあげている。
「さあ、この場から離れるよ」
エロイーズの腕をとって、ノアールと魔蝙蝠のいるのとは反対方向へ引っ張っる。しかし、エロイーズはその場で居座って、わたしに絡みついてくる。
「何なのよ、あれ? 説明しなさい!」
わたしが知るか!
「拾い集める者……らしいよ」
わたしはノアールが何者かは知らないし、興味もない。ノアールは自分のことを「神の使徒」だと言っている。
ノアールを知るらしいモノ達が『拾い集めるモノ』だと呼んでいた。
「うそ……あれが?」
エロイーズは『拾い集めるモノ』を知っているのか?




