【最強の戦士】第16話 空から来るモノ
他人との会話が面倒くさく感じられた。よくよく思い出してみれば、人と一緒に食事をしたら、こんな感じだったはずだな。北の地にいた頃は、埒のない話をしながら食事や酒を楽しんでいたっけ。
ノアールとの2人旅に慣れてしまい、人同士の関わり合い方を忘れていたようだ。
エロイーズを残して、1人で歩き出したのは理由がある。
……ガサガサ
離れたところで小枝が掠れ合う音がした。その音に気付かないフリをして、そのまま歩き続ける。
……ガサガサ
小枝が掠れ合う音が、わたしの歩く方向について来ていた。そして。
……バキバキ
……バサッ! バサッ!
木々をなぎ払って、大きな翼を羽ばたく音がした。反射的に、わたしは空を見上げた。青空に白い雲が広がり、黒い点があった。その黒い点はみるみる大きくなる。
速い!!
わたしが海賊の剣を引き抜くより、魔蝙蝠の脚爪が右腕を緩く掠める方が早かった。身体を捩りながら地面を蹴って、ギリギリで魔蝙蝠の襲撃を躱す。脚爪を空振りさせた魔蝙蝠は、直ぐに空に飛び上がった。
予想は当たったかも知れない。魔蝙蝠は、魔法の『匂い』がする魔法使いを警戒していたのではないか?
だから、1人で歩き出してみた。案の定……直ぐに現れやがった。
再び、脚爪を向けながら急降下してくる。間合いを計って、海賊の剣を横薙ぎに振るった。
鉄の刃が、左の脚爪を叩く。黒い砂になって、数本の爪が失われた。
しかし。羽ばたきながら上空で静止する魔蝙蝠の左脚に白い靄がかかると瞬く間に左の脚爪は再生していた。
「この地の魔は、相当に濃いんだろうね」
背の高さは大人より頭一つ分大きい程度だが、翼を広げた横幅は相当にでかい。大人3~4人が手を繋いで横に広がったくらいか。
「あれだけ横幅があるなら、高い木が立ち並んでいるところへ逃げれば入ってこれないね」
わたしは一旦、木々の中に逃れてノアールを呼ぼう……と思ったら、背後から聞き覚えのある金切り声がした。
「ラゲルナ! 大丈夫?」
エロイーズが昼食を切り上げて、追いかけて来たようだ。
「そっちに行ったら駄目よ! 止まって!」
木々の方へ走り出そうとしたわたしを見たエロイーズは、甲高い声を更に高めた声で止めようとする。頭がクラッとするような超音波攻撃だ。
思わず、脚が止まって膝をついてしまう。すると、わたしの直ぐ傍で熱風が吹いた。
次の瞬間、目の前で赤い炎が上がる。
「……え?」
魔蝙蝠が、その口から吐き出した炎の弾が、わたしの眼前で炸裂したのだ。




