【最強の戦士】第15話 昼時
「ラウルのことがあって、ヤクトの剣のメンバーに『貴女たちを許せない』気持ちがあったのは事実よ。でも、ブローガルがね……『ラゲルナ殿は信用できる』って言ったの」
また、何か話が変わったな。
「命の大切さと戦いの虚しさを知っている者の怒りだった……って言ったわ」
顔の表情と話の方向が、本当にコロコロと変わる女だと思う。
「だから、あたしも貴女たちを信じるって決めたの。貴女は、どうしたらあたし達を信じてくれるの?」
ヤクトの剣に関わる連中を信じることはないな。
胸の奥で、小さく罪悪感が疼くような気がした。
海賊の剣を握った右腕に、白い靄が纏わり付いてくる気がした。
……ああ、そうか
……また一つ、人の負の感情を背負い込んだのか
わたしにとって罪悪感は呪い……その呪いに魔が集まってくる。
意識が飛びそうになった時、小屋の扉が開いてノアールが現れた。
「……ラゲルナ様」
右手に纏わり付いた白い靄は霧散した。
朝方から昼過ぎまで、森の中を歩いてみた。何もいない。
フェルトの町の周辺には魔狼が大量に発生している。なのに、ここでは全く魔狼が姿を見せない。やはり、それ以上の魔物の縄張りになっているのは間違いないな。
ズタ袋から黒パンとチーズを出して、それを囓りながら歩いていると、後ろから金切り声がした。
「昼食くらいちゃんと食べましょうよ!」
結局。エロイーズは、弩型の呪具を壊されて丸腰となったくせに、わたしについて来たのだ。
わたしの前に出て、地面に大きめの布を敷く。その上にパンと腸詰め肉を広げて、火熾しを始めた。
火を熾すなら地面の段差を利用すれば楽だ。段差になっている高い方に、真上から大きめの穴を掘る。段差の側からその穴に横穴を通し、種火を入れて燃やせば、真上の穴からかなりの火力で炎が上がる。
お湯を沸かすのも、腸詰め肉を炙るにも十分だ。
「すごい、慣れてるのね」
種火にも脂の多い木の樹脂を使えば、火の魔法より早く熾せる。北の地なら、雪を固めて同じようにやる。
「うわぁ、もう煮えてきた」
地面の段差で作った爐の火力に驚いている。
エロイーズは、調味料や香辛料も持って来ていて腸詰め肉と野菜を刻んだスープを作っていた。
「腸詰め肉に合うのよ。でも、酔っ払わない程度にね」
小さな杯に少量の赤ワインを注いだ。昨夜、ノアールと揉めていた焼き菓子も並んでいる。
エロイーズが食べ始めたので、わたしは立ち上がって歩き出す。
「あのねぇ! 毒なんて入れてないわよ!」
ああ、疑われている自覚はあるのだな。




