【最強の戦士】第14話 失ったモノ
小屋の傍で焚き木を熾して、ノアールと夜を明かした。魔狼が大量にいるはずの森だが、魔狼の気配を全くなかった。
ここが魔蝙蝠の縄張りになっているから、魔狼が近づけないってことなのだろうか。
日が昇るのを待って、森を探索してみることにした。ノアールの魔力を警戒されないように、わたし一人で行く。
「ちょっと!」
昼食用の保存食を荷物に詰め込んでいると、エロイーズが怒鳴り込んできた。
「森に行くのなら、あたしも行くわよ」
そう言うとエロイーズも、自分の荷物を開いた。呪具や食料がズタ袋から取り出されて床に広げられる。
「あたしがいなかったら魔蝙蝠のこと、何にもわからないでしょう。それに空を飛んでるところをどうやって攻撃するのよ。貴女がどんなに剣の腕が良くても、空の上には届かないわよ」
いや。囮の役だから警戒されるような呪具はない方がいいのだが。
エロイーズは、弩に似た呪具を手に取った。
弓台と言う棒状の先端部に弓が取り付けられている。弓と弓台が十字型になるから「十字弓」とも呼ばれる武器だ。
弓の部分には弦が張られていないが、弓と交差する弓台の部分に呪符を入れる仕掛けになっていた。呪符の魔力を矢にするようだ。
「魔蝙蝠には炎の魔法は効かないのよ。これは、光の矢を飛ばす呪具なの。封入した呪符の数だけ連射ができるから、地上付近まで誘い出したら、奴が空高く飛び上がるまでに光の矢で傷を負わせられるわ」
「ふーん」
感心するフリをしながら、その弩型の呪具を手に取る。そして、床に落とす。
「ちょっと、丁寧に扱ってよ!」
エロイーズが弩型の呪具を拾い上げようと手を伸ばすが、それより早く海賊の剣を振り下ろす。
……バキン
木製の弓の部分がへし折れた。エロイーズは手を伸ばそうとした姿勢のまま、凍り付いたように動かなくなる。
わたしは、へし折れた《《それ》》を拾い上げると、まだ火の残っている暖炉の中に放り込んだ。
「……」
エロイーズの双眸がわたしに向いた。大きく見開いた眸に怒りの色が籠もっている。心なしか濡れているようにも見えた。
「……ど……うして?」
「ラウルの妹のために、わたしの口を塞ぎたいのだろう。魔蝙蝠の相手をしているときに、後ろから撃たれたら面倒だからね」
エロイーズは顔を伏せた。口元が歯を食いしばるように歪み、頬を水滴が流れるのが見えた。
「あたしが……そんな真似をするって、本気で思ってるの?」
ラウルを叩きのめした時に、ショートソードの剣先を向けて来たではないか。自分がやったことを、もう忘れているのだろうか?




