【最強の戦士】第11話 魔蝙蝠の縄張り
太陽は西に傾いて、影も長くなり始めている。街道を南に少し進んで、森の中へ入った。この辺りでは魔狼の姿もないらしい。魔蝙蝠の縄張りと言うことだろうか。
森の中には小屋があった。簡素な木樵小屋とかではなく、割りとしっかりと作り込まれた大きめな小屋である。
「トレールの町から魔法使いのグループが移住してきて、ここに魔法工房を作ったのよ。今は、工房にした小屋だけが残って無人になってしまったの。魔法使いたちが、魔蝙蝠から逃げていなくなったのか、それとも襲われてしまったのかは、もう判らないわ」
リーダー風を吹かせて、説明しているのはヤクトの剣の女魔法使いである。
何故か、エロイーズがわたし達に付いてきた。わたし達が、魔蝙蝠退治をせずに「手付金だけを持ち逃げする」かも知れないから監視するためだとか。
まあ……道案内ならいた方が良い、と思って無理に断らなかった。
目印の元工房小屋に到着したから、エロイーズは用済みである。しかし、当のエロイーズは帰ろうとせず、わたし達と一緒に魔蝙蝠退治に参加する気でいる。
まあ……戦闘力のない魔法使い1人で帰すわけにもいかないか。
「魔蝙蝠は空を飛んで移動してくるから、気配を探るのが難しいの。しかも、空高く飛び上がられてしまったら攻撃も届かないから、地上付近に誘き出すことから考えないといけないわ」
正直に言うと、わたしはエロイーズの話なんてどうでも良かった。空を飛ぶ魔物と言ったところで、ノアールより速く飛べるわけではないだろう。ノアールが白と黒の翼を広げて、体当たりすれば一瞬で消し飛ぶと思っている。
「ちょっと! あなた、あたしの話をちゃんと聞いてるの?」
だから、聞いていないって。
「もう!」
ヒステリックな声をだすと、エロイーズは元工房の小屋へ入って行った。野宿せずに屋根のある場所で寝られるなら有り難い。空を眺めているノアールを外に残して、わたしもエロイーズに続いて小屋に入る。
小屋の中は、魔法使いが使う呪具の部品と思われるものが散らばっている。しかし、埃や蜘蛛の巣はあまりない。
「無人だったと言う割りには綺麗だね」
「トレールの町は、魔法技術に関しては先進地域なのよ。だから、ここが無人になったら『お宝が残ってないか?』と物色する連中がいるの」
「その連中が、魔蝙蝠を目撃したのかい?」
エロイーズは、少し表情を曇らせて頷いた。
「生きて帰ってきた者がね」
生きて帰れなかった者は、魔蝙蝠に襲われた被害者と言うことか。




