【最強の戦士】第10話 仕事と旅立ち
結論を言えば、わたしとノアールは魔蝙蝠退治の仕事を引き受けた。
ギルド長の顔には安堵の色が浮かぶ一方で、町長の顔は苦虫をかみつぶしたように歪んでいた。嫌なら仕事の依頼などしなければいいのに……と思う。
わたし達が依頼を引き受けると、町長は「後は任せる」と言って、直ぐに席を立ち教会を出て行った。代わりにヤクトの剣のメンバーが、その場に呼ばれた。
女魔法使いのエロイーズと名前を知らない2人だ。剣や弓の戦士のようだが武器を所持していないので、確信は持てない。
「わたしとノアールだけでやる。ヤクトの剣と一緒に行動するのは断るよ」
わたしとしては当然の主張だ。魔蝙蝠と戦っている最中に、意趣返しとばかりに後ろから攻撃されたらたまらない。
エロイーズは、双眸を見開いて顰めっ面になった。名前を知らない2人は顔を見合わせるが、ブローガルは小さくため息をついたが「ああ、やっぱり」と言う顔になる。
もう町を出るつもりで荷物をまとめてある。魔蝙蝠が出没する領域さえ聞けば、そこで野宿しながら狩るだけだ。
空の魔物なら、ノアールも飛べるのだから魔鯰より楽な仕事だろう。
「少し、話をさせて頂きたい」
皆が引き上げた後、教会の礼拝堂で野宿用の食料を整理していると、ギルド長が近づいて来た。改めて、朝に勝手な『力試し』を仕掛けてきた件を謝罪してきた。
何故、ギルド長が謝罪するのか……と思ったが、ギルド長によると「実は、町長の要請だった」と言う。
「貴女たちを推薦したのは私だが、町長が貴女たちの力を信用しなかったのだよ。それでヤクトの剣をけしかけたんだ。お二人のことは何も知らせず、ただ『生意気そうな女冒険者が、魔蝙蝠退治に割り込んできた』とだけ伝えたんだ」
なるほど、それで町長は目を泳がせていたのか。
「貴女たちは、魔狼狩りでは目立った働きをしてなかったからな。ナンバー2のラウルが『冒険者の厳しさを教えてやる』とその気になってしまった。ラウルが、やたらと挑発的だったのもそう言う事情があったんだ」
……なんだ?
わたし達にヤクトの剣のメンバーと和解しろ……とでも言いたいのか。
馬鹿馬鹿しい。それにギルド長は嘘を言っている。ブローガルは、わたしがレイドリク伯の元にいたのを知っていた。わたしの素性を知っていて来たはずなのだ。わたしの、ヤクトの剣に対する心象を良くしておこうとの配慮だろうが関係ない。
「ノアール、行くよ」
涎を垂らしそうになっているノアールを連れて、教会を後にした。




