【最強の戦士】第8話 冒険者ギルド
わたしは、エロイーズの胸座を掴んで、跪いて頭を下げているブローガルの上に投げつけた。
ブローガルは頭を下げたまま動かず、エロイーズは憎悪の籠もった双眸を向ける。ラウルは突っ伏したまま呻き声を漏らしている。
「ノアール!」
視線をノアールに移した。ノアールはニッコリと微笑み返し、わたしの方へ歩いて来る。風が流れ出したから、ズレた世界は解かれたのだろう。
ヤクトの剣の3人を捨て置いて、わたしとノアールはその場を去った。
朝から気分は悪い。
宿屋の女将さんは『ヤクトの剣』と言う冒険者パーティを知っていた。
ヤクトの町だけでなく、このフェアトレー辺境伯領では名の知れた冒険者パーティとのこと。
主メンバーは5人だが、全体だと数十人の大所帯な冒険者グループだそうだ。ブローガルは単に「裏方役」と言ったが、修行中の未熟者なども含まれるようだ。
「このフェアトレー辺境伯領ではヤクトの剣で修行したと言えば、冒険者としては一目置かれる存在だよ。冒険者と言えば、ならず者みたいな連中が多いけどヤクトの剣は随分立派な方さ」
人の礼儀に欠けて、不意打ちしかしない連中かと思ったけれどな。
女将さんがヤクトの剣を好評価しているので、3人を叩きのめしたことは伏せておくことにする。
宿を出る際に、旅の保存食となる燻製肉やチーズを分けて貰えたのは有り難かった。もしもヤクトの剣の知り合いと思われてのことなら、申し訳ない気がする。
そして、魔狼狩りの報酬を受け取っていないギルドだ。
昨日は「報酬を諦めても、町を早く出よう」と思っていたが、もう既に嫌な思いをさせられてしまった。はした金でも、絶対に取り立ててやる。
昼食を済ませてから、ギルドへ行った。
荷物もまとめてノアールに背負わせてある。金を取り立てて、直ぐにこの町から出て行ってやる……つもりだった。
わたしが行くと、女職員は脅えた様子で「場所を変えて話をしたい」と言い出した。
「話はないよ。さっさと魔狼狩りの報酬だけ支払ってくれればいいんだ」
「お話しさせて下さい。お願いします」
女職員は、ただ頭を下げて、同じ台詞を繰り返すだけだ。
このパターンはギルドとヤクトの剣が裏で繋がって「罠を仕掛けた場所に誘い出して、《《朝》》の意趣返し」って奴だろう。
……このまま町を出れば、森に入った辺りで襲撃してくる
……その時、ノアールにまとめて片付けさせよう
そう思い、踵を返してギルドを出ようとした。
「申し訳なかった」
奥からギルド長が出てきて、いきなり頭を下げた。




